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七夕伝説とは?天の川と星座の関係、7つの飾りと短冊の色に込められた意味

2023年12月11日

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七夕飾り

七夕に伝わる伝説といえば、織姫と彦星。

天の川を挟んで遠くに住む織姫と彦星の2人が、年に1度会える日とされていることをご存知の方も多いでしょう。

ではなぜ、織姫と彦星は離れて住んでいるのでしょうか。

そもそも七夕は何がきっかけで始まり、現在の形になったのでしょうか。

今回は、七夕ができた起源や現在の形になるまでの経緯を紹介します。

また、天の川や星座との関係、7つの七夕飾りや短冊の色にまつわる意味も解説しますので、七夕祭りを楽しむためのご参考になれば幸いです。

他の年中行事・イベントについては、下記記事でまとめていますので併せてご参考ください。

七夕とは

七夕は、天の川を挟んで織姫(おりひめ)と彦星(ひこぼし)が、1年に1度だけ唯一会える日という伝説があり、日本では短冊に願いごとを書いて笹に掲げるという伝統行事があります。

また、桃の節句や端午の節句と同じように、「七夕の節句」と呼ばれる五節句の1つです。

七夕の起源

織姫と彦星(七夕伝説)

七夕は諸説ありますが、すでに紀元前600年ごろの中国で最古とされる詩集「詩経」で、「牛郎織女(ぎゅうろうしゅくじょ)」という物語が語り継がれてきたのが起源とされています。

天から万物を支配する神とされる天帝は、娘で機織りの名手でもある織女(しょくじょ)のために、働き者で牛飼いの牽牛(けんぎゅう)を婿として迎え入れました。

しかし夫婦として結ばれてから2人は遊んで暮らすようになり、機織りに精を出さなくなった織女と牛の世話を怠ってしまった牽牛に天帝は激怒し、2人を天の川を隔てて引き離したのです。

あまりにも悲しむ娘の姿に天帝は、天の川の両岸に離された2人に仕事を一生懸命に頑張れば、1年に1度だけ会うことを許します。

それが7月7日で、当日夜になると天の川に橋をかけられ再会できるようになったという言い伝えです。

なお、当日に雨が降ると天の川の水かさが増し、川を渡ることができないとされています。

日本へ伝わった七夕の形

七夕にまつわる星座

七夕は前述通り、織女(織姫)と牽牛(彦星)という2つの星が、天の川を渡って1年に1度の逢瀬を楽しむという中国の織姫・彦星伝説(七夕伝説)が起源です。

そこへ、古代中国の宮廷行事で7月7日の夜に、織女星(ベガ)を眺めながら祭壇に針などを供えて技芸の上達を願う「乞巧奠(きっこうでん)」という行事が混ざり合って始まったといわれています。

そして七夕は奈良時代に、中国から五節句の1つとして日本へ伝わりました。

当時は、皇族の宮中行事として書の良し悪しを競って行われていたという一面もあり、七夕飾りは笹竹に5色の糸を垂らすだけで、軒下に飾るのではなく屋上に竹を立てていたとされています。

寺子屋教育の影響で、女の子は手芸、男の子は手習いの上達を願い、七夕の行事はさまざまな文化とともに現在に伝わり続けています。

七夕という言葉の意味

機織り機

なぜ、「七夕」と書いて「たなばた」と読むのかという疑問を抱く方もいるでしょう。

織姫が上手な機織り(はたおり)というのは、糸を組み合わせて布を作る作業のことで、その仕事をする女性は、棚機つ女(たなばたつめ)と呼ばれていました。

つまり、七夕という読み方は、織姫の仕事に由来しているのです。

七夕の節句について

笹と短冊(七夕飾り)

七夕は、桃の節句や端午の節句と同じく「七夕の節句」という五節句の1つです。

七夕の節句(しちせきのせっく)は、7月7日の夜に行われる星祭りとも呼ばれる行事で、短冊に願いごとを書いて竹や笹の葉に結びつける風習があります。

もともと日本にある棚機(たなばた)と、中国から伝わった乞巧奠(きこうでん)が一緒に合わさったものといわれています。

棚機というのは、少女が着物を織って神棚に供えたり、神様を迎えて秋の収穫を願ったり、人々のけがれを祓ったりする行事のことです。

乞巧奠は中国の行事で、7月7日に織姫星にあやかって機織りや裁縫が上達するようにとお祈りをします。

五節句については、下記記事で解説していますのでご参考ください。

七夕と天の川、星座

天の川(七夕)

