春夏秋冬の四季だけではない、季節を表す二十四節気と七十二候。
二十四節気は、1年を24つの節気に分けた季節の移り変わりを季語のような言葉にしたものです。
七十二候は、二十四節気をさらに細分化し、1年を72つに分けて表現した言葉で、気象の変化や動植物の行動を表しています。
あなたは、この二十四節気と七十二候に用いられている暦の言葉をご存知でしょうか。
今回は、二十四節気や七十二候を表す言葉それぞれの意味や時期を、春夏秋冬の四季別に分けて紹介します。
この記事では、夏の季節に絞って掲載しますが、二十四節気と七十二候に定められた、96ものある暦の美しい言葉を知ることで、季節の移ろいに応じた暮らしの参考になれば幸いです。
以下の記事では、二十四節気と七十二候ができた由来や仕組み、特徴といった基本知識について解説していますので併せてお読みください。
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二十四節気・七十二候の起源や仕組みとは?季節や気候の変化を表す96の暦も紹介
2024/1/26
夏の季節における二十四節気と、七十二候の第十九候から第三十六候までを紹介していきます。
立夏 ~夏になる時~
立夏(りっか)は、夏の始まりを意味し、五月晴れの日が続く絶好の行楽シーズンで、爽やかな風と陽光が心地よく過ごしやすいです。
蛙始鳴
読み:蛙始鳴(かわずはじめてなく)
区分:立夏・初候/第十九候
時期:5月5日~9日ごろ
意味:カエルが鳴き始める
土中より冬眠から目覚めたカエルが、田んぼや池で鳴き始める頃のことです。
池の脇や田んぼの畦道で小さなカエルが飛び跳ねる姿が見られ、水底には透明な卵がたくさん浮かんでいるのを見かける方も多いでしょう。
蚯蚓出
読み:蚯蚓出(みみずいずる)
区分:立夏・次候/第二十候
時期:5月10日~14日ごろ
意味:ミミズが地上に這い出る
土が温かくなり、冬を乗り越えたミミズが土中から活動し始める頃のことです。
害虫と思われがちなミミズですが、実は土中の有機物や微生物を食べ、排泄されるフンは豊かな腐植土の元になる良い面もあります。
竹笋生
読み:竹笋生(たけのこしょうず)
区分:立夏・末候/第二十一候
時期:5月15日~19日ごろ
意味:タケノコが土から顔を出す
土の中からタケノコが顔を出す頃のことです。
タケノコの旬はもう少し早めで、品種にも寄りますが、孟宗竹は3月から4月には出回ります。
小満 ~気温が高まり草木が茂る~
小満(しょうまん)は、万物が次第に天と地に満ちてくるという意味で、陽の光は明るく気温も上がり、生命が満ちて草木は緑を深める時期です。
蚕起食桑
読み:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)
区分:小満・初候/第二十二候
時期:5月20日~25日ごろ
意味:蚕が桑の葉を食べ始める
卵から孵化した蚕(カイコ)が、盛んに桑の葉を食べて成長していく頃のことです。
絹糸になる繭を出す蚕は、人々の暮らしを支える大切な生き物で、ミツバチと並んで家畜用として飼育されます。
紅花栄
読み:紅花栄(べにばなさかう)
区分:小満・次候/第二十三候
時期:5月26日~30日ごろ
意味:ベニバナが盛んに咲く
紅色の染料や食用油の原料となる、紅花(ベニバナ)が花を咲かせる頃のことです。
咲き始めはまだ黄色い花ですが、次第に鮮やかな朱色に変わっていきます。
麦秋至
読み:麦秋生(むぎのときいたる)
区分:小満・末候/第二十四候
時期:5月31日~6月4日ごろ
意味:麦が熟して畑は黄金色になる
麦が収穫期を迎えるほど実り、黄金色の豊かな穂をつける頃のことです。
時期が初夏なのに、穀物の収穫期や実りの季節を指す秋を用いていますが、麦にとっての秋を表しています。
芒種 ~麦を刈り稲を植える~
芒種(ぼうしゅ)は、雨の日が増えて梅雨も近いため、稲や麦など芒(のぎ)のある植物の種を蒔く頃を意味しています。
螳螂生
読み:蟷螂生(かまきりしょうず)
区分:芒種・初候/第二十五候
時期:6月5日~9日ごろ
意味:カマキリが生まれる
卵から孵化したカマキリが、一斉に姿を見せ始め、餌を求めて動き回る頃のことです。
獲物を待つ姿勢が、祈りを捧げているように見えることから「拝み虫」とも呼ばれています。
