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日本で作られた季節を表す暦、9つある雑節それぞれの意味や時期は?

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農業には欠かせない畑

365日ある1年の中で、馴染みのある季節といえば春・夏・秋・冬。

私たちは、四季のある暮らしをしていますが、春夏秋冬だけではない季節の言葉が別にあるのをご存知でしょうか。

二十四節気や五節句は中国から伝わったものですが、実は日本で補助的に作られた暦があります。

今回は、二十四節気を補う意味合いで生まれた雑節について紹介します。

日本の生活文化や気候に合わせて定められた季節を知ると、季節の移ろいをより深く味わえることでしょう。

雑節とは

雑節(ざっせつ)は、日本における季節の変化をより的確に掴むための目安として生まれた特別な暦です。

中国から伝わってきた二十四節気や五節句などとは違い、日本で独自に設けられたという特徴があります。

雑節の由来

季節の移り変わりを表す暦として、他に二十四節気や五節句がありますが、これらはもともと古代中国から伝わったもので、日本の気候や季節とは少しずれがあります。

一方、雑節は、日本で補助的に作られた季節の変化を表す指標で、日本人の生活文化に合わせた独自の暦であるため、現在の太陽暦(新暦)とも合致しています。

私たち日本人の生活や農業と密接に繋がりがあり、中でも季節や気候に左右される農業に関連したものが多いため、あなたも聞き慣れた言葉があると思います。

田畑と水田

雑節の種類

雑節は、一般的には以下の9つに分かれます。

  • 節分(せつぶん)
  • 彼岸(ひがん)
  • 社日(しゃにち)
  • 八十八夜(はちじゅうはちや)
  • 入梅(にゅうばい)
  • 半夏生(はんげしょう)
  • 土用(どよう)
  • 二百十日(にひゃくとおか)
  • 二百二十日(にひゃくはつか)

これらの中に一部だけ、馴染みのある言葉が出てきたことでしょう。

日本の気候や風土に合わせた暦で、農作業の目安となるような暦日が多いです。

次項では、季節の移り変わりをより的確に掴むために設けられた、それぞれの雑節について解説します。

田植えをする農家の人たち

節分(せつぶん)

節分とは、四季の始まりを表す立春・立夏・立秋・立冬の前に定められた暦です。

節分の時期

現在の節分は、立春の前日にあたる2月3日頃です。

季節の変わり目には邪気が入るとして、もともとは四季の始まりを表す立春・立夏・立秋・立冬の前に定められていました。

旧正月が立春にあたり、より厳かな気持ちで1年の邪気を払ったり無病息災を祈ったりする習わしとして、近年では年に1回となっています。

2023年の節分は、2023年2月3日(金)でした。

節分の意味

節分の豆と恵方巻き

もともとは中国から伝わってきた風習で、季節の節目には邪気が入るとされ、平安時代には追儺(ついな)と呼ばれる、邪気や厄を払う行事が行われていました。

そして、年に4回あった行事はその後に春だけになり、現在では立春の前日に邪気を払う行事となっています。

近年で定番となっている風習として、邪気や厄を鬼として豆まきをしたり、「歳徳神(としとくじん)」という年神様のいる方向を向いて恵方巻きを食べたりします。

節分の由来や現代の習わしなどについては、下記記事で解説していますのでご参考ください。

彼岸(ひがん)

彼岸とは、あの世の彼岸(ひがん)と、この世の此岸(しがん)が繋がる日です。

彼岸の時期

彼岸は、3月20日頃の春彼岸と9月22日頃の秋彼岸と年に2回あり、具体的には春分の日と秋分の日を中日とする前後3日ずつ、計7日間のことを指します。

また、初日を彼岸の入り、当日を中日(ちゅうにち)、終日を彼岸の明けと呼びます。

2023年を例にすると、以下の通りです。

春彼岸:2023年3月18日(金)~3月24日(木)
秋彼岸:2023年9月20日(火)~9月26日(月)

彼岸の意味

彼岸に行う墓参り

彼岸は、あの世(彼岸)とこの世(此岸)が繋がる日で、年に2回あるため春彼岸と秋彼岸と呼ばれます。

これは春分の日と秋分の日に太陽が地平線に真東から昇り、真西に沈み、昼(此岸)と夜(彼岸)が、ほぼ同じ時間になるためです。

日本では、供養行事のひとつとして、お彼岸にお墓参りをしたり仏壇にお供え物をしたりします。

線香の煙を通して故人と想いを繋げたり、個人の好きだったものをお供えしたりするためです。

社日(しゃにち)

