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文化財の定義や種類は?国宝・重要文化財や史跡名勝天然記念物などの意味

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社寺は日本文化の1つ(イメージ)

あなたは、「文化財」と聞くと、まずどんなものを思い浮かべるでしょうか。

また、文化財とはどのような種類があり、どのようなものがあるか知っていますでしょうか。

美術館などで貴重な展覧会として並べられるさまざまな出土品や芸術品、観光地などで目にする古い建築物や史跡、景観は目に見えるもののため、事実として認識しやすいでしょう。

ところが、演劇や祭りなどといった伝統的な風習や行事は、形としてはっきり見えないものですが、これも文化財と呼ばれているものがあります。

今回は、文化財の意味や種類、それぞれの違いを解説しながら、日本各地の文化財に登録されているスポットを一部紹介します。

美術館などの特別展示で鑑賞したり、現地で景観や展示物を観たりする時に、文化財であることを理解しているかしていないかだけで見え方や感じ方がきっと変わるでしょう。

また、その地へ行って何を、どこを観光するかも決めやすくなると思いますのでご参考になれば幸いです。

文化財とは

文化財は、日本国内で文化財保護法の対象とされるもので、人間の文化により残された有形・無形の中から、価値(文化的価値)を広く認められたものの総称です。

定義を引用すると、「我が国の長い歴史の中で生まれ、育まれ、先祖によって今日まで守り伝えられてきた古い建物や美術品、技術、生活や習わしなどの貴重な財産」のことです。

その主なものとして挙げると、寺院や神社、彫刻(仏像)、絵画、文書、祭事(民俗行事)、遺跡、希少な動物や植物などを指します。

これらの文化財は、私たちの暮らしや心を豊かにしてくれるものであり、先祖が残してくれた文化財を後世へ、つまり未来の子どもたちへ確実に受け継いでいくことが求められています。

日本文化をイメージする和傘

文化財の起源、文化財保護法とは

1949年(昭和24年)1月26日、法隆寺金堂の壁画が消失したことを契機に、議員立法により1950年(昭和25年)に文化財保護法が成立しました。

同法は指定・選定された文化財について、現状変更や修理、輸出などに一定の制限が課されますが、文化庁は有形文化財の保存修理や防災施設の設置、無形文化財の伝承者養成や記録作成、史跡の公有化など、保存や保護のために必要な助成を行っています。

その後、文化財の所有者による維持・管理にかかわる負担が大きくなったことで、文化財保護法は2019年(平成31年)4月に改正され、これまで保存の意味合いが強かった形から文化財を活用しながら保存する方向へと変わっています。

文化財をただ守るだけでなく、文化財を教育目的で公開する活動を行ったり、展覧会などで文化財を鑑賞する機会を図ったりするなど、これまで以上に活用できるようにし、そこで得た利益を維持・管理に回すことができます。

次は、文化財の分類とそれぞれの意味や特徴を説明します。

法隆寺(奈良県)

文化財の分類

文化財は、文化財保護法に基づいて大きく分類すると「有形文化財」「無形文化財」「民俗文化財」「記念物」「文化的景観」「伝統的建造物群」の6分野に定義されます。

  • 有形文化財:建造物、美術工芸品(絵画、工芸品、古文書、歴史資料など)
  • 無形文化財:演劇、音楽、工芸技術など
  • 民俗文化財:風俗慣習、民俗芸能、若しくはそれらに用いられる衣服、器具など
  • 記念物:遺跡、名勝地、動物、植物、地質鉱物
  • 文化的景観:地域における人々の生活や風土により形成された景観地
  • 伝統的建造物群:宿場町、城下町、農漁村など

この6分野からさらに、より重要なもの、特に価値の高いもの、保存と活用が必要なものを、国宝・重要文化財、史跡、名勝、天然記念物などというように細かく分類されます。

それらの価値あるものは国や県および市町村が指定・選定を行い、登録した後は指定文化財として保護の対象とするなど、その分野に最も適した方法で守られています。

有形文化財(建造物)

有形文化財は、建造物や工芸品、彫刻、書跡、典籍、古文書、考古資料、歴史資料など有形の文化的所産で、日本にとって歴史上、芸術上、学術上価値の高いものを総称したものです。

国宝・重要文化財(建造物)

日本の建造物における有形文化財のうち、国として歴史的・学術的に重要なものと措定・選定したものを「重要文化財」といいます。

その重要文化財の中でも、さらに世界文化の観点から価値が高く、他に類を見ないとみなされた文化財を国民の宝として、国が認可したものを「国宝」としています。

国宝・重要文化財建造物を後世に継承していくためには、適切な時期にさまざまな保存修理が必要です。
修理事業は所有者または管理団体が行いますが、多くの修理事業が国の補助事業として実施されています。
日本の歴史的建造物はほとんどが木で作られており、茅や檜皮のような植物性の屋根を有するものも多く、火災に対し極めて脆弱です。
このため、防災設備の設置に補助を行うことなどによって保護しています。

登録有形文化財(建造物)

