お祝いやお見舞いのプレゼントに選ばれることの多い、プリザーブドフラワー。
プリザーブドフラワーは、ドライフラワーとは違い、生花の状態を保つことができ、長い期間をかけて飾っておける花です。
筆者は長年、母の日に何かをしたり物をあげたりすることをしたことがありませんでした。
生花をあげてもすぐに枯れますし、母の好みをあまり知らなかったこともあります。
帰省した時に洋菓子のお土産を渡しても、喜ぶ姿を見なかったこともあるからかもしれません。
しかし、父の死後に思うところもあり、枯れない花として知られるプリザーブドフラワーの存在を知ってからは、毎年母の日に合わせて送っています。
今回は、誕生日や結婚などのお祝いや、入院のお見舞いにもおすすめしたいプリザーブドフラワーの魅力を紹介します。
プリザーブドフラワーの意味や特徴、生花やドライフラワーとの違いも解説していますので、大切な人へのプレゼントに役に立てれば幸いです。
プリザーブドフラワーの意味
プリザーブドフラワーの「プリザーブド」は、英語の「preserved」で「保存された」という意味があります。
生花を長期間楽しめるように、一番美しく華やかな時期に色素を抜き取り、保存加工(プリザーブド加工)を施した花です。
また、プリザーブド液と一緒に特別染料を吸わせる加工をするため、さまざまな色が楽しめるとともに、花そのものの瑞々しさと柔らかな風合いを保ちながら、まるで生花のような自然な仕上がりになります。
赤やピンクといった生花さながらの色から、自然にはないブルーやグリーン、紫など色鮮やかなカラーバリエーションも豊富で、枯れることがなく水やりの必要もないことが大きな特徴です。
時々、「ブリザードフラワー」や「ブリザーブドフラワー」と間違われる方がいますが、「Preserved Flower=保存された花」という意味で覚えておくといいでしょう。
プリザーブドフラワーの始まり
プリザーブドフラワーは、1991年にフランスのヴェルモント社が製法技術を開発し、世界特許を取得したのが始まりです。
その後、世界的なフラワーデザイナーたちが相次いで、アレンジメント作品に取り入れたことにより世界中に広まりました。
プリザーブドフラワーが日本に伝わったのは、1990年代とまだ新しい技術ですが、枯れないことと生花に比べて軽いなどの点が注目され、ウェディングブーケやテーブルフラワーなどに利用されることが増えています。
生産地はヨーロッパやアジア、南米、オーストラリアなどさまざまですが、日本では薔薇のプリザーブドフラワーが需要の9割以上を占めていることから、南米のエクアドルやコロンビア産の薔薇を使うことが多いです。
プリザーブドフラワーの特徴
プリザーブドフラワーには、生花やドライフラワーにはない特徴が数多くあります。
その主な特徴は、以下の3つです。
手入れが容易にできる
プリザーブドフラワーは、水やりの必要がなく、保存方法に気を遣えば長持ちしてくれるので、手入れがとても簡単です。
自宅を留守にすることが多く、あまり頻繁に水を与えることができない時でも、気兼ねなく花を楽しむことができます。
また、生花のように虫がつく可能性がないため、花が病気になってしまったり虫食いが起きたりするなどのトラブルを気にする必要もありません。
室内で手軽に美しい花を楽しむために、プリザーブドフラワーはうってつけの花材となります。
生花のような質感を維持できる
プリザーブドフラワーは、花が開ききった最もきれいな状態にある生花を、特殊加工で仕立てるため、華やかで美しい生花の質感を長期間維持できます。
そのため、水分を抜いて乾燥させてしまうドライフラワーとは違って、生花のような柔らかさと色合いを一緒に保てるのが魅力です。
枯らすことなく長期間楽しめる
生花は水やりをしても短期間で枯れてしまいますが、プリザーブドフラワーは最適な環境の下で保存すると、7~8年もの長い間、美しい状態で飾り続けることができます。
生花が萎れて元気を失くしてしまう様子を見るのは寂しいですが、プリザーブドフラワーならきれいなまま可憐な花を思う存分観賞できます。
また、相手に生花を贈った場合は、枯れた後に片付ける手間をかけてしまいますが、プリザーブドフラワーは思い出と一緒に、長い間飾っておくことができます。
生花に特殊な加工を施すことで長期間、生花そのものの美しさやしなやかさを保つプリザーブドフラワーは、生花より軽く、ドライフラワーより瑞々しい質感を表現できることが特徴です。
水やりなどの世話は必要なく、水気や湿気、直射日光などの強い光を避けるとより長く楽しめます。
プリザーブドフラワーを贈るメリット
お祝いやお見舞いのプレゼントに花を選びたい場合、プリザーブドフラワーが適している理由やメリットを紹介します。
準備や運搬のリスクがない