社日とは、産まれた土地の神様「産土神」を祀る日です。

社日の時期

社日は、3月20日頃・9月22日頃で年に2回あり、具体的には、春分の日・秋分の日に最も近い戊(つちのえ)の日を指します。

戊の日とは、1日ごとに十干が割り振られている暦の「戊」にあたる日です。

旧暦では十干と十二支が割り振られており、旧暦の入っているカレンダーでは大安や先勝の傍に「戊」と記載されているのが目印となります。

2023年を例にすると、春分の日が3月21日(火)、秋分の日が9月23日(土)のため、この日から最も近い「戊の日」として、以下の日になります。

春社:2023年3月21日(火)先勝/戊寅
秋社:2023年9月27日(水)友引/戊子

社日の意味

社日は鳥居のある神社で参拝する

社日は、「産土神」に感謝を捧げて祀る習わしで、春には豊年を祈り、秋には収穫を祝う行事をそれぞれ行います。

産土神(うぶすながみ)とは、産まれた土地の神様のことです。

土地神としても祀られ、その土地で産まれた人が他の土地へ住まいを引っ越しても、一生を通じて守護神となり守ってくれます。

ちなみに、似た言葉の「氏神」は血族で祀る神様のことですが、住んでいる土地の神様として祀る人や家も増えたため、区別が難しくなっています。

八十八夜(はちじゅうはちや)

八十八夜は、立春から数えて88日目のことです。

八十八夜の時期

八十八夜は、立春から88日目を指し、毎年5月2日頃になります。

八十八夜の意味

八十八夜に摘む新茶は縁起が良い

八十八夜は漢字が表す通り、立春から数えて88日目にあたる日のことで、稲の種まきや茶摘みなど農作業を始める目安とされています。

また、漢字の八十八を組み合わせると、「米」という字にもなる由来もあります。

夏も近づく八十八夜、という茶摘みの歌があるように、夏を祝う意味として一番茶を摘む時期です。

八十八夜に摘む新茶は、古来より不老長寿が叶う縁起のよいものとして重宝されていたため、現在でもお茶の産地では当日に茶摘みイベントを行う農家もあるでしょう。

入梅(にゅうばい)

入梅とは、現代でいう梅雨入りと同じ意味で、梅雨に入ることを指します。

入梅の時期

入梅は、二十四節気にある「芒種」の後にくる壬(みずのえ)の日で毎年6月11日頃にあたりますが、現在の新暦では気象庁の発表する梅雨入り宣言が目安です。

入梅の意味

入梅は梅が実る頃でもある

入梅は、暦の上で梅雨の季節に入る最初の日を指し、梅雨はこの日から約30日間とされています。

天気予報もなかった時代に、農作業をする上で雨期を知ることはとても重要だったため、江戸時代に暦の上での「入梅」が定められました。

ちなみに、梅雨明けすることを「出梅(しゅつばい)」といいます。

また、入梅は、梅が実る頃でもあったことから名づけられ、青梅も出回り始めるため、この時期には梅酒を作る家庭も多いでしょう。

半夏生(はんげしょう)

半夏生とは、天より毒気を下す日とされ、田植えをしないとされていた日です。

半夏生の時期

半夏生は、夏至となる6月21日頃から数えて11日目となる7月2日頃のことです。

七夕(7月7日)頃までの期間を指すこともあり、この頃からちょうど梅雨が明けます。

半夏生の意味

半夏生は田植えを終わらせる目安

半夏生は、天から毒が降ってくる日といういい伝えがあり、田植えを終わらせる目安でした。

農作業の目安として、田植えは夏至の後、半夏生に入る前に終わらせるものとされ、その日を過ぎてしまうと秋の収穫量が減ると考えられてきました。

また、半夏生の5日間は、天から毒が降る日で物忌みをする日ともいわれ、期間中は井戸に蓋をして働くこともせず、この日に採った野菜も食べてはいけないとされています。

無事に田植えが終わると、水田や神棚にお供え物をして、田の神様に感謝します。

ちょうど鬱陶しい梅雨の時期でもあるため、無理をせず身体を労わりながら過ごそうという考えでは共通しているといえるでしょう。

土用(どよう)

土用とは、立春・立夏・立秋・立冬前に土公神が支配する日です。

土用の時期

土用は、1月から11月までの年に4回あり、具体的には立春・立夏・立秋・立冬の前18日間です。

立春前が冬土用、立夏前が春土用、立秋前が夏土用、立冬前が秋土用と呼ばれ、ぞれぞれ1・4・7・10中旬頃に始まります。

2023年を例にすると、以下の通りです。

冬土用:2023年1月17日(火)~2月3日(金)
春土用:2023年4月17日(月)~5月5日(金)
夏土用:2023年7月20日(木)~8月7日(月)
秋土用:2023年10月21日(土)~11月7日(火)

土用の意味

土用は土を犯すことは慎むべきとされた

土用といえば、土用の丑の日で夏のイメージが強いですが、立春・立夏・立秋・立冬前の18日間を指し、順番に冬土用・春土用・夏土用・秋土用と呼ばれています。

中国の陰陽五行説が由来で、万物の根源と考えられていた「木・火・土・金・水」を四季にあてはめて、春=木、夏=火、秋=金、冬=水とし、残りの「土」を立春・立夏・立秋・立冬前の約18日間にあてはめたものが土用です。

