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熊本の菊池渓谷や鍋ヶ滝、草千里、阿蘇山…癒しあり苦難ありの自然を巡る旅

2023年7月17日

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九州の中央に位置する熊本県には、多くの活火山や急流の川、温泉地があります。

熊本といえば、九州新幹線の全線開通をきっかけに生まれたご当地キャラのくまモンでしょうか。

あらゆる観光スポットの中でも熊本の自然に触れたいのであれば、阿蘇山や草千里、菊池渓谷が浮かんできます。

また歴史も深く、17世紀に建てられた日本三名城の1つである熊本城はじめ、伝統的な日本庭園で知られる水前寺公園や旧武家屋敷の細川邸も有名でしょう。

最近では南阿蘇鉄道が約7年ぶりに復旧し、全線で運行を再開したので一部スポットへのアクセスもしやすくなることでしょう。

今回は、熊本の阿蘇山や草千里、鍋ヶ滝など、夏をより熱く、時に涼しめる自然スポットを紹介します。

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颯彩(ふーあ)

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菊池渓谷

深い森のような菊池渓谷

菊池渓谷は、菊池市にある阿蘇くじゅう国立公園の一角に位置し、菊池川の水源がある静かで自然豊かな渓谷です。

約1193ヘクタールある広大な敷地内には、うっそうとしたブナやカエデなどの天然広葉樹が生い茂り、趣の異なる大小さまざまな滝を眺めながら自然遊歩道を散策できます。

四季折々の絶景を楽しめる癒しのスポットで、その変化に富む景色は、日本森林浴の森百選・日本名水百選・日本の滝百選などに選ばれた、菊池市を代表する観光名所です。

夏でも平均水温が13℃ほどで、春の新緑から夏の避暑、秋の紅葉、冬は霧氷の花と、1年を通じて美しい森林と清流のせせらぎを楽しめます。

黎明の滝

黎明の滝(菊池渓谷)

黎明の滝(れいめいのたき)は、水飛沫の上がる様子が、まるで朝靄が立ち込めるような景色を思わせるため、夜明けを意味する「黎明」の名がつきました。

滝と苔むした岸壁と、水の溜まったエメラルドグリーンの淵が美しい滝です。

天狗滝

天狗滝(菊池渓谷)

天狗滝(てんぐたき)は、山伏が修行の際に、身を洗い清めたとされる場所です。

落差が8メートルあり、水が激しく落ちる滝は圧巻です。

他に広々とした眺望が楽しめる広河原、秋にはカエデやケヤキなどが色づき真っ赤なモミジの絨毯が広がる紅葉ヶ瀬も見どころです。

菊池渓谷までのアクセス

住所

熊本県菊池市原5026

交通アクセス

車やタクシーの場合は、阿蘇くまもと空港より約60分、JR「熊本」駅より約90分

交通機関の場合は、JR「熊本:駅から熊本電鉄バス・菊池温泉行きで約1時間30分、菊池温泉より観光乗り合いタクシー「きくちあいのりタクシー」(要予約・土日祝運行)で約25分

大観峰

大観峰の展望台から望む大パノラマ

大観峰(だいかんぼう)は、標高936メートルある阿蘇北外輪山の最高峰に位置する天然の展望台です。

阿蘇五岳からくじゅう連山までが一望でき、360度の大パノラマが楽しめる阿蘇随一のビュースポットとされています。

もともとは「遠見ヶ鼻」と呼ばれていましたが、明治時代から昭和時代の初期にかけて活躍した熊本県出身のジャーナリスト・徳富蘇峰が、1922年にこの地を訪れ、その雄大な眺めに感動して「大観峰」と命名したことが由来です。

すぐ近くには国道212号がカルデラ内外を繋いでおり、ミルクロード沿いの大観峰へのアクセスがしやすく、駐車場も整備されています。

ミルクロードとは

阿蘇外輪山北東部の尾根を辿る道

大観峰を通り、阿蘇外輪山北東部の尾根を辿る道で、阿蘇のダイナミックな景色の美しさからドライブしているだけでも気持ちよいです。

広大な草原を走る爽快感が味わえる人気のツーリングルートでもあります。

特に新緑の季節は、青々とした草原が清々しくずっと眺めていたくなるでしょう。

大観峰までのアクセス

住所

熊本県阿蘇郡阿蘇町山田2090-8

交通アクセス

熊本空港より車やタクシーで約60分
JR「阿蘇」駅前にある道の駅阿蘇より車で約30分
黒川温泉より約30分

鍋ヶ滝

鍋ヶ滝

鍋ヶ滝(なべがたき)は、落差約10メートルと比較的低いですが、幅は約20メートルあり、透明なカーテンのように幅広く落ちる水が、木漏れ日に照らされる様子がとても優美です。

