
秋を彩る花や植物といえば、紅葉やコスモスなど。
今やメジャーとなった植物や花の観光スポットはいくつか知っているけど、それ以外で秋に楽しめる観光スポットを知りたい、観たい。
今回は、紅葉や銀杏が注目されるその陰で彩りを見せてくれている秋の花・植物を中心にそれぞれの生態や特徴を解説しながら観光スポットも紹介します。
ヒガンバナ(彼岸花)
彼岸花(ヒガンバナ)は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属(リコリス属)の多年草で、お盆が過ぎたお彼岸の時期に咲くことから名付けられたとされています。
由来としては一説ですが、彼岸花を食べた後はその毒性から「彼岸(死)しかない」といわれることから名づけられたともされており、不吉な花といわれることもあります。
また、サンスクリット語で「天界に咲く花」を意味して「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」という別名もあり、ラテン語で「リコリス」という名前でも流通していることがあります。
ヒガンバナは、1本の真っ直ぐな緑色の茎の先端に直径約10センチ前後の花を咲かせます。
他の花に比べて独特で、幅は5ミリ程度で長さは4センチ程の細い花びらが放射状に広がり、鮮やかに咲く様子からまるで現世で咲く花とは一線を画すほど荘厳な見た目です。
生態も他とは違い、彼岸花は球根から花が出てきて、その花が枯れた後に葉が成長します。
葉がない状態で花が咲いているため、花と葉を同時に見ることができないことから「葉見ず花見ず」といわれ、昔の人は恐れをなしたといわれています。
花びらの色は品種改良が進み、種類によって白や黄、クリーム、ピンクなどがありますが、日本で多く見られるのは赤です。
道端や人里に近い川岸、田んぼなどのあぜ道などに群生し、夏の終わりから秋にかけて咲く風景が印象的です。

巾着田
巾着田は、高麗本郷を流れる高麗川に囲まれた場所にあり巾着のような形に見えることから名付けられ、約22ヘクタールの平地がその昔全てが水田だったとされています。
そのうち約3.4ヘクタールの群生地に約500万本もの彼岸花が咲き誇り、雑木林の中を赤い絨毯で敷き詰められたような空間はまるで天上にいるような世界観です。
巾着田では彼岸花ではなく曼珠沙華と表現しており、大規模な曼珠沙華群生地として珍しい景観ですので一度は観にいかれると良いでしょう。
同じ敷地内にコスモスが咲いていることがあるのでついでに寄っていくことをおすすめします。
巾着田
住所:埼玉県日高市大字高麗本郷125-2
交通アクセス:西武池袋線「高麗駅」より徒歩約15分
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バラ(薔薇)
花の女王とも呼ばれる薔薇(バラ)は、ヨーロッパや北アフリカ、中東、中国など自生地はすべて北半球に限られており、5月中旬から11月上旬にかけて花咲きます。
葉や茎に棘ををもつ種類が多く、花びらは基本的に5枚の一重咲きですが、園芸種では大部分が八重咲きとなっています。
バラは、気品のある美しい姿と良い香りをもち、華やかな花姿や種類の多さから、アレンジメントやブーケなどにも多く使われています。
赤、白、黄、オレンジ、ピンク、アプリコット色、クリーム色、ブルー、茶など花色が豊富で、最近は一口にいって何色と言えない複色の品種も増えています。

生田緑地ばら苑
川崎市の生田緑地内にある生田緑地ばら苑は、バラの咲く春と秋の年2回に期間限定で一般公開しています。
多摩丘陵の雑木林を抜けると見えてくる苑内は約1.2ヘクタールある広さで、皇室にちなんだバラを集めた「ロイヤルコーナー」、小道を歩いて鑑賞を楽しめる「中央の丘」、50周年記念に新設された「イングリッシュローズコーナー」、バラのトンネルが見事な「パーゴラ通り」など春には約800種・3300株、秋は約625種2900株のバラが咲き誇ります。
花の女神フローラ像はフラワーショー15周年記念に朝日新聞社より贈られ、母子像は多摩美術大学教授早川巍一郎氏によって制作されました。
多摩丘陵の緑のパノラマに囲まれており、まるで秘密の花園を彷彿とさせる華やかな世界が広がります。
生田緑地ばら苑
住所:神奈川県川崎市多摩区長尾2-8-1
交通アクセス:
JR南武線「宿河原」駅より徒歩23分
小田急線「向ヶ丘遊園」駅より徒歩20分
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京成バラ園
京成バラ園は、京成グループが運営する千葉県一のバラ園です。
国内最大級のバラ園で、約1600種10000株ものバラを楽しめます。
オープン以来美しいバラ園作りに磨きをかけ、あらゆる演出で多くの人を魅了している傍ら、世界で開催されている薔薇コンクールでも輝かしい成績を残すなど、バラ文化の普及に尽力しています。
また、「恋人の聖地」に選定されたことで写真映えするスポットとして注目されているほか、房総の魅力500選にも選出されています。
京成バラ園
住所:千葉県八千代市大和田新田755
交通アクセス:
JR総武線「西船橋」駅より東葉高速鉄道に乗換え「八千代緑が丘駅」下車徒歩15分
地下鉄東西線で「東葉勝田台」駅行き「八千代緑が丘駅」下車徒歩15分
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ダリア
ダリアはキク科の多年草で、地下部が塊根になっている球根植物もありで、夏から秋にかけて開花します。
原産地はメキシコやグアテマラで、日本には江戸時代末期にオランダから持ち込まれたとされており、花姿がボタンに似ていることから「天竺牡丹」(テンジクボタン)という和名がつけられています。
ダリアといえば幅広の舌状の花弁が幾重にも重なる八重咲きが印象的ですが、豪華で力強く咲く大輪種から優雅な中輪種、可憐な小輪種、シンプルな一重咲きや変化咲きなど、品種が3万種を超えるといわれるバリエーションの多さです。
白や赤、オレンジ、ピンク、黄、紫、複色など色数も豊富で、花色だけでなく花型や大きさ、草丈、葉型などに無限の変化が見られるのがダリアの最大の魅力です。