七夕は、年に1度の7月7日に、織姫と彦星が天の川を渡って出会える特別な夜のことです。

ちなみに、かつての7月7日は旧暦であるため、現在の暦では8月中旬から下旬にかけて天の川が見やすいとされています。

天の川は、夏の大三角形である、こと座のベガ(織姫)とわし座のアルタイル(彦星)、はくちょう座のデネブを覆うように流れているのが特徴です。

当日は笹に華やかな飾り付けをしたり、短冊に願いごとを書いて飾ったりして、織姫と彦星が再会する星空に思いを馳せることが日本の伝統的な行事として親しまれています。

夏の大三角とは

七夕にまつわる星座・夏の大三角

東の空で、帯状に星が集まっている天の川でひときわ明るく光る星が、はくちょう座のデネブといい、十字形をしています。

そこに天の川を挟むようにして、こと座のベガ、わし座のアルタイルがあります。

この3つの星を結んでできるのが、夏の大三角です。

夏の大三角を作る、こと座のベガは織姫、わし座のアルタイルは彦星を指します。

ベガ・アルタイル・デネブは、幾多の星の中でもひときわ輝く一等星という種類で、広い夜空でも比較的探しやすいとされています。

七夕飾りについて

七夕飾りに使う笹の葉や飾りには、実は意味があるのをご存知でしょうか。

笹に飾るのは、願いごとを書く短冊の他に代表的なもので6つの種類があり、七つ飾りと呼ばれています。

笹の意味や由来

笹の葉と短冊、折り鶴(七夕)

昔から、笹には神様が宿ると考えられており、天から神様が降りてくる際に目印となるよう笹を立てていたといわれています。

かぐや姫の物語でも笹竹が登場してきますね。

また、成長の早い竹は生命力の象徴でもあり、尖った笹は邪気を払うとされていたことから魔除けとして使われ、病気やケガを避けながら成長してほしいという親の思いも込められています。

七つ飾り(1)短冊

短冊は、貴族が書の技の上達を願って、自身が努力することを神様に伝えるために始めたことに由来するといわれています。

当時は短冊ではなく梶の葉に書き、神が宿るとされる笹に吊るしていました。

江戸時代に入ると、一般国民にも文字を書ける人が増え、字の上達など願い事を短冊に書き、笹飾りとして吊るす風習になっていったそうです。

短冊の色にも意味があり、詳しくは後述します。

七つ飾り(2)吹き流し

吹き流しは、細く切り込みを入れて筒状にしたものです。

織姫が織る糸を表しており、織姫のように機織りや裁縫が上達するようにという願いが込められています。

七つ飾り(3)折り鶴

折り鶴は、健康や長寿、家内安全を祈願する意味があります。

七つ飾り(4)網

網(投網)は、交互に切り込みを入れて引き延ばしたものです。

魚を捕る網を表し、豊作や大漁を祈り、食べ物に困らないことを願います。

七つ飾り(5)巾着

巾着は名前の通り、巾着の形を作ったものです。

財布を意味し、金運上昇や貯蓄、無駄遣いの防止を祈ります。

七つ飾り(6)紙衣

紙衣(かみこ)は、着物の形を模したものです。

吹き流しと同じく裁縫の上達を願い、病気や災いの身代わりになってもらう意味があります。

七つ飾り(7)くずかご

網と同じように切り込みを入れて作るかごです。

七夕飾りで出た紙くずを入れることで清潔・倹約を願い、物を大切にする心を育てる意味があります。

七つ飾り(七夕飾り)