有形文化財のうち、国・県・市町村が指定した文化財以外で保存活用が必要なものは、「登録有形文化財」として登録されます。

1996年(平成8年)10月1日に施行された文化財保護法の一部を改正したことによって、保存及び活用についての措置が特に必要とされる文化財建造物に対して、文部科学大臣が文化財登録原簿に登録する「文化財登録制度」が導入されました。

この制度は、近年の国土開発や都市計画の進展、生活様式の変化などにより社会的評価を受ける、消滅の危機に晒されている多種多様かつ大量の近代等の文化財建造物を後世に幅広く継承していくために作られたものです。
届出制と指導・助言等を基本とする緩やかな保護措置を講じるもので、従来の指定制度(重要なものを厳選し、許可制等の強い規制と手厚い保護を行うもの)を補完するものです。

主な例:
「国宝」中尊寺金色堂(岩手県平泉市)
「国宝」平等院鳳凰堂(京都府宇治市)
「重要文化財」南禅寺三門(京都府京都市)
「重要文化財」愛宕念仏寺本堂(京都府京都市)
「有形文化財」東京タワー(東京都港区)

有形文化財(美術工芸品)

有形文化財は先述の通り、日本にとって歴史上、芸術上、学術上価値の高いものを総称したものです。

この有形文化財のうち、建造物以外のものを美術工芸品として分類しています。

国宝・重要文化財(美術工芸品)

日本の美術工芸品における有形文化財のうち、国として歴史的・学術的に重要なものと措定・選定したものを「重要文化財」といいます。

その重要文化財の中でも、さらに世界文化の観点から価値が高く、他に類を見ないとみなされた文化財を国民の宝として、国が認可したものを「国宝」としています。

登録有形文化財(美術工芸品)

有形文化財のうち、国・県・市町村が指定した文化財以外で保存活用が必要なものは、「登録有形文化財」として登録されます。

2005年(平成17年)の文化財保護法の一部改正によって、美術工芸品にも「文化財登録制度」が導入されました。
関係地方公共団体の意見具申を受け、保存及び活用についての措置が特に必要とされる美術工芸品に対して、文部科学大臣が文化財登録原簿に登録します。

主な例:
「国宝」中尊寺経蔵堂内具(岩手県平泉市)
「重要文化財」岩手県平泉遺跡群出土品(岩手県平泉市)
「重要文化財」三内丸山遺跡の出土品(青森県青森市)

無形文化財

無形文化財は、演劇や音楽、工芸技術、その他の無形の文化的所産で、日本にとって歴史上または芸術上価値の高いものを指します。

人間の「技」そのものであり、具体的にはその技を体得した個人または集団によって体現されます。

登録無形文化財

2021年(令和3年)に文化財保護法の一部改正が行われ、登録制度の無形文化財が新設されました。

これまでの指定制度より基準や規制が緩やかで、幅広い文化財の保存や活用に繋げるのが狙いで、無形文化財として登録されると国の財政支援を受けられます。

この無形文化財のうち、重要なものを「重要無形文化財」に指定し、これらの技を高度に体現しているものを保持者または保持団体に認定し、日本の伝統的な技の継承を図っています。

保持者等の認定には「各個認定」「総合認定」「保持団体認定」の3つの方式がとられています。

主な例:
「重要無形文化財」歌舞伎、狂言、彫金、備前焼など
「登録無形文化財」京料理、書道など

民俗文化財

民俗文化財は、衣食住や生業、信仰、年中行事などに関する風俗慣習や民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋、その他の物件など、人々が日常生活の中で生み出し、継承してきた推移を示すものを「民俗文化財」といい、有形と無形のものがあります。

国は、有形である民俗文化財の収蔵施設や防災施設の設置、その修理に対し助成を行い、地方公共団体が行う無形の民俗文化財の保存・伝承事業及び民俗文化財の活用事業などに対しても助成を行っています。

有形、無形の民俗文化財のうち、特に重要なものを「重要有形民俗文化財」「重要無形民俗文化財」に指定しています。

また、重要有形民俗文化財以外の有形民俗文化財のうち、保存・活用のための措置が特に必要とされるものを「登録有形民俗文化財」として登録しています。

重要無形民俗文化財以外の無形の民俗文化財のうち、特に記録作成などを行う必要があるものを「記録作成などの措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択しています。

記念物(史跡名勝天然記念物)

記念物は、以下の3つに該当するものを総称したものです。

(1)貝塚、古墳、都城跡、城跡旧宅等の遺跡で我が国にとって歴史上または学術上価値の高いもの

(2)庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳等の名勝地で我が国にとって芸術上または鑑賞上価値の高いもの

(3)動物、植物及び地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いもの

国は、これらの記念物のうち、重要なものをこの種類に従って、「史跡」「名勝」「天然記念物」に指定し、これらの保護を図っています。

そのうち特に重要なものについては、それぞれ「特別史跡」「特別名勝」「特別天然記念物」として指定されます。

主な例:
「史跡」小田原城跡(神奈川県)
「特別史跡」三内丸山遺跡(青森県)
「特別史跡」本薬師寺跡(奈良県)
「名勝」厳美渓(岩手県一関市)
「特別名勝」毛越寺庭園(岩手県平泉市)
「特別天然記念物」都井岬ソテツ自生地(宮崎県)