町田ダリア園
町田ダリア園は、障がい者の働く場として町田市が設置した施設です。
約15000平行メートルの園内に約500品種・約4000株のダリアを栽培している西関東で最大級のダリア園で、6月から11月までの期間限定で開園しています。
ダリア独特の花色である二色咲き、絞り咲き、ブレンド(ぼかし)など美しさを楽しむ品種や、花径30センチを超える巨大輪から3センチ程のポンポン咲き品種まで出揃います。
町田ダリア園
住所:東京都町田市山崎町1213-1
交通アクセス:
JR横浜線・小田急線「町田」駅の下にある町田バスセンター5番乗り場より、山崎団地行きの神奈中バスで 「北一号」下車。
JR横浜線・小田急線「町田」駅北口にあるPOPビル前21番乗り場より、本町田経由野津田車庫行きまたは鶴川駅行きの神奈中バスで「今井谷戸」下車
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コスモス(秋桜)
コスモスは、キク科コスモス属の一年草で日本では秋の風物詩として知られています
メキシコの標高1600メートル以上の地域に自生し、18世紀末にアメリカ大陸からヨーロッパに持ち込まれ、幕末時期に日本に渡来したとされています。
コスモスの名前は「美しい」などの意味をもつギリシャ語の「kosmos」からきており、和名の「秋桜」は、花が秋に咲くことと花びらが桜を連想させることから名付けられたのが由来です。
花びらは通常8枚で、ピンクや白に加えて濃赤、黄やオレンジ色、複色が登場していき、咲き方も一重咲きだけでなく、八重咲きや花びらが筒状になったストロー咲き、花びらの縁が色づいた品種など豊富です。

国営昭和記念公園
国営昭和記念公園では、毎年9月中旬から11月にかけて、総面積20000平方メートル以上ある広大な敷地に総本数約550万本のさまざまなコスモスが咲き乱れて圧巻です。
毎年、テーマを変えてコスモスの組み合わせも異なるので、どういったコスモスが咲いているか断定できませんが、北の方にある「花の丘」では、白とピンク系統の淡いコスモス畑が広がります。
ある年には、キバナコスモスとレモンブライトの品種に限定し黄色系統でまとめられたビタミンカラーのコスモス畑となることがあります。
その裏にある「花の丘北花畑」では、オレンジや黄色の小さなコスモスの組み合わせ、濃淡のあるピンクや白のコスモスなどパレードミックスと称して展開されています。
園内の中央にある「原っぱ西花畑」原っぱ東花畑でも、さまざまな品種のコスモスが咲き揃うので見どころがあります。
国営昭和記念公園
住所:東京都立川市緑町3173
交通アクセス:
立川ゲートへは、JR中央線「立川」駅北口より徒歩約18分
西立川ゲートへは、JR青梅線「西立川」駅公園口より徒歩2分
昭島ゲートへは、JR青梅線「東中神」駅北口より徒歩約10分
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コキア
コキアは、別名で「ホウキソウ」「ホウキギ」とも呼ばれる雌雄同株の一年草です。
ふんわりもこもことした草姿がユニークで可愛らしい見た目が、フォトジェニックな秋の風景として注目を集めています。
草丈は50~100センチほどに生長し、鮮やかな緑色の葉を茂らせた後、秋が深まるにつれて少しずつ紅葉していきます。
緑から赤へのグラデーションを経て真っ赤に色づくと、その後は黄金色へと装いを変化するので秋の大地を長い期間彩りを楽しめます。

国営ひたち海浜公園
コキアといえば国営ひたち海浜公園でしょう、全国屈指の知名度を誇る定番スポットです。
春のネモフィラと秋のコキアは全国有数の知名度で、毎年大渋滞が発生するほどの人気ぶりです。
コキアが育つみはらしの丘は、秋が深まるとともに緑から赤へと少しずつグラデーションで変化していき、紅葉のピークには丘全体が真っ赤に色づく圧巻の景色を楽しめます。
国営ひたち海浜公園
住所:茨城県ひたちなか市馬渡字大沼605-4
交通アクセス:JR常磐線「勝田」駅東口より路線バス2番乗り場「海浜公園西口」下車
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ホテイアオイ(布袋葵)
ホテイアオイは、ミズアオイ科に属する水草で、夏から秋にかけて暑かった夏の終わりを告げるように涼しげな薄紫色の花を咲かせます。
別名「ホテイソウ」「ウォーターヒヤシンス」と呼ばれており、熱帯アメリカ原産の水生植物で17世紀にブラジルで発見されましたが、19世紀から20世紀にかけて世界各地に広まりました。
ホテイアオイについてさらに詳しい情報は、別の記事で詳しく解説していますので下記記事をご参考ください。
終わりに
紅葉やコスモスなどが注目を浴びる中、彼岸花やダリア、コキアと知る人ぞ知る秋の花を中心に生態や特徴、観光スポットを紹介しました。
秋の花や植物は比較的長い期間に咲き、紅葉が色づく頃にはコスモスやバラも同時期に見頃を迎えますので、ついでに寄るのもおすすめです。
コロナへの懸念が薄れた今、今年の秋は外に出て自然に触れながら実りの秋を楽しみましょう。
※使用カメラは、Cannon EOS 5D MarkⅡ、SONY α7Ⅱ