川のほとりで滝を間近に見ることができ、マイナスイオンを感じることができます。

他の滝とひと味違う特徴

鍋ヶ滝は滝の裏側からも風景を眺められる

鍋ヶ滝は、他の滝とひと味違い、滝の裏側からも風景を眺めることができることから、「裏見の滝」という別名でも呼ばれています。

阿蘇カルデラをつくった約9万年前の巨大噴火による火砕流が堆積してできたとされる鍋ヶ滝は、長い年月をかけて現在の形になりました。

滝ができる前はこの谷間に川が流れていましたが、噴火の際に火砕流が流れ込んだことで、凝結した固い岩石下の柔らかい地層が水に削られ、現在のように滝の裏の空間ができました。

上部の固い岩盤や滝の裏にある柔らかい地層は、今も浸食を繰り返し、少しずつ形を変えています。

そんな鍋ヶ滝は、2014年(平成26年)9月に世界ジオパークに認定された「阿蘇ジオパーク」の中でも、阿蘇の大地や自然の力を感じることができる注目のスポットです。

鍋ヶ滝へは上りではなく下り

鍋ヶ滝の裏側から見る洞窟のような景観も圧巻

鍋ヶ滝は、もう1つ他の滝とは違う特徴があり、現地へ向かう時には上るのではなく下ります。

滝を見にいく時は、一般的に階段や山道を上がっていくことが多いため、筆者はまるで洞窟にでも入っていくのかと思うほど、薄暗い入り口を見てびっくりしたものです。

帰りは、階段を上ることになるため、入り口付近には貸し出し無料の木杖が用意されています。

また、筆者が訪れた当時は、薄暗い自然そのものの山道でしたが、現在は整備されていて人工の階段になっているため危険はありません。

階段の途中では、石畳の中にハート型の石が5つ隠れているそうですので、コンプリートで見つけてみるのも楽しいでしょう。

入園は事前予約制

正面から見る鍋ヶ滝

なお、鍋ヶ滝公園へは、周辺道路の渋滞緩和と園内での密集を回避するため、2021年11月よりWebからの事前予約制となっています。

また、大雨・洪水警報による河川増水や、台風・地震による緊急事態など臨時休園となるケースもあります。

そのため、鍋ヶ滝へ行かれる方は、あらかじめ小国町公式サイトをご確認ください。

交通情報

鍋ヶ滝公園には、駐車場があります。

JR熊本駅から車やタクシーで鍋ヶ滝へ向かう時には、高速がないため下道で行くと約1時間45分、国道57号線からミルクロードへ抜けるルートがおすすめです。

また、黒川温泉からは車で約20分で行けます。

せっかく鍋ヶ滝まできたら、前述の大観峰までは車で30分ほどの距離のため、寄っていくとよいでしょう。

鍋ヶ滝までのアクセス

住所

熊本県阿蘇郡小国町黒渕

交通アクセス

道の駅・小国ゆうステーションより車やタクシーで10分

米塚/上米塚

米塚と上米塚という名の小さな山を紹介します。

米塚

米塚

米塚(こめづか)は、高さ80メートルの小さな山ですが、小さいながらもれっきとした火山で、約3000年以上前の噴火で形成されたスコリア丘といわれています。

底面の直径が約380メートルで、頂上部分は直径100メートルほどの火口で大きく窪んでいるのが特徴です。

均整の取れた美しいフォルムは、お椀を逆さにしたような形で、阿蘇神社の祭神である健磐龍命(たけいわたつのみこと)が、収穫した米を積み上げ山をつくり、頂上のくぼみは掌で米をすくった跡に由来して名づけられました。

斜面は柔らかな草原に覆われているため、春から夏にかけては緑一色に染まり、美しい姿を見ることができます。

上米塚

上米塚と、右奥は杵島岳

上米塚(かみこめづか)は、道路を作る際に一部を切り開かれた岩で、スコリア丘の断面構造を直接観察できる貴重なスポットです。

阿蘇の溶岩石が赤い部分は火口の近くでゆっくり冷えて鉄分が酸化し、黒い部分は鉄分が酸化されずに比較的早く冷えたことを示しています。

写真の右奥に見えるのは杵島岳で、4000年前に形成された同じスコリア火山です。

阿蘇山上から米塚に向かう県道298号線の途中にあるため、米塚の姿が見えてきたら看板に注意して見てください。

写真に映っている男性は、案内してくれた観光タクシーのおじさんで、手土産にと赤い溶岩石を採ってくれています。

スコリア丘の断面構造が見られる上米塚

スコリア丘とは

杵島岳も4000年前に形成された同じスコリア火山

スコリアは、花火のように噴き上がったマグマの飛沫から、ガスが抜けた黒い軽石のことです。

その軽石が火口の周りに降り積もっていき、均整のとれた円錐台形の山ができたものをスコリア丘(スコリアきゅう)といい、主に玄武岩や安山岩の溶岩による噴火活動によって形成されます。

