知る 歳時記・暦

五節句とは?人日・上巳・端午・七夕・重陽の意味、行事に使われる五色の秘密

2024年1月21日

当サイトの記事内には広告を含む場合があります

奈良時代に中国から伝わった奇数が重なる日を縁起のよい日としてお祝いされてきた風習

古代中国から縁起のよい日として伝わってきた、日本の季節を彩る五節句。

ひな祭りを飾る桃の節句、鯉のぼりを掲げる端午の節句など昔からの風習を聞いたことがある人もいるでしょう。

七草粥や七夕も、実は五節句の1つにあたる伝統行事です。

今回は、季節の節目に行われてきた五節句の起源や種類について紹介します。

人日・上巳・端午・七夕・重陽の5つある節句それぞれの意味も解説しますので、春夏秋冬だけではない季節を楽しむご参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

颯彩(ふーあ)

  • 当ブログ2年目、投稿記事150本以上
  • 旅トレイル・カメラ歴10年以上、ギフト100件以上
  • Web歴13年・デザイナー&コーダー時々エディタ

運営者情報を見る

五節句とは

五節句(ごせっく)は、奈良時代に中国から伝わった奇数が重なる日を、縁起のよい日としてお祝いされてきた風習です。

季節の変わり目に無病息災や子孫繁栄、豊作などを願い、神様にお供え物をしたり邪気を払ったりする伝統行事で、五節供とも表されます。

五節句の起源

五節句は中国から伝わってきた季節の変わり目、奇数を重ねてできた5つの節句

五節句は、もともと中国の唐時代に定められた暦の1つです。

漢字の「節」は季節の節目を意味し、中国では古来より奇数にあたる日を縁起のよい「陽」の数、偶数の日を縁起の悪い「陰」の数という思想がありました。

一方で縁起のよい奇数の日(陽の数)が重なると、逆に陰の数となり不吉な日ともされていたことからそれを避けるための魔除けや邪気を払う習わしを行っていたのです。

例えば1月1日は1+1=2、3月3日は3+3=6、5月5日は5+5=10、7月7日は7+7=14、9月9日は9+9で18、どれも合計が偶数になることに気づきます。

また節句は、もともと「節供」とも表し季節のご馳走を意味します。

縁起のよい日には旬の食材を使って料理を作り、それらを神様にお供えしその後一緒にいただくことで無病息災などを祈る日でもありました。

日本における現在の五節句

五節句は1・3・5・7・9の同じ奇数が重なる日を縁起のよい日とした季節の言葉でもともと官中行事から始まった

五節句は、古代中国から伝わった1・3・5・7・9の同じ奇数が重なる日を縁起のよい日と考えられた季節を意味する言葉です。

奈良時代に日本へと伝わり、平安時代になると宮中の行事として定着していきます。

中国から入ってきた文化ともともとあった日本在来の文化が合わさって、少しずつ変化していったわけです。

江戸時代になると五節句を式日(祝祭日)として定められ、同時に一般庶民にも広まっていきました。

旧暦から新暦に変わった明治時代には五節句そのものは廃止されましたが、現在でも日本の四季を彩る伝統行事として私たちの生活に浸透しています。

現在の日本に残っている節句は5つで、具体的に1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕、9月9日の重陽です。

なお人日が1月1日ではなく1月7日に取り入れられたのには理由があり、詳しくは後述します。

五節句の行事食について

五節句には季節の節目をお祝いしたり無病息災を願ったりするための行事食がある

前述の通り中国での節句は「節供」とも表し、季節のご馳走を意味しています。

縁起のよい日には旬の食材で作った料理を神様にお供えし、その後一緒にいただくことで無病息災などを祈っていました。

日本でも五節句や国民の祝日など季節の節目やお祝いの日に食べる特別の料理があり、それを「行事食」といいます。

行事食は、普段の食事とは違う季節のご馳走でそれぞれの食材にも意味があり、農作物の豊作を願ったり収穫を祝ったりするほか、家族の健康や幸福への願いが込められているのです。

五節句の種類と意味

五節句は、1・3・5・7・9の奇数月という季節の変わり目に行われる伝統行事です。

この中でよく知られているのが3月3日のひな祭りと7月7日の七夕ですが、以下の通り5つの節句に分けられます。

日付節句の名称(別名)
1月7日人日の節句(七草の節句)
3月3日上巳の節句(桃の節句)
5月5日端午の節句(菖蒲の節句)
7月7日七夕の節句(笹竹の節句、星祭り)
9月9日重陽の節句(菊の節句)

