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世界遺産ができた由来から種類や意味、登録までの流れ、文化財との違いも解説

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地球儀

あなたは、「世界遺産」と聞くと、まずどんなものを思い浮かべるでしょうか。

また、日本の世界遺産はどのくらいあるのか、どのようなものが認められているか知っていますか。

大きな美術館で期間限定の展覧会として並べられる芸術品、地域の観光地で見られる古い建物や景色は、目に見える事実として認識しやすいですが、それらが世界遺産といえるかはっきりしないこともあります。

今回は、世界遺産とは何か、何がきっかけで始まったのか、意味や起源はじめ、種類、登録までの流れ、そして日本各地にある世界遺産を紹介します。

現地の景観や建築物はじめ、神社や寺院などの展示品を目にする時に、世界遺産であることを知っているか知らないかだけで見え方や感じ方がきっと変わるでしょう。

また、何を鑑賞するかどこを観光するかも決めやすくなると思いますので参考にしてください。

世界遺産とは?

世界遺産は、世界遺産条約に基づいて「世界遺産リスト」に登録された、顕著な普遍的価値をもつ建造物や遺跡、景観、自然を指します。

顕著な普遍的価値を有するなどの条件を満たしていることが必要で、どの国や地域の人でも、いつの時代のどの世代の人でも、どのような信仰や価値観をもつ人でも、同じように素晴らしいと感じる価値のことで、そうした価値をもつ世界遺産は、人類共通の財産といえます。

世界遺産の起源

世界遺産の起源・歴史は、1950年代に遡ります。

エジプトでナイル川の氾濫に頭を悩ませていたことから、氾濫抑制と農業用水の確保、安定的な電力供給などを目的に、他国の援助を受けてアスワン・ハイ・ダムの建設計画を決定しました。

しかし、このダムを建設することによって、古代エジプト文明の遺跡でもあるアブ・シンベル神殿やフィラエのイシス神殿などのヌビア遺跡が、ダム湖の底に水没してしまうことが判明します。

これを受けて、1960年にユネスコはヌビアの遺跡群救済キャンペーンを開始し、本格的な募金活動を行うことにしました。

多くの国から寄付金が集まり、大規模な移築工事を行い、ヌビア遺跡内の一部が救済されたことが始まりとされています。

約50ものの国々や団体、個人が協力してこの遺産を救済したという経験は、「人類共通の遺産」を国際協力によって守るという理念を生み出し、後の世界遺産の考え方に繋がっていきました。

アブ・シンベル神殿(エジプト)

世界遺産条約の発効

世界遺産条約は、人類全体のための世界遺産として、損傷や破壊などの脅威から保護し保存していくために、国際的な協力や援助の体制を確立することを目的とした条約で、1972年にユネスコ総会で採択され、1975年に発効しました。

2023年7月時点で195ヵ国が加盟し、世界遺産条約の締約国となっています。

日本は、1992年9月に125番目の加盟国として世界遺産条約を締結し、国際的な協力・援助体制の構築に貢献しています。

名称

世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)

目的

文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存するための国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的とする

採択

1972年 (日本は1992年に締結)

締約国数

194ヵ国 (2022年5月時点)

事務局

ユネスコ事務局世界遺産センター(パリ)

条約(イメージ)

世界遺産の種類と数

世界遺産は、人類が作り上げた記念工作物、建造物、遺跡などの「文化遺産」と、地球の歴史や動植物の自生地や自然景観などの進化を伝える「自然遺産」、それら両方の価値をもつ「複合遺産」に分類されます。

3つに分類される世界遺産の中でも文化遺産が最も多く、世界遺産の総数は1000件を超えます。

2023年(令和5年)1月時点で登録されている世界遺産は1157件で、そのうち文化遺産は900件、自然遺産は218件、複合遺産が39件あります。

文化遺産(世界文化遺産)

世界的な観点から見て、歴史上、美術上、科学上、顕著な普遍的価値を有する建造物や遺跡、記念工作物などが対象で、社会の歴史の中で長期間にわたって維持・継承されてきたものを指します。

主な例:
富士山-信仰の対象と芸術の源泉(日本)
法隆寺地域の仏教建造物(日本)
モン・サン・ミシェルとその湾(フランス)
アンコールの遺跡群(カンボジア王国)
万里の長城(中国)
メンフィスとその墓地遺跡(エジプト・アラブ共和国)
など

モン・サン・ミシェル(フランス)

自然遺産(世界自然遺産)

世界的な観点から見て、観賞上、学術上または保存上、顕著な普遍的価値を有する景観や地形、脅威にさらされている絶滅危惧種といった動植物の生息地などが対象で、世界的に価値がある自然現象または地域を指します。

主な例:
グランド・キャニオン国立公園(アメリカ)
ガラパゴス諸島(エクアドル)
キリマンジャロ国立公園(タンザニア連合共和国)
カナディアン・ロッキー山脈自然公園群(カナダ)
白神山地(日本)
屋久島(日本)
沖縄島北部及び西表島(日本)
など