米塚までのアクセス

住所

熊本県阿蘇市乙姫

草千里ヶ浜(草千里)

草千里ヶ浜

草千里ヶ浜は、南阿蘇村にある面積78万5000平方メートルの草原地帯で、草千里とも呼ばれています。

噴煙を上げる中岳を望み、大きな池や放牧された馬が悠々と歩く姿など、絶好のロケーションを誇る阿蘇を代表する観光地です。

2013年に国の名勝天然記念物に指定され、その面積は125万8508平方メートルとされています。

草千里ヶ浜

阿蘇の草原は約1万3千年前、縄文時代から存在したといわれています。

日本の気候で考えると、本来なら自然の力だけで草原が維持されることはなく、人と自然が手をとり合い、育んできた場所なのでしょう。

阿蘇五岳の1つである烏帽子岳の北麓に広がる火口の跡から生まれた青々とした大草原に、雨水が溜まってできたといわれる池と織りなす自然のコントラストが美しいです。

放牧馬で草原を一周

通常の馬より体格が大きい草千里ヶ浜の放牧馬

草千里ヶ浜では、通常に見られる馬よりもひと回りも大きい放牧馬がおり、のんびりと草を食している牧場的な風景は、時間がゆったりと流れて気持ちがいいです。

多くの観光客がドライブの途中に立ち寄り、のんびりと散策していきます。

草千里では、草原を一周できる引き馬乗りもあり、草千里への観光が人気の高い理由のひとつでしょう。

中岳火口までを一望する展望所

草千里ヶ浜では草原を1周できる引き馬体験もできる

筆者は、駐車場から歩いて草千里を目の前にした風景しか見ていませんが、阿蘇火山博物館と草千里レストハウスの間の階段を上ったところにある草千里展望所(草千里ヶ浜展望所)へいくと、草千里の端から中岳火口までを一望する大パノラマが広がります。

草千里が、阿蘇五岳の1つである烏帽子の、3万年前に形成された直径11キロの旧火口だということがわかるそうです。

また、2つの池があり、西側の池が外側の火口底、東側の池が内側の火口で、2つの火口があることもわかります。

阿蘇火山の地形や地質、動植物について詳しく知りたい場合は、阿蘇草千里駐車場の一角にある阿蘇火山博物館へ立ち寄ってみてください。

草千里ヶ浜までのアクセス

住所

熊本県阿蘇市草千里ヶ浜

交通アクセス

JR「阿蘇」駅より産交バス・阿蘇火口線で約25分、「草千里阿蘇火山博物館前」下車

阿蘇山

阿蘇山の中岳火口

阿蘇山は、熊本県阿蘇地方に位置する火山で、九州を代表する景勝地です。

世界でも有数規模のカルデラと中央火口丘で構成され、高岳・中岳・根子岳・烏帽子岳・杵島岳の阿蘇五岳を中心とする連山を指していることが多いですが、広い意味では外輪山や火口原も含めた中央火口丘群のことを、阿蘇山と呼んでいます。