文化的景観

地域における人々の生活、または生業及び当該地域の風土により形成された景観地で、国民の生活または生業の理解のため、欠くことのできないものを「文化的景観」としています。

日々の生活に根ざした身近な景観であるため、日頃その価値にはなかなか気づきにくいものです。

文化的景観を保護する制度を設けることによって、その文化的な価値を正しく評価し、地域で護り、次世代へと継承していくことができます。

文化的景観をもつ都道府県や市町村では、「景観法」や条例などに基づき、当該都道府県や市町村が策定する文化的景観保存計画により、文化的景観の適切な保存・活用を図っています。

このような文化的景観の中でも特に重要なものは、都道府県や市区町村の申出に基づき、「重要文化的景観」として選定されます。

主な例:
「重要文化的景観」阿蘇山(熊本県阿蘇郡)
「重要文化的景観」宮津天橋立の文化的景観(京都府宮津市)
「重要文化的景観」今帰仁村今泊のフクギ屋敷林と集落(沖縄県)

伝統的建造物群

周囲の環境と一体感があり、歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値が高いものを「伝統的建造物群」といいます。

1975年(昭和50年)の文化財保護法改正により伝統的建造物群保存地区の制度が発足し、城下町、宿場町、門前町など全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存が図られるようになりました。

市町村は、伝統的建造物群や付近で一体感をもっているものに対して、価値を形成している環境を守るために「伝統的建造物群保存地区」を決定し、地区内の現状変更の規制や保護のための事業などを行い、歴史的集落や町並みの保存と活用を図っています。

この伝統的建造物群保存地区のうち、市町村からの申出に基づき、日本にとって価値が高いと判断したものを「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されます。

市町村の保存・活用の取組みに対し、文化庁や都道府県教育委員会は指導・助言を行い、また、市町村が行う修理・修景事業、防災設備の設置事業、案内板の設置事業等に対して補助し、税制優遇措置を設ける等の支援を行っています。

主な例:
「重要伝統的建造物群保存地区」金沢市東山ひがし伝統的建造物群保存地区(石川県金沢市)
「重要伝統的建造物群保存地区」豊町御手洗伝統的建造物群保存地区(広島県呉市)

文化財に関するQ&A

文化財は誰が決めるのですか?

文化財は、文部科学大臣が文化審議会に諮問し、その答申を受けて指定・選定・登録を行うこととされています。

また、無形文化財と無形民俗文化財では、指定のほかに記録作成等の措置を講ずべきものを文化庁長官が選択し、その記録の作成に努めています。

指定文化財と登録文化財の違いは何ですか?

簡略化して説明すると、手厚い支援と強い規制で文化財を守るのが「指定」です。

これに対して、金銭的な支援は手厚くないけど、規制は緩やかなのが「登録」です。

つまり、登録文化財は指定文化財よりは少し価値のランクは下がり、あまり予算はかけられませんが、規制を緩やかにしていろんな文化財をより広い網にかけて守っていこうというのが登録の制度です。

文化財と世界遺産との違いは何ですか?

世界遺産は、世界遺産条約に基づいて指定・登録された物件で、建造物や遺跡などの「文化遺産」、自然地域などの「自然遺産」、文化遺産と自然遺産の両方の要素を兼ね備えた「複合遺産」の3種類があります。

文化財は、人類の長い歴史の中で生まれ育ち、守り続けられてきた財産の総称で、日本国内で文化財保護法の対象とされるものを指します。

建造物や美術品から伝統芸能までその幅が多岐にわたるのは、人々の生活とも密接に関わり、文化的な活動によって生み出された成果ともいえるでしょう。

その中でも保護の対象とされているのは、専門家による調査や審議会による選定や諮問、答申を経て、歴史・技術・学術的な価値などが確認でき、価値が高く優秀と認められたものになります。

世界遺産と日本における文化財との大きな違いはなく、その国や地域の象徴的な存在であるといえます。

世界遺産については、下記記事で詳しく解説していますのでご参考ください。

終わりに

以上で、日本における文化財の起源やそれぞれの意味、対象となる観光物件の一部を紹介しました。

筆者は、どこへ何を見るにしても行き当たりばったりであることが多く、後になってからその場所が国指定の史跡や名勝だったと気づくと、もっと深く観ておけばよかったと後悔することがあります。

また、その日の予定通り観光スポットを巡った後に、近くで価値あるものがあったのに寄らなかったことを後悔することもあります。

旅行を決めた際に、観光スポットをあらかじめ調べて計画を立てると思いますが、その観光エリア付近で世界遺産や文化財の対象になっているものがないかだけでも確認しておくと、当初の予定よりもさらに有意義で価値ある旅ができることでしょう。

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