グランド・キャニオン国立公園(アメリカ)

複合遺産(世界複合遺産)

文化遺産と自然遺産の両面での価値を兼ね備え、登録基準を満たしたものが対象です。

日本には現在のところ、複合遺産として登録されている物件はありません。

主な例:
マチュ・ピチュの歴史保護区(ペルー共和国)
ウルル-カタ・ジュタ国立公園(オーストラリア)
黄山(中国)
など

マチュ・ピチュの歴史保護区(ペルー共和国)

日本の世界遺産

世界遺産条約が採択されたユネスコ総会の議長は、萩原徹日本政府代表が務めました。

しかし、日本が世界遺産条約に参加したのは、世界遺産条約が採択されてから20年後の1992年です。

そして1993年(平成5年)には、「法隆寺地域の仏教建造物群(文化)」「姫路城(文化)」「白神山地(自然)」「屋久島(自然)」の4件が同時に、日本で初めての世界遺産として登録されました。

その後も世界遺産保全への協力や、真正性などといった価値の見直しに日本は重要な役割を担っています。

日本の世界遺産は、2023年(令和5年)1月時点で文化遺産20件、自然遺産5件の計25件が登録されています。

文化遺産

1.法隆寺地域の仏教建造物(1993年)
2.姫路城(1993年)
3.古都京都の文化財(1994年)
4.白川郷・五箇山の合掌造り集落(1995年)
5.原爆ドーム(1996年)
6.厳島神社(1996年)
7.古都奈良の文化財(1998年)
8.日光の社寺(1999年)
9.琉球王国のグスク及び関連遺産群(2000年)
10.紀伊山地の霊場と参詣道(2004年)
11.石見銀山遺跡とその文化的景観(2007年)
12.平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-(2011年)
13.富士山-信仰の対象と芸術の源泉-(2013年)
14.富岡製糸場と絹産業遺産群(2014年)
15.明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(2015年)
16.ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-(2016年)
17.「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(2017年)
18.長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(2018年)
19.百舌鳥・古市古墳群-古代日本の墳墓群-(2019年)
20.北海道・北東北の縄文遺跡群(2021年)

富士山

自然遺産

1.屋久島(1993年)
2.白神山地(1993年)
3.知床(2005年)
4.小笠原諸島(2011年)
5.奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(2021年)

白神山地

複合遺産

現時点で該当なし

世界遺産登録までの流れ

世界遺産は、政府や国際機関によるい幾多の手続きや調査を得た上で登録されます。
世界文化遺産登録を目指す物件は、前提としてはまず世界遺産暫定一覧表に記載される必要があります。

世界遺産暫定一覧表に記載された後は、遺産の保存管理計画を策定するなど条件の整った物件からユネスコ世界遺産委員会へ推薦書を提出し、審査、現地調査などを経て世界遺産への登録の可否が決定されます。

<日本の場合>都道府県・市町村が共同で文化庁へ提案

各国政府が世界遺産条約を締結・批准
<日本の場合>文化審議会世界文化遺産特別委員会で審査

各国が作成した世界遺産暫定リストから推薦書を提出
ユネスコの世界遺産センターが推薦書を受理し専門調査を依頼

文化遺産の場合は、ICOMOSが現地調査・審査
自然遺産の場合は、IUCNが現地調査・審査

ユネスコの世界遺産センターを通して専門調査に基づく勧告

世界遺産委員会にて審議・決議し、世界遺産登録が決定

ユネスコ(U.N.E.S.C.O.)

ユネスコとは、フランス・パリに本部を置く国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)の略称です。
「諸国民の教育、科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とした国際連合の専門機関」として、世界平和の実現を目標に掲げている組織です。

ユネスコ世界遺産センター

1992年にパリのユネスコ本部内に設置された、世界遺産委員会の事務局です。
世界遺産委員会開催のための事務作業や締約国への技術・情報提供、世界遺産基金の運営などを行っています。

世界遺産委員会

世界遺産条約締約国の中から選ばれた21カ国によって構成される委員会です。
世界遺産リストや危機遺産リストを作成するほか、登録された遺産のモニタリングや保護を支援し、世界遺産基金を用いて援助を行っています。

ICOMOS

国際記念物遺跡会議を意味し、1965年に設立された非政府国際機関です。
推薦された文化遺産に対し、調査に基づいて専門的評価を行い、世界遺産委員会に協力しています。

IUCN

国際自然保護連合を意味し、1948年に各国政府、国際団体、民間自然保護団体が参加して設立された、自然環境保全に関する国際的な連合体です。
推薦された自然遺産に対し、調査に基づいて専門的評価を行い、世界遺産委員会に協力しています。

ユネスコのシンボルマーク

文化財との違い

文化財は、日本国内で文化財保護法の対象とされるもので、人間の文化により残された有形・無形の中から、価値(文化的価値)を広く認められたものの総称です。

長い歴史の中で生まれ、先祖によって今日まで守り伝えられてきた古い建物や美術品、技術、生活や習わしなどの貴重な財産のことです。

その主なものとして挙げると、寺院や神社、彫刻(仏像)、絵画、文書、祭事(民俗行事)、遺跡、希少な動物や植物などを指します。

文化財として登録されている主な例として、平等院鳳凰堂(京都府宇治市)や東京タワー(東京都港区)などが挙げられます。

日本における文化財については、下記記事で詳しく解説していますのでご参考ください。

世界遺産に関するQ&A

一番最初に登録された世界遺産はどこですか?