七夕飾りの短冊が5色ある理由

七夕の童謡に「五色(ごしき)の短冊」という歌詞が出てくるように、青・赤・黄・白・黒(紫)の5色ある短冊に願いごとを書くと叶うとされています。

この5色というのは、陰陽五行説に基づいたもので、全5色が揃うことで魔除けの意味があります。

それぞれの色にも意味があるため、以下を参考にしてその色に合わせた内容にするのもおすすめです。

青の短冊

青色には「仁」という意味があり、身長が高くなりたい、歌が上手になりたいなど、成長に関する願いごとがおすすめです。

赤の短冊

赤色には「礼」という意味があり、ご先祖様や祖父母、親への感謝の気持ちを書き連ねることが一般的です。

黄の短冊

黄色には「信」という意味があり、友達のことや、今後の出会いなど、人間関係の願いごとを書きます。

白の短冊

白色には「義」という意味があり、毎日運動する、といったルールや秩序など達成したい目標を書きます。

黒(紫)の短冊

黒色または紫色には「智」の意味があり、学業や就業の成績はじめ、習い事の上達や試験の合格など学業に関する願いごとがおすすめです。

陰陽五行説については、下記記事で解説していますのでご参考ください。

七夕の行事・過ごし方

七夕は、もともと中国の伝説が起源で、奈良時代に日本へと伝わったものです。

現在の日本における七夕では、何が行われるのか、どんなことをするのか、当日の行事や過ごし方を紹介します。

夏の風物詩、七夕祭り

七夕は、江戸時代に季節の節目を意味する五節句の1つに定められ、古くから伝わる日本の夏の風物詩です。

全国各地では盛大な七夕祭りが行われ、大通りや商店街を中心に色とりどりの和紙を使った吹き流しやくす玉などが飾られます。

前夜には花火が打ち上げられたり、七夕飾りの手作り体験が催されたりするなどさまざまなイベントがあります。

多数ある七夕祭りの中でも、宮城県の「仙台七夕まつり」、神奈川県の「湘南ひらつか七夕まつり」、愛知県の「一宮七夕まつり」が、日本三大七夕祭りとして有名です。

七夕祭り

七夕飾りをする

各家庭や地域により異なりますが、7月7日当日は短冊に願いごとを書いたり、折り紙で七夕飾り(七つ飾り)を作ったり、笹の葉に飾ったりして、星にお祈りをする習慣があります。

七夕の短冊を飾る女性

七夕行事が終わった後、昔はその七夕飾りを川に流す七夕送りに持っていくか、神事に使用した縁起物をまとめて燃やす儀式がありました。

現在でも、一部の地域にある神社やお寺でお焚き上げを行っています。

お焚き上げというのは、魂が宿ると考えられる物を炎で浄化して供養し、天に返すための行事です。

筆者の地元では海近くに住んでいたため、七夕飾りを海の決まった場所へ持っていき、海岸でお焚き上げが行われていました。

地域によって処分の仕方はさまざまなため、あなたが住む自治体や近くの神社・寺で七夕飾りのお焚き上げなどを行っているか確認しましょう。

七夕の節句に食べるもの

七夕は、桃の節句や端午の節句と同じ五節句の1つです。

五節句にはそれぞれ行事食というものがあり、桃の節句(ひな祭り)にはちらし寿司や菱餅、端午の節句(こどもの日)には柏餅やちまきなどを食べます。

では、七夕の節句には何を食べるのかというと、実は「そうめん(素麺)」です。

そうめん(七夕の節句)

そうめんには、健康に過ごせるという意味が込められており、中国の伝統的な小麦粉の菓子「索餅(さくべい)」が由来とされています。

江戸時代までは七夕の日に、素麺の原型とされる索餅を食べており、日本における麺食の始まりはうどんでもそばでもなく、そうめんです。

七夕伝説の織女星は、養蚕や裁縫を司る星であるため、裁縫が上達する願いを糸に見立てたそうめんに託したとされています。

日本以外の七夕行事

七夕は、もともと中国で行われていた行事が日本へと伝わったものですが、起源となっている中国ではどんな行事が行われるのか、またその他の国に七夕の行事はあるのか、紹介します。

中国における七夕行事

七夕の起源となった中国では、日本とは違い短冊に願いを込めることはしません。

中国にとっての七夕は、バレンタインデーに近い行事で、男性が女性に花束を贈ることが多いそうです。

中国から伝わってきた行事なのに、現代での過ごし方がこんなに違うとは意外な発見ですね。

バレンタインデーについては、下記記事で紹介していますのでご参考ください。

世界における七夕行事

七夕の伝説は、実は日本だけで語られているものではありません。

中国以外に台湾、韓国でもお祝いされており、アジアだけでなく米国やヨーロッパなど世界各地で七夕の行事があり、天の川にまつわる話が多く存在しています。

日本にも数多くの説があるように、1つの国の中でもその地域によっていくつもの七夕伝説が語り継がれています。

アメリカヤブラジルでも七夕祭りが開催され、北欧フィンランドでも星のお祭りという捉え方から似たストーリーが存在します。

七夕に関するQ&A

七夕に関する疑問や不思議を、これまでの解説に補足する形でQ&A形式にまとめてみました。

七夕はなぜ7月7日なのか?

