春夏秋冬の四季だけではない、季節を表す二十四節気と七十二候。
二十四節気は、1年を24つの節気に分けた季節の移り変わりを季語のような言葉にしたものです。
七十二候は、二十四節気をさらに細分化し、1年を72つに分けて表現した言葉で、気象の変化や動植物の行動を表しています。
あなたは、この二十四節気と七十二候に用いられている暦の言葉をご存知でしょうか。
今回は、二十四節気や七十二候を表す言葉それぞれの意味や時期を、春夏秋冬の四季別に分けて紹介します。
この記事では、冬の季節に絞って掲載しますが、二十四節気と七十二候に定められた、96ものある暦の美しい言葉を知ることで、季節の移ろいに応じた暮らしの参考になれば幸いです。
以下の記事では、二十四節気と七十二候ができた由来や仕組み、特徴といった基本知識について解説していますので併せてお読みください。
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二十四節気・七十二候の起源や仕組みとは?季節や気候の変化を表す96の暦も紹介
2024/1/26
冬の季節における二十四節気と、七十二候の第五十五候から第七十二候までを紹介していきます。
立冬 ~冬になる時~
立冬(りっとう)は、暦の上では冬の始まりで北風が強く、冬の訪れを告げる木枯らし1号もこの頃に吹きます。
山茶始開
読み:山茶始開(つばきはじめてひらく)
区分:立冬・初候/第五十五候
時期:11月7日~11日ごろ
意味:サザンカの花が咲き始める
山茶花(サザンカ)が咲き始める頃のことです。
読みがつばきとなっていますが、山茶花はツバキ科であり、寒気にさらされると花びらが散っていきます。
地始凍
読み:地始凍(ちはじめてこおる)
区分:立冬・次候/第五十六候
時期:11月12日~16日ごろ
意味:大地が凍り始める
寒さが一層厳しくなり、地面も凍り始める頃のことです。
冬が本格化してくるこの時期には、3歳・5歳・7歳の子供の成長をお祝いする七五三があります。
七五三については、下記記事で解説していますのでご参考ください。
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七五三のお参りはいつまで?起源や儀式の意味や3歳・5歳・7歳の理由、過ごし方
2024/10/12
金盞香
読み:金盞香(きんせんかさく)
区分:立冬・末候/第五十七候
時期:11月17日~21日ごろ
意味:スイセンの花が咲き始める
白い花びらをした水仙(スイセン)の花が咲き、上品な香りが漂う頃のことです。
金盞は、キンセンカではなくスイセンのことで、黄色い副花冠をもつスイセンの別名という説もあります。
小雪 ~雪が降り出す~
小雪(しょうせつ)は、冷たい北風が木々の葉を落とし、全国的に寒さが厳しくなり、北国からの便りで雪が降り始めます。
虹蔵不見
読み:虹蔵不見(にじかくれてみえず)
区分:小雪・初候/第五十八候
時期:11月22日~26日ごろ
意味:虹が現れなくなる
陽射しが弱まり曇り空が多くなっていき、雨上がりに虹を見る機会が少なくなる頃のことです。
この時期にある11月23日は勤労感謝の日ですが、その由来となった新嘗祭が全国各地の神社で行われます。
勤労感謝の日(新嘗祭)については、下記記事で解説していますのでご参考ください。
朔風払葉
読み:朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)
区分:小雪・次候/第五十九候
時期:11月27日~12月1日ごろ
意味:北風が葉を払いのける
冷たい北風が勢いよく吹き、木の葉を散らす頃のことです。
朔風とは北風、木枯しのことを指し、北風に葉を飛ばされ裸になった木々は「冬木立(ふゆこだち)」といいます。
橘始黄
読み:橘始黄(たちばなはじめてきばむ)
区分:小雪・末候/第六十候
時期:12月2日~6日ごろ
意味:タチバナの実が黄色く色づき始める
古くから日本に野生する柑橘類の1つ、橘(タチバナ)の実が黄色に色づく頃のことです。
橘は酸味が強いため生食には向かないですが、永遠を表す縁起のよい常緑樹で家紋や勲章のデザインに用いられることがあります。
大雪 ~本格的に雪が降り出す~
大雪(たいせつ)は、山だけでなく街中にも雪が降り始め、本格的に冬が到来し、動物たちは冬ごもりの準備をします。
閉塞成冬
読み:閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)
区分:大雪・初候/第六十一候
時期:12月7日~11日ごろ
意味:天と地が寒がり真冬になる
重く垂れ込めた雲に天地の気が塞がれて、本格的な冬が訪れる頃のことです。
空に広がった灰色の雲が陽射しを閉ざし、今にも雪が降り出しそうな空模様を「雪曇り」といいます。
熊蟄穴
読み:熊蟄穴(くまあなにこもる)
区分:大雪・次候/第六十二候
時期:12月12日~16日ごろ
意味:クマが冬眠のために穴にこもる
熊(クマ)が、冬ごもりのために巣穴に入っていく頃のことです。