1978年に世界遺産第1号として登録された1つとして「ガラパゴス諸島」があります。

ガラパゴス諸島は、大陸と陸続きになった歴史をもたず、その島々の生物が独自に進化を遂げたといわれ、その生態系の特性などから世界遺産に登録されました。

日本が独自に発展させたガラケー(ガラパゴス携帯)の語源にもなっています。

ガラパゴス諸島

世界遺産はどの国が一番多いのですか?

世界遺産の登録数で最も多い国は、2023年1月時点でイタリアの計58件です。

ローマ遺跡や教会、ルネサンス期の街並みなど、特に海外の旅好きなら誰もが知っている世界遺産が豊富です。

1位:イタリア 58件
2位:中国 56件
3位:ドイツ 51件
(日本は11位、25件)

それに対して日本は、世界で11番目の計25件で意外と上位に食い込んでいます。

国土が狭い割に寺院や神社、城、島などジャンルも豊富で、世界的に価値の高いものが多いということも誇りに感じますね。

日本以外で有名な世界遺産は?

日本以外で最も知られる世界遺産の主な例としては、アメリカの「グランド・キャニオン国立公園」、中国の「万里の長城」、カンボジアの「アンコール」でしょうか。

楽天トラベルが行ったとされる「本当に行ってよかった世界遺産ランキング」のアンケート結果は以下の通りです。

ヴェルサイユの宮殿と庭園(フランス)
モン・サン・ミシェルとその湾(フランス)
フィレンツェ歴史地区(イタリア)
※アンケート期間:2019年10月10日~10月15日、投票者数:6167

世界遺産登録後でも削除されることはある?

各国の推薦を受けて世界遺産委員会で、価値があると評価されてから登録されるのが世界遺産です。

しかし、世界遺産登録の基本条件となる「顕著な普遍的価値」が失われたと判断された場合には、世界遺産一覧表から削除されることがあります。

つまり、景観が保護されていなかったり、手を加えて開発されたりすると、登録が抹消される可能性が高くなります。

2023年1月時点で、以下の3件が登録抹消されています。

アラビアオリックスの保護地区(オマーン)

密猟とオマーン政府による設定区域の削減が原因で、景観の保護を損なうとして2007年に登録抹消されました。

ドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ)

ヴァルドシュロス橋という新しいコンクリートの橋建設が行われていたことにより、景観の保護を損なうとして2009年に登録抹消されました。

海商都市リヴァプール(イギリス)

ウォーターフロント開発計画などの再開発により、景観の保護を損なうとして2021年に登録抹消されました。

世界遺産と文化財の違いは何ですか?

世界遺産は、世界遺産条約に基づいて指定・登録された物件で、建造物や遺跡などの「文化遺産」、自然地域などの「自然遺産」、文化遺産と自然遺産の両方の要素を兼ね備えた「複合遺産」の3種類があります。

文化財は、人類の長い歴史の中で生まれ育ち、守り続けられてきた財産の総称で、日本国内で文化財保護法の対象とされるものを指します。

建造物や美術品から伝統芸能までその幅が多岐にわたるのは、人々の生活とも密接に関わり、文化的な活動によって生み出された成果ともいえるでしょう。

その中でも保護の対象とされているのは、専門家による調査や審議会による選定や諮問、答申を経て、歴史・技術・学術的な価値などが確認でき、価値が高く優秀と認められたものになります。

世界遺産と日本における文化財との大きな違いはなく、その国や地域の象徴的な存在であるといえます。

期間限定情報

白神山地は、2023年(令和5年)12月に世界自然遺産登録30周年を迎えます。

青森県や市町村、関係団体では、講座やキャンプなど多彩なイベントやツアーを企画しています。

白神山地のブナ林を散策するトレッキングツアーやラフティング、カヌーなどアクティビティも豊富です。

白神山地世界自然遺産登録30周年特設ホームページもありますので、詳しくは当サイトにて確認してみてください。

白神山地の世界自然遺産登録30周年ロゴマーク

終わりに

以上で、世界遺産の意味や起源、日本の世界遺産を紹介しました。

筆者は、どこへ何を見るにしても行き当たりばったりであることが多く、後になってからその場所が世界遺産だったと気づくと、もっと深く知り見ればよかったと後悔することがあります。

また、以前に訪れた場所が後に世界遺産に登録されたこともあります。

旅行日程を決める際に、どこを観光するかを計画すると思いますが、その付近で世界遺産や文化財の対象になっているものがないかだけでも確認しておくと、当初の予定よりもさらに充実した価値ある旅が過ごせることでしょう。

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