花を相手に贈るまでを想像した時、準備や運搬に不安を感じたことはないでしょうか。
生花は、気候や場所などの環境によって、贈る前に枯れてしまうことがあります。
また、ブーケの形で花がむき出しになっていることもあり、運搬時に萎れたり潰れたりする懸念もあります。
プリザーブドフラワーは、プレゼントとして準備する時も持ち運びの際にも、ギフトの状態で透明なケースに包まれることが多く、生花のように途中で萎れたり潰れたりする心配がないため、当日に慌てることなく準備をすることが可能です。
相手の手間や負担にならない
もし、生花を贈った場合は、相手が花瓶に移し替えたり、時々水を与えたりしなければなりません。
また、花が枯れてしまった時には、廃棄や片づけが必要になります。
一方、プリザーブドフラワーは、透明なケースから出しても入れたままでも、花瓶などへの移し替えが必要なく、飾っておくだけで長期間美しさを保ちます。
華やかで美しい花の状態で、水やりなどの世話なく長く飾れるという特徴は、インテリアにはもちろん、準備を念入りにしたいギフトシーンやウェディングシーンでも注目されています。
土や水を使わず衛生的
プリザーブドフラワーは、土や水を使わないため菌が繁殖することもなく、食卓や居間などにも安心して飾ることができます。
水を入れ替えたり、水をこぼしたりすることもないため、ベッドサイドに置いても安心です。
自分で楽しむ時も相手に贈る時も、花粉症などアレルギーの原因となる花粉や香りもありません。
また、基本的に透明なケースに包まれた状態が多いため、花に埃がつくこともありません。
クリアケースから出して飾っても問題がなく、花びらに埃がついた場合は柔らかい筆やドライヤーの弱冷風などで優しく払うだけです。
香りやアレルギーの心配がない
プリザーブドフラワーには香りがほとんどないため、料理や食事の邪魔をせず、自宅のダイニングテーブルにも飾って楽しめます。
また、飲食店のテーブル装飾にも、プリザーブドフラワーであれば長持ちするため、ずっと飾っておくことができます。
また、生花のような花粉や香りがないため、花粉症などを気にすることもなく、生花とドライフラワー両方のよさを兼ね備えた画期的な花として、大切な方へのプレゼントにも向いています。
幅広い用途に使える
プリザーブドフラワーは飾っておくだけで済むため、壁飾りやフレームアレンジなど、インテリアとして今までにないお花の飾り方をすることができます。
また、生花のように1週間ほどで枯れて捨てる、という負担を相手にかけないため、病院へのお見舞いや劇場への楽屋見舞い、飲食店などの開業祝いとして使われることも多いです。
数日で枯れてしまう生花は贈れないけれど、明るくて美しい花でお祝いやお見舞いの気持ちを届けたいという時に、花の状態が長持ちするプリザーブドフラワーはおすすめのギフトといえます。
プリザーブドフラワーのデメリット・注意点
そんなメリットが多いプリザーブドフラワーですが、時にはデメリットになることもあります。
贈る相手に注意
プリザーブドフラワーは、数日で枯れる生花とは違い、生花の状態が長く続くため、贈る相手に注意する必要があります。
特に、男性や普段から花を飾らない女性など、人によっては趣味に合わないとずっと飾ることが負担に感じることがあるため、贈る相手の性格や嗜好を確認しましょう。
定年退職や開店祝いとして男性に花を贈りたい場合は、数日で処分することになる生花が適しているかもしれません。
直射日光は劣化を早める
プリザーブドフラワーは、直射日光に弱い特徴があります。
日光が当たる窓際などに飾ると、温度変化だけでなく、紫外線による花びらの色褪せやダメージの原因になり、劣化を早めてしまいます。
陽射しが強い場所を避け、室内の中央か玄関などに飾るのがおすすめです。
火気厳禁
プリザーブドフラワーは、生花の状態を保つために特殊加工を施したものです。
成分によって枯れないように維持することを考えると、防炎・防カビ加工はされていません。
つまり、可燃性であるため、キッチン周りは危険であり、テーブル周りでもカセットコンロを使う状況には注意が必要です。
また、プリザーブドフラワーの付近で、タバコやアロマキャンドルなどの火を取り扱う際には、周囲や環境、状況に注意しましょう。
プリザーブドフラワーとドライフラワーの違い
プリザーブドフラワーに似た、保存する花としてドライフラワーがありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
違い(1)仕上がり
まず、プリザーブドフラワーは、ドライフラワーと仕上がりが異なります。
ドライフラワーは、生花の状態から水分を抜いて作るため、退色しやすく、手触りもカサカサで硬くなります。
そのため強く触ると、破片が散り壊れてしまうこともあるので注意が必要です。