期間中は土公神(どくじん)が支配するといわれ、土を犯すことは忌むべきこととされていました。

土用については、土用の丑の日とともに下記記事で解説していますのでご参考ください。

二百十日(にひゃくとおか)

二百十日とは、立春から210日目にあたる日で、その日前後は台風が多いといわれています。

二百十日の時期

二百十日は、立春の2月4日頃から数えて210日目で、毎年9月1日頃にあたります。

二百十日の意味・行事

二百十日はおわら風の盆など台風を鎮める風祭りを行う

二百十日は、立春から数えて210日目にあたる日で、稲が開花する時期ですが、農作物に甚大な影響を与える台風や暴風雨に見舞われることも多い時期です。

この日は、旧暦8月1日の「八朔(はっさく)」と後述する「二百ニ十日」とともに農家の三大厄日といわれていました。

9月1日といえば、防災の日でもあります。

防災の日は、1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災にちなんで、1960年(昭和35年)に制定されました。

犠牲者の慰霊とともに、災害に備えて避難訓練や防災用品の点検などを促す日でもあります。

また、制定される前年には、伊勢湾台風が襲来し、死者・行方不明者およそ5100人、負傷者およそ39000人という甚大な被害を受けています。

現代のように台風の予測もできなかった昔は、この日を厄日として風を鎮める祈りや祭りを行ってきました。

農作物を守るための祭りは、全国各地で現在も残っており、最も有名なのは富山市八尾町で行われる、越中八尾「おわら風の盆」でしょう。

風を鎮める豊年祈願と盆踊りが融合したこの祭りは、300年以上の歴史があります。

二百ニ十日(にひゃくはつか)

二百ニ十日とは、立春から220日目にあたる日で、その日前後は台風や強風など天候の悪い日が多いとされています。

二百ニ十日の時期

二百ニ十日は、立春の2月4日頃から数えて220日目で、毎年9月11日頃にあたります。

二百ニ十日の意味

二百二十日は台風や暴風に遭うことが多いとされる

二百ニ十日は、立春から数えて220日目にあたる日で、前述の「二百十日」と同じく、農作物に大きな影響を与える台風や暴風雨に遭うことが多いとされています。

農家にとっては油断のならないこの日を厄日とし、旧暦8月1日の「八朔(はっさく)」とともに農家の三大厄日といわれています。

また、それは農家だけでなく、漁業を営む漁師にとっても漁に出られるかどうか生死に関わる問題でもあったのです。

天気予報もなければ台風の予測もできなかった時代に、人々はこの日を厄日として注意を促すべきとし、災害を防ぐための祈りや祭りを行っていました。

古くから伝わる厄日は単なる人間の経験や知恵だけではなく、近代の日本の自然災害とも深く結びついているといえるでしょう。

2024年の雑節

雑節は、その年によって日付のずれが生じます。

2024年(令和6年)の雑節日程を、時系列にまとめましたのでご参考ください。

  • 1月18日(木):冬の土用
  • 2月3日(土):節分
  • 3月17日(日):春の彼岸入り
  • 3月15日(金):春の社日
  • 4月16日(火):春の土用
  • 5月1日(水):八十八夜
  • 6月10日(月):入梅
  • 7月1日(月):半夏生
  • 7月19日(金):夏の土用
  • 8月31日(土):二百十日
  • 9月10日(火):二百二十日
  • 9月19日(木):秋の彼岸入り
  • 9月21日(土):秋の社日
  • 10月20日(日):秋の土用

終わりに

二十四節気や五節句以外で、季節の節目を的確に表した雑節。

昔から伝わる風習として馴染みのある節分や彼岸も、雑節という季節を表す方式だったことは驚きだったと思います。

いずれも私たちの生活や農作業に照らし合わせて作られた特別な暦日で、天気予報もなかった時代から日本人の暮らしの中に活かされてきました。

そのたびに、伝統行事や民俗行事となっているものも多く馴染みが深いものです。

そして、二十四節気を補う意味合いをもち、1年間の季節の移り変わりをより的確に掴める雑節は、日本人の生活文化に根ざした暮らしの知恵の結集であり、まさに日本のための季節といえるでしょう。

稲作をする農家の人

以下の記事では、年中行事・イベントや祝日に古くから組み込まれている伝統文化や慣習をまとめています。

季節に応じて伝わってきたさまざまな行事は、主に農業を営む人たちにとっては今でも欠かすことのできない暦でした。

私たちの日常において、現在でもその伝統行事を受け継いでいます。

これらが何をきっかけに始まったのか、どんな風習があるのかを解説していますので、季節や日本の伝統をより深く感じるきっかけになれば幸いです。

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