こと(琴)座のベガと呼ばれる織女星は裁縫の仕事、わし(鷲)座のアルタイルと呼ばれる牽牛星は農業の仕事を司る星とされていました。

この2つの星は、旧暦7月7日に天の川を挟んで最も光り輝いているように見えることから、中国ではこの日を1年に1度の巡り会いの日と考え、七夕伝説が生まれました。

七夕は、中国語で乞巧節とも呼ばれ、中国神話に登場する織女と牽牛の逢瀬を祝う中国の祭りです。

中国の旧暦7月7日に行われるロマンチックなこの祭りは、中国の伝統的なバレンタインデーに相当するといわれています。

七夕に食べる物は?

七夕は「七夕の節句」といって、桃の節句や端午の節句と同じ五節句の1つで、それぞれ行事食というものがあります。

ひな祭りには雛あられ、こどもの日には柏餅などが食べられていますが、七夕の節句にはそうめんを食べます。

七夕伝説の織女星は機織りを司る星とされ、裁縫が上達する願いを糸に見立てたそうめんに託したとされています。

七夕が8月に行われているのはなぜ?

七夕は、一般的に7月7日ですが、8月に七夕祭りを行う地域があるのを見たことがある方も多いでしょう。

7月7日という日付に間違いはありませんが、当時の暦はいわゆる旧暦(太陰太陽暦)でした。

これは、月の満ち欠けで暦を策定したもので、1年が約354日となり閏月で調整を行っていたために、現在の新暦7月7日と当時の旧暦7月7日でずれがあり、8月20日ごろは旧暦で七夕(7月7日)にあたります。

つまり、8月の七夕行事は、旧暦をもとに七夕を祝っているわけです。

もう1つ理由があり、七夕は夏の大三角形のベガとアルタイルをそれぞれ織姫・彦星として星に願いごとをしますが、現在の暦で7月7日は梅雨の時期です。

梅雨といえば雨に見舞われ、星が見えない可能性が高い時期でもあります。

また、現在の7月7日付近では夜中でもアルタイル(彦星)が空高く昇っていなく、東の地平線沿いに見える場合が多いです。

しかし8月であれば、梅雨も明けて真夏の時期となり、夏の大三角形がよく見えることから8月に七夕の行事を行う地域もあるとされています。

旧暦(太陰太陽暦)と新暦については、下記記事をご参考ください。

七夕に短冊を飾るのはなぜ?

七夕は、別名で「笹の節句」とも呼ばれ、願いを書いた短冊などを笹竹に飾る風習があります。

笹竹には天の神様が寄りつく、笹の葉は神様の拠り所と考えられていたため、神様に見えるように短冊や願いを込めた笹飾り(七夕飾り)を飾るようになったとされています。

なお、江戸時代までは、主に文芸の上達に関する願いごとが書かれました。

七夕飾りはどう処分したらいいのか?

昔は、その七夕飾りを川に流す七夕送りに持っていくか、神事に使用した縁起物をまとめて燃やす儀式がありました。

現在でも、神社やお寺でお焚き上げを行っている地域があります。

地域によって処分の仕方が異なるため、あなたが住む自治体や近くの神社・お寺で七夕飾りの預かりやお焚き上げなどを行っていないか確認しましょう。

個人で処分する場合は可燃ゴミになりますが、願い事が込められているもの、神事に関わるものを普通に捨てるには気が引けるという方もいると思います。

その場合は盛り塩というものがあるように、白にはお清めの意味があるため、白い紙に包んで処分するのがおすすめです。

短冊は毎年の願い事を記録できるため、特にお子さんが書いた短冊を処分せずに残しておくのもいいでしょう。

終わりに

七夕にはざまざまな起源や由来がある中でも、織姫や彦星の物語が定番ですが、天の川を隔てた理由など具体的なことまで知らなかった方も多いのではないでしょうか。

また、七夕の節句にはそうめんを食べるということ、七夕飾りには7つの意味があること、短冊の色に合わせて願い事をすることも新しい発見だったことでしょう。

七夕には、ざまざまな起源や由来がある中でも織姫や彦星の物語が定番ですが、天の川を隔てた理由など、具体的なことまで知らなかった方も多いのではないでしょうか。

織姫と彦星(七夕伝説)
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