違い(2)保存期間
ドライフラワーの保存期間は、保存環境やドライフラワーの種類にもよりますが、2~3ヶ月程度といわれています。
長いものだと1年ほど飾ることもできますが、時間が経つにつれて色褪せてきたり、花びらや葉がもろくなって壊れやすくなってきたりします。
一方で、プリザーブドフラワーも生花から水分を抜きますが、保湿成分や色素などを含む特殊な液体に浸して作る製法のため、生花のような質感を保ったまま飾っておけます。
プリザーブドフラワーの保存期間は比較的長いですが、いくら枯れないとはいえ、何年も経つと徐々に退色し劣化していきます。
ヨーロッパなど湿気が少ないところでは5~10年はもつといわれていますが、湿気が多い日本では約5年が目安とされています。
ただ少し工夫をすることで、日本でも5年以上美しい状態をキープすることができるそうです。
乾湿の差が激しい場所やエアコンの風が直接当たる場所はもちろん、高温多湿を避けてください。
前述の通り、直射日光も厳禁です。
プリザーブドフラワーをおすすめする理由
筆者が、プリザーブドフラワーを知った経緯や購入後の状況・経過を紹介します。
プリザーブドフラワーを知ったきっかけ
筆者は、父の死後に自分を責めている母を見て、居たたまれない気持ちになったことがあります。
そんな時に、母が父の享年を越えて古希(70歳)を迎えました。
古希祝いには紫色の贈り物という風習を知り、紫のアイテムを探していたところにプリザーブドフラワーという花ギフトを知りました。
生花だと数日後には枯れてしまうため、父の死後しばらくは酷だと思ったことも理由の1つです。
そこでプリザーブドフラワーのことを調べた上で、記憶の中では初めてかもしれない母の日のギフトとして、紫をベースにしたプリザーブドフラワーに決めました。
日本初のプリザーブドフラワー専門店ということで銀座にある「ベル・フルール」へ行き、フレーム型のシリーズが全6色あったため、紫から青、緑、桃、橙と毎年、母の日に合わせて送りました。
6年目になる今回は、最後の赤を外出したタイミングで配送手続きをしましたが、次はどのシリーズにしようか、今から決めておかないといけません。
プリザーブドフラワーを贈った、その後
その後のプリザーブドフラワーの状況はというと、新型コロナウィルス感染拡大が落ち着き、3年ぶりに帰省したところ、玄関やリビングなど至るところに飾ってありました。
少なくとも保管してくれていることと、最初に送った紫がほとんど退色していなく、保存状態がいいこともわかりました。
むしろ、色が濃くなってきている感じがしましたが、比較的涼しく湿度が低めである土地柄のおかげもあるでしょう。
ベル・フルールについて
筆者がおすすめする、プリザーブドフラワー専門店を紹介します。
株式会社ベル・フルール(Belles Fleurs)は、1981年創業で、花の世界を総合的にプロデュースするフラワーデザインカンパニーです。
1984年に小さなフラワーデザインスクールから始まり、2003年に法人化し、2008年に日本初のプリザーブドフラワー専門店を銀座にオープンしました。
以来、数々の有名ブランドや企業とのコラボレーション、国内外での講演・教育など幅広い分野で活動を広げています。
近年では、最新の花材を取り入れながら苔のシリーズから、葛飾北斎の浮世絵を融合したシリーズ、企業ロゴや動物の写真をプリザーブドフラワーで表現するベルデコといった、新しい試みを行っている注目の専門店です。
そして、2023年に15周年を迎えたことをきっかけにベル・フルール銀座本店が移転され、ラグジュアリーな空間で買い物やレッスンを楽しめます。
母の日が近づいてきたため、1年ぐらいぶりに店舗にきてみたら、閉店の貼り紙がされていて焦ったのは内緒です。
以前の店舗から30秒ほど手前に移転されていて、普通に素通りしてしまいました。
店舗は、銀座本店以外に都内や関西の百貨店舗もあり、詳しくはベル・フルール公式サイトをご参考ください。
終わりに
生花のような質感を保ち、世話いらずで長く保存できるプリザーブドフラワー。
家族や友人、大切な人への華やかなプレゼントに、長期間楽しめるプリザーブドフラワーも選択肢の1つに入れてみてはいかがでしょうか。
花の色による心理効果や、シチュエーション別の選び方もあるため、相手の好きな色や自分が贈りたい花の種類を選んでみてください。
※ベル・フルールの商品や店内写真は、筆者が撮影したもので掲載許可をいただいています。
以下の記事では、プリザーブドフラワーの花言葉から色のもつ意味・心理効果について紹介しています。
誕生日や開店祝いのほか、母の日、敬老の日など、贈るシーン別に適した色や種類の意味についても解説していますので、プリザーブドフラワーを贈る際に併せてご参考ください。