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五節句の1つ、重陽の節句とは?菊の節句とも呼ばれる理由や日本での風習・行事食

2023年12月13日

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重陽の節句、菊の節句の起源や意味、日本における風習や料理とは?

9月といえば、猛暑も過ぎ去り収穫期を迎える実りの秋。

そんな過ごしやすい時期に桃の節句や端午の節句と同じように、重陽の節句と呼ばれる季節が日本にあるのをご存知でしょうか。

あまり聞き慣れない五節句の1つですが、重陽の節句は何がきっかけで始まりどんな目的で行われる風習なのでしょうか。

古くから3月3日は桃の節句、5月5日は端午の節句であるように奇数の重なる日をお祝いの日とし、数字の中で最も大きい9が重なることから9月9日が重陽の節句となっています。

当日は、菊を眺める宴や菊を用いた厄払いなどが行われたりします。

今回は、季節を表す五節句の1つである重陽の節句ができた起源や意味、菊の節句とも呼ばれる理由を紹介します。

また、日本における現在の風習や過ごし方・行事食についても解説していますので、季節を感じるための習慣としてご参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

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他の年中行事・イベントについては、下記記事でまとめていますので併せてご参考ください。

重陽の節句とは

重陽の節句(ちょうようのせっく)は、桃の節句や端午の節句などと同じく五節句の1つです。

平安時代に中国から伝わったとされ、無病息災や子孫繁栄を願いお祝いをしていたことが始まりです。

重陽の節句ができた起源

9月のカレンダー(重陽の節句)

古代中国の陰陽道では、奇数を縁起のよい「陽」の数字とされ、奇数の重なる日をお祝いの日と考えられていました。

その数字の中で最も大きい数である「9」が重なることから、9月9日が重陽の節句となり、その日は家族の無病息災や子孫繁栄、不老長寿を願い、祝いの宴を開いていたのが起源です。

その一方で、陽の数字が重なると災いが起こりやすく不吉だとも考えられており、よくないことが起きないよう邪気を払う風習も定着しています。

日本における現在の形

観菊の宴(イメージ)

日本における重陽の節句は、平安時代の初めに中国から伝わったとされています。

宮中行事の1つで、菊を眺める宴「観菊の宴」が開催されたり菊を用いた厄払いなどが行われたりしていました。

菊の風習はその後、時代とともに一般庶民の間でも広がり、江戸時代には五節句の1つとして親しまれる行事になっていきます。

別記事で解説しますが、五節句とは中国の唐時代に定められた暦の1つです。

節という言葉は季節の節目を意味し、中国では奇数の重なる日に魔除けや邪気を払う習わしがありました。

五節句については、下記記事で解説していますのでご参考ください。

別名:菊の節句

菊酒

旧暦の9月9日は、現在の暦で10月中旬ごろです。

この頃は菊が美しく咲く時期であることから、仙境に咲く霊薬として邪気を払う力や長寿の効能があると考えられていました。

菊の花を飾ったり、菊の香りを移した菊酒を飲んだりするなど菊を用いた行事で邪気を払い、無病息災や不老長寿を願っていたため、重陽の節句は別名で「菊の節句」とも呼ばれています。