次項からは、5つあるそれぞれの節句にはどんな意味があり、どんな習わしが行われてきたのか説明していきます。

人日の節句(七草の節句):1月7日

人日の節句に食べる行事食は七草粥

人日(じんじつ)の節句は、年が明けてから初めて訪れる五節句で毎年1月7日です。

古代中国では1月7日を人間を占う日とし、この日は人を殺さない(処刑を行わない)日とされていたため「人日」と呼ばれています。

またこの日は1年の無病息災を願う日として、7種類の野菜を入れた汁物を食べていました。

これが現代の日本でも習わしとなっている七草粥の原型で、「七草の節句」という別名をもっています。

七草粥は、7種類ある春の七草を混ぜたお粥で無病息災を願う

行事食である七草粥は、春の七草であるセリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロを入れたお粥のことです。

人日の節句(七草の節句)については、下記記事をご参考ください。

上巳の節句(桃の節句):3月3日

上巳の節句は女の子の成長をお祝いし雛飾りをする風習

上巳(じょうし)の節句は、毎年3月3日に女の子の健やかな成長を祈るひな祭りのことです。

雛人形を飾ることが一般的で、桃の花や菱餅を飾ったり縁起のよい食材を使った料理を食べたりする慣習があります。

また旧暦の3月3日は桃の花が咲く時期と重なることから、別名として「桃の節句」とも呼ばれています。

上巳の節句に食べる行事食は雛あられや菱餅など

上巳の節句に食べる行事食には雛あられや菱餅などがあり、双方に用いられている色にも実は意味があるのです。

上巳の節句(桃の節句)については、下記記事をご参考ください。

端午の節句(菖蒲の節句):5月5日

端午の節句は子どもの成長を願い鯉のぼりを掲げる風習

端午(たんご)の節句は、毎年5月5日に男の子の成長をお祈りする行事です。

この日は「こどもの日」という国民の祝日と重なり、男女関係なく子どもの成長を祝う日とされています。

病気や災いを避けるための行事に菖蒲を使うことから、別名で「菖蒲の節句」とも呼ばれます。

端午の節句に食べる行事食は柏餅やちまき

行事食は柏餅やちまきなどで、柏餅に使われる柏の葉は家系が絶えない縁起のよい食材として使われています。

端午の節句(菖蒲の節句)については、下記記事をご参考ください。

七夕の節句(笹竹の節句、星祭り):7月7日

七夕の節句は織姫と彦星が1年に1度だけ会える日で短冊に願いごとを書いて笹の葉に飾る風習

七夕(しちせき)の節句は、毎年7月7日の夜に行われる「星祭り」とも呼ばれる行事です。

天の川を挟んで織姫と彦星が1年に1度だけ唯一会える日で、日本では短冊に願いごとを書いて笹の葉に飾る風習があることから「笹竹の節句」とも表すことがあります。

七夕飾りに用いられる7つの飾りには、それぞれの特徴や願いがあり、短冊の色にも意味があります。

七夕の節句に食べる行事食は素麺(そうめん)