標高1592メートルある高岳が最高点ともされる日本百名山の1つで、現在も活発に火山活動を行っているため、今も噴煙を上げ続けている中岳火口を見られるのが特徴です。

そして、現在の阿蘇山ができるまでに、4回の大規模な噴火があったとされています。

活発な火山活動で避難指示

阿蘇山火山口に着いた途端に警報ボードが避難・下山を促す赤に点灯

阿蘇火口駅でロープウェーを下りてすぐに警報が鳴り、写真のように警報ボードのパトライトが避難・下山を促す赤で点灯していました。

緊迫した空気が流れる中で、遠くに見える山々を眺めながら、周辺の人たちと一緒に解除を待ちました。

約30分ほど待ったでしょうか、避難解除された後、案内に従いながら入山しました。

阿蘇中岳火口周辺案内図

歩行ルートの最初にある火口西展望所から見た火口は、硫黄成分が酸化して薄緑色になった緑マグマが見えていて、火山活動を目の当たりにできることが衝撃でした。

また、歩行ルートの終盤には第7火口の跡があり、火山の生々しい力を感じます。

硫黄成分が酸化してできる緑マグマ

煙が立ち込めていたためさっと1周してきましたが、ホテルに戻る時には頭痛がひどく体調が悪くなり、部屋に着いた途端に安堵したのか嘔吐しました。

持ってきていた頭痛薬とともに水分をとりながら眠ってしまい、夕食の時間までには復調しましたが、阿蘇山へ行かれる時はガスを吸いすぎないようにしてください。

最近では、2023年3月に気象庁より阿蘇中岳噴火警戒レベルが1に引き下げられ、午後には火口周辺立入規制が解除され、阿蘇山火口シャトルの運行も再開しています。

なお、噴火の状態により規制が変わりやすく、火口見学ができない場合もありますので、都度情報を確認してください。

カルデラとは

阿蘇山の第7火口跡

カルデラとは、火山の噴火によってできる大きな円形のくぼ地(窪み)のことです。

釜や鍋という意味のスペイン語に由来し、カルデラが初めて研究されたカナリア諸島での現地名からきています。

一般的にいわれる火口は直径1キロを越えることがありませんが、カルデラはそれよりもはるかに大きい規模とされています。

これだけの大きな陥没は、単純な噴火や爆発でできたものではないと考えられることから火口と区別されています。

ちなみに日本国内にあるカルデラは、日本最大の「屈斜路湖」、青森県と秋田県にまたがる「十和田湖」、過去4回の巨大噴火によって形成された「阿蘇カルデラ」、約3万年前の巨大噴火で形成された「姶良(あいら)カルデラ」の4つです。

阿蘇山からの眺め

阿蘇山までのアクセス

住所

熊本県阿蘇市黒川

交通アクセス

JR「阿蘇」駅より産交バス・阿蘇火口線で約35分、阿蘇山上ターミナル(火口シャトルのりば)下車
阿蘇くまもと空港より約1時間

白川水源

透明度の高い白川水源

白川水源(しらかわすいげん)は、熊本市内で特に南阿蘇村の中央を流れる一級河川・白川の総水源で、毎分およそ60トンもの水が湧き出ています。

水温は、年間を通じて14℃で、透明度が高いため大量の水が池底の砂を舞い上がらせて湧出しているのを見ることができます。

水は柔らかい飲み心地で、お茶の味を最大限に引き出すといわれるため、平日でも九州各県から多くの人が集まり、水を汲んでいきます。

地酒やミネラルウォーターの原水としても使われ、地場産業の発展にも役立っているそうです。

白川水源ではその場で水が飲める

この地では、古くから水に対する信仰があり、水源地がある白川吉見神社の境内に「みつはのめ神」という水神様が祀られています。

白川吉見神社には、高森草部吉見神社の主神である国龍神も祀られていますが、水神信仰の方が古いといわれています。

1985年(昭和61年)に、日本名水百選に選ばれています。

水源の水は、自由に持ち帰ることができ、加熱処理された水も販売されています。

白川水源までのアクセス

住所

熊本県阿蘇郡南阿蘇村白川2040

交通アクセス

南阿蘇鉄道「南阿蘇白川水源」駅より徒歩10分

JR「熊本」駅または阿蘇くまもと空港より産交バス・快速たかもり号(高森行)で白川水源入口下車すぐ

終わりに

道中に見かけた牧場と山々、草を食べる馬たち

いま振り返ってみても、当時の熊本はアクセスが不便で観光タクシーを利用しての移動はスムーズでした。

それでもタクシーのおじさんたちが気さくで、各スポットを説明してもらいながら一緒にドライブしている気分でした。

また、阿蘇で泊まったホテルの支配人が意外に親近感が沸くと思っていたら、過去に筆者の居住地近くに住んでいた事実も発覚し、偶然の出会いには衝撃的でした。

近くにあるお店の話も一致しているなど和気あいあいと過ごせた、印象深く残る思い出です。

そして、2016年の熊本地震で甚大な被害を受けていた南阿蘇鉄道が2023年7月、約7年ぶりに全線で運行を再開しました。

それにより、白川水源などへのアクセスがしやすくなっていますので、この夏はより熱く、時に涼しく過ごせる熊本へ旅してはいかがでしょうか。

※使用カメラは、OLYMPUS PENなど

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以下の記事では、パワースポットの集まる宮崎県の自然旅を紹介しています。

神話から成る自然や野生馬の歴史など、九州エリアの自然を巡る観光情報としてご参考ください。

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