菊について

重陽の節句が菊の節句とも呼ばれていることから、菊について少し紹介します。

菊は日本の国花

菊は皇室の御紋章でもあり国花

日本のパスポートが桜ではなく、菊であることに気づいている方もいるでしょう。

菊は桜と並んで日本の国花とされており、奈良時代に中国から日本へ伝わったとされています。

そして鎌倉時代には後鳥羽上皇が菊を好まれ、刀剣などに菊の御紋をつけるようになりました。

それが代々天皇家に受け継がれていったことから、いつしか菊が皇室の御紋章になったといわれています。

菊の花言葉

菊全体の花言葉は、「高貴」「高潔」「高尚」です。

皇室の家紋や宮家の紋章であり、気品ある花言葉となっています。

また品格を重んじる日本人を表しているため、日本の国花でもある菊にぴったりといえるでしょう。

菊は鑑賞用だけでなく薬用にも

菊は観るだけでなく漢方にも使われる

中国から日本へ伝えられた菊は、薬効成分があることから見て楽しむ観賞用としてだけでなく薬用としても使用されます。

中国では生薬として2000年以上も前からすでに薬用として栽培されていたという記録があるそうです。

日本では漢方として使われており、解毒の効能がある疏風清熱(そふうせいねつ)、慢性的な頭痛や頭重感に適応する釣藤散 (ちょうとうさん) があります。

菊花は食用の菊の花を乾燥させたもので、解毒や消炎、鎮静作用、高血圧などといった症状に加えて、めまいや眼精疲労などの眼性疾患に効果的です。

重陽の節句に関わる行事・過ごし方

重陽の節句は、もともと中国古来の習わしが始まりで、平安時代に日本へと伝わったものです。

現在の日本における重陽の節句では、何が行われるのかどんなことをするのか、当日の関連行事や過ごし方を紹介します。

菊の着せ綿

菊の香りに包まれた部屋

日本では着せ綿という宮中の風習があり、特に観菊の宴があるところでは行っていました。

まず前日である9月8日の夜、菊の花に綿を被せます。

当日の9月9日朝、菊の香りと朝露を含んだ綿で顔や身体を拭いて清め、邪気払いや無病息災を願っていました。

菊合わせ

菊花展・菊の品評会

菊合わせは、大切に育てた菊を持ち寄って美しさを競う行事で、左右に分かれて互いに菊花を出し花輪の美や作柄などの優劣を争う遊戯です。

古くからあるこの伝統を受け継いで、現在も全国各地の神社や植物園などで菊の品評会や菊花展が行われています。

菊湯・菊枕

菊湯

他にも菊を用いた習慣があり、湯船に菊の花を浮かべた菊湯に浸かったり、乾燥させた菊の花びらを枕に詰めた菊枕で眠ったりします。

菊枕で寝ると好きな人の夢を見ることができるという言い伝えがあり、女性から男性に贈る菊枕には特別な意味もあったそうです。

菊は古くから邪気を払う力があると信じられており、菊の香りにはリラックス効果が期待できるため試してみてはいかがでしょうか。

重陽の節句に食べる行動食

重陽の節句は、桃の節句や端午の節句と同じ五節句の1つです。

五節句にはそれぞれ行事食というものがあり、桃の節句(ひな祭り)には雛あられ、端午の節句(こどもの日)には柏餅などを食べます。

では重陽の節句には何を食べるのかというと、主に栗ご飯・秋なす・菊酒です。

栗ご飯

栗ご飯(栗の節句)

重陽の節句は、栗の収穫時期と重なるため江戸時代には当日に栗ごはんを食べてお祝いをしていました。

そのことから別名として「栗の節句」とも呼ばれ、現在でも栗ごはんを食べる習慣が残っています。

秋なす

秋ナス料理

重陽の節句に秋なすを食べると、発熱や悪寒・頭痛にならないという言い伝えがあったことから、焼き茄子や茄子の煮びたしなど秋なすを使った料理を食べて無病息災を祈っていました。

菊酒

菊酒

菊の節句とも呼ばれているように、重陽の節句には菊の花びらを浮かべた菊酒を飲んで不老長寿を願います。

その他

他にも菊にまつわる食べ物として、菊をモチーフにした和菓子も注目です。

普段の生活ではあまり和菓子を食べないという方も、菊の形に作られた華やかな和菓子を召し上がってみてはいかがでしょうか。

重陽の節句は菊で無病息災を

重陽の節句は五節句の1つであり菊の節句とも呼ばれる

桃の節句や端午の節句と同じ五節句の1つである重陽の節句は、菊酒を飲んだり栗ご飯を食べたりして無病息災や長寿を願います。

近年ではあまり馴染みがなく影が薄くなっている節句ですが、旧暦を用いていた頃までは五節句を締めくくる最後の行事として盛大に行われていました。

しかし新暦の9月9日では、まだ菊は咲いていなく栗や秋なすも旬ではないため、季節感が合わなくなってしまったことが原因だといわれています。

考えてみると五節句として挙げられる桃の節句はひな祭り、端午の節句はこどもの日、七夕の節句も人日の節句(七草粥)もカレンダーの行事として記載されているのに、重陽の節句は載っていないところを見るとなんとなく違和感があり残念な気持ちにもなってきませんか。

本来であれば、菊のもつ力やパワーにあやかることのできる重陽の節句。

この日には菊酒を飲んだり菊湯に浸かったりして、風流な気分を味わってみてはいかがでしょうか。

以下の記事では、年が明けて最初にやってくる五節句の1つである人日の節句について解説しています。

人日という意味や七草粥を食べる習慣が広まった経緯、7種類の春草それぞれの効能を紹介していますのでご参考ください。

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