七夕の節句に食べる行事食は、意外にもそうめん(素麺)で、平安時代にお供えしていた索餅(さくべい)がそうめんの原型とされているためです。

七夕の節句(星祭り)については、下記記事をご参考ください。

重陽の節句(菊の節句):9月9日

重陽の節句は奇数)の中で最も大きい数字の9が重なることから由来

重陽(ちょうよう)の節句は、毎年9月9日で縁起のよい奇数(陽の数)の中で最も大きい数字の「9」が重なることから由来しています。

また旧暦の9月9日は菊が美しく咲く時期でもあり、邪気を払う力や長寿の効能があると考えられていたことから別名で「菊の節句」とも呼ばれています。

近年では影が薄くなっている節句ですが、旧暦を用いていた明治時代までは五節句を締めくくる最後の行事として盛大に行われていました。

重陽の節句に食べる行事食は菊酒や栗ご飯など

重陽の節句に食べる行事食は、食用菊の花びらを冷酒に浮かべた菊酒のほか栗ご飯や秋なす料理といった秋の味覚です。

重陽の節句(菊の節句)については、下記記事をご参考ください。

五節句に用いられる色の秘密

五節句は5つある節句というだけでなく縁起のよい色として五色が用いられる

五節句は、古代中国の複数ある陰陽五行説の節句から江戸幕府が公的な式日として制定した5つの節句です。

この五節句に深く関係する「五色」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

五色とは

五色(ごしき)というのは、青・赤・黄・白・黒の5つある色のことです。

染料や色彩認識の関係で現在でも青は緑、黒は紫で表されることが多いため、実際には青(緑)・赤・黄・白・黒(紫)と表していることもあります。

五色と陰陽五行説との関係

陰陽五行説は木は燃えて火を生み、燃えた後には灰が残り、灰は土に還り、土を掘ることで金属が得られ、金属の表面には蒸気の一部が凝縮し水が生じるという流れで、その水がまた木に返って次々と生み出してより良い循環になるという思想

五色は古代中国の陰陽五行説が由来で、自然界のすべてのものを木・火・土・金・水の5つにあてはめた考え方がありました。

万物は「陰・陽」の二気、「木・火・土・金・水」の五行で成り立ち、これらは陰陽五行の要素で世の中は回っているという考え方で日本の文化に深く関わっています。

この五行を色で表したものが五色で、青(緑)は木、赤は火、黄は土、白は金、黒(紫)は水です。

  • 木=青色(緑色)
  • 火=赤色
  • 土=黄色
  • 金=白色
  • 水=黒色(紫色)

木は燃えて火を生み、燃えた後には灰が残り、灰は土に還り、土を掘ることで金属が得られ、金属の表面には蒸気の一部が凝縮し水が生じるという流れで、その水がまた木に返って次々と生み出してより良い循環になるという思想です。

節句行事に用いられる色の意味

五色の意味を知ると、五節句のうち5色で構成されているアイテムがあることをご存知でしょうか。

桃の節句に食べる雛あられは黒を除いた4色で、菱餅は3色ですが、端午の節句で飾る鯉のぼりの吹き出しや七夕の節句で笹の葉に飾る短冊は5色揃っています。

全5色が揃うことで魔除けや厄除けの意味をもち、それぞれの色にも実は意味があるのです。

ひな祭りの雛あられ・菱餅

桃の節句に使われる菱餅の色には風景の意味がある

雛あられの桃・緑・黄・白は、順に春夏秋冬の四季を表す4色で、1年を通して子どもたちの健やかな成長を祈るという意味があります。

菱餅は緑・白・赤(桃)の3色餅を菱形に切って重ねたもので、緑は「草」、白は「雪」、桃は「桃の花」という風景を表しているとされていますが、他にも緑は「健康・長寿」、白は「清浄」、赤は「魔除け」という説もあります。

桃の節句(ひな祭り)については、下記記事も併せてお読みください。

鯉のぼりの吹き流し

端午の節句に飾られる鯉のぼりの吹き流しも5色でそれぞれに意味がある

鯉のぼりの一番上に飾られている吹き流しの5色は、季節を表しており、青は「春」、夏は「赤」、白は「秋」、黒は「冬」、黄は「土用」です。

端午の節句(こどもの日)については、下記記事も併せてお読みください。

七夕飾りの短冊

七夕飾りに使う短冊の色にも意味がある

七夕飾りで使う短冊も5色あり、それぞれに意味があります。

青には「仁」、赤には「礼」、黄には「信」、白には「義」、黒または紫には「智」の意味があるとされ、その色の趣旨に合わせて願いごとを書くといいといわれています。

七夕の節句については、下記記事も併せてお読みください。

奇数の日が重なる五節句まとめ

五節句は奇数の重なる日を縁起のよい日として季節の変わり目に伝統行事がある

古代中国から同じ奇数が重なる日を縁起のよい日として受け継がれてきた、季節の変わり目を彩る五節句。

日本では稲作を中心とした生活リズムに合わせて、現在に至るまでこの伝統行事を適応させてきました。

昔は他にもたくさんの節句があったとされていますが、江戸幕府が公式な式日とした5つの節句が現代まで残っているのです。

季節の移ろいとともにそれぞれに意味が込められている旬の食材や植物を手に、昔ながらの習慣を取り入れて過ごしてみるのもいかがでしょうか。

以下の記事では、年中行事と国民の祝日をカレンダー形式に一覧紹介しています。

時期や季節に応じて、古くから風習として引き継がれてきた伝統文化を解説していますのでご参考ください。

  • ブログランキング・にほんブログ村へ
  • 人気ブログランキングでフォロー

-知る, 歳時記・暦
-,