穴の中ではほとんど身動きしませんが、わずかな物音でも目を覚ますほど眠りは浅いといわれています。
厥魚群
読み:厥魚群(さけのうおむらがる)
区分:大雪・末候/第六十三候
時期:12月17日~21日ごろ
意味:鮭が群がり川を上る
川で生まれ海で育ったサケが、産卵のために海から生まれた川を上り戻ってくる頃のことです。
水の匂いを記憶しているために再び川に戻れるといわれており、サケが川を遡ることを「サケの遡上」といいます。
冬至 ~冬の中間点~
冬至(とうじ)は、1年で夜の時間が最も長く、昼が短く最もなる冬の入り口で、この時期には柚子湯に浸かる習慣があります。
乃東生
読み:乃東生(なつかれくさしょうず)
区分:冬至・初候/第六十四候
時期:12月22日~26日ごろ
意味:ウツボグサが芽を出す
夏至の頃に枯れた靫草(ウツボグサ)が芽が出し、花を咲かせる頃のことです。
乃東とは、漢方薬にも使われるウツボグサのことで、冬至の頃に芽が出て、夏至の頃には枯れてしまうため「夏枯草」とも呼ばれています。
麋角解
読み:麋角解(さわしかのつのおつる)
区分:冬至・次候/第六十五候
時期:12月27日~31日ごろ
意味:シカが角を落とし始める
鹿(シカ)の角が、根元から抜け落ちて生え変わる頃のことです。
麋とは大鹿の一種で、雄の枝分かれした大きく立派な角は、春に生え始め、冬のこの時期に根元から自然に落ちます。
雪下出麦
読み:雪下出麦(ゆきくだりてむぎのびる)
区分:冬至・末候/第六十六候
時期:1月1日~1月5日ごろ
意味:麦が雪の下で芽を出す
雪が降り積もる麦畑の下で、麦が芽を出す頃のことです。
麦は寒さにも強い越年草で、秋に種を蒔いた後、辺り一面が雪に覆われていてもひっそりと芽吹き、翌年の初夏に収穫します。
小寒 ~本格的に寒くなり出す~
小寒(しょうかん)は、寒の入りともいい、本格的に寒さが厳しく冬本番となっていき、小寒から節分までを寒の内と呼びます。
芹乃栄
読み:芹乃栄(せりすなわちさかう)
区分:小寒・初候/第六十七候
時期:1月6日~9日ごろ
意味:セリがよく育つ
春の七草として知られるセリが、競り合うようにすくすくと育ち始める頃のことです。
この時期にあたる1月7日は、人日の節句と呼ばれる五節句の1つで、この日の朝に春の七草が入った七草粥を食べる習慣があります。
人日の節句(七草粥)については、下記記事で解説していますのでご参考ください。
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人日の節句とは?七草粥の由来や食べる理由、春の七草それぞれの意味・効能
2024/10/23
水泉動
読み:水泉動(しみずあたたかをふくむ)
区分:小寒・次候/第六十八候
時期:1月10日~14日ごろ
意味:凍った泉が動き始める
地中で凍っていた泉の水が緩やかに解け、動き始める頃のことです。
水泉とは湧き出る泉のことで、まだまだ空気は冷たく寒さ厳しい時期であるものの、地中では春に向けて少しずつ動き出していきます。
雉始雊
読み:雉始雊(きじはじめてなく)
区分:小寒・末候/第六十九候
時期:1月15日~19日ごろ
意味:雄のキジが鳴き始める
雉(キジ)が鳴き始める頃のことです。
雄が鳴くのは雌への求愛行動で、鳴いた後は羽根を振るわせます。
大寒 ~寒さが最も厳しくなる~
大寒(だいかん)は、1年のうちで最低気温が記録され、氷点下に達する地域も多いほど寒さが最も厳しい一方で、鶏の産卵や山野草の開花など春の足音が聞こえ始めます。
款冬華
読み:款冬華(ふきのはなさく)
区分:大寒・初候/第七十候
時期:1月20日~24日ごろ
意味:フキノトウの蕾が出始める
黄色いフキの花が咲き始める頃のことです。
フキの茎の部分がフキノトウで、積もった雪の隙間から顔をのぞかせ、春の訪れを感じさせます。
水沢腹堅
読み:水沢腹堅(さわみずこおりつめる)
区分:大寒・次候/第七十一候
時期:1月25日~29日ごろ
意味:沢の氷が厚く張る
厳しい寒さが続き、沢を流れる水も凍りつき、厚く氷が張っている頃のことです。
1年のうちで最も気温が下がり、最低気温の記録が聞こえてくる時期でもあります。
鶏始乳
読み:鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)
区分:大寒・末候/第七十二候
時期:1月30日~2月3日ごろ
意味:ニワトリが卵を産み始める
冬の寒さが峠を越えて、鶏(ニワトリ)が卵を産むために小屋にこもる頃のことです。
乳は卵を産むという意味で、年中出回っている鶏卵ですが、鶏は本来この時期に卵を産みます。
終わりに
以上で、1年で最も気温が低い冬の二十四節気や七十二候を紹介しました。
季語のような美しい2字の二十四節気と、謎解きのように気象や動植物を表した七十二候の言葉を見ると、冬のさまざまな情景が脳内に浮かんできます。
季節を把握するための手段として、現在も生き続けるそんな季節・暦の意味を紐解くと、より深い季節感のある365日を感じながら過ごしたいものですね。