腐草為蛍
読み:腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)
区分:芒種・次候/第二十六候
時期:6月10日~15日ごろ
意味:腐った草からホタルが現れる
梅雨入りを前に湿気が多くなり、夜になると草の下から光を発しながら、螢(ホタル)が飛び交い始める頃のことです。
昔、腐りかけた草などが蒸れて、ホタルに生まれ変わると信じられていた名残からこの名がついたともいわれています。
梅子黄
読み:梅子黄(うめのみきばむ)
区分:芒種・末候/第二十七候
時期:6月16日~20日ごろ
意味:梅の実が黄色く熟す
梅雨が近くなると、青かったウメの実が黄色く色づき、熟してくる頃のことです。
まだ青いウメの実は梅酒に、熟した実は梅干しに、完熟した実はジャムにと、ウメを使った料理はたくさんあります。
夏至 ~夏の中間点~
夏至(げし)は、1年で昼の時間が最も長く夜が最も短い夏の入り口で、実際には梅雨シーズンですが、暦の上では夏真っ只中になります。
乃東枯
読み:乃東枯(なつかれくさかるる)
区分:夏至・初候/第二十八候
時期:6月21日~25日ごろ
意味:ウツボグサが枯れ出す
冬至の頃に芽を出した靫草(ウツボグサ)が、夏至を迎えて枯れていく頃のことです。
乃東は、「夏枯草」とも呼ばれるウツボグサの別名で、紫色の花を咲かせます。
菖蒲華
読み:菖蒲華(あやめはなさく)
区分:夏至・次候/第二十九候
時期:6月26日~30日ごろ
意味:アヤメが咲き始める
水辺にきれいな紫色をした、菖蒲(アヤメ)の花が咲く頃のことです。
菖蒲は「しょうぶ」とも読むものの別の花であり、アヤメは杜若(カキツバタ)と見分けがつきにくいほど似ています。
半夏生
読み:半夏生(はんげしょうず)
区分:夏至・末候/第三十候
時期:7月1日~6日ごろ
意味:カラスビシャクが生え始める
半夏という不思議な形をした草が生え始める頃のことです。
半夏とは、山道や畑などに生息している植物、カラスビシャクというサトイモ科の多年草で、夏至から数えて11日目にあたります。
農作業の節目として、田植えは半夏生までに終わらせるとされていました。
半夏生については、下記記事で解説していますのでご参考ください。
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日本で作られた季節を表す暦、9つある雑節それぞれの意味や時期は?
2024/1/23
小暑 ~本格的に暑くなり出す~
小暑(しょうしょ)は、梅雨が明けて暑さが本格的になり、梅雨空から快晴続きの夏へと移ります。
温風至
読み:温風至(あつかぜいたる)
区分:小暑・初候/第三十一候
時期:7月7日~11日ごろ
意味:温かい風が吹き始める
陽射しが強まり、熱気を帯びた夏の風が吹き、日ごとに気温が高まってくる頃のことです。
7月7日といえば七夕で、織姫の星と牽牛星(彦星)が、1年に1度だけ天の川を挟んで再会できる伝説があります。
七夕については、下記記事で解説していますのでご参考ください。
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2024/6/18
蓮始開
読み:蓮始開(はすはじめてひらく)
区分:小暑・次候/第三十二候
時期:7月12日~16日ごろ
意味:ハスの花が咲き始める
深夜から夜明けにかけて、蓮(ハス)の花が咲き始める頃のことです。
泥の中で育つことで美しく咲くハスは、「泥より出でて泥に染まらず」と例えられ、その清らかさは古くから愛されてきました。
ハスについては、下記記事で解説していますのでご参考ください。
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広大な池と泥水の上で蓮華咲く、京都と関東エリアの蓮スポット6選
2024/6/7
鷹乃学習
読み:鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)
区分:小暑・末候/第三十三候
時期:7月17日~22日ごろ
意味:鷹が巣立ちに向けて練習を始める
初夏に孵化した鷹(タカ)のヒナが、巣立ちに備えて飛び方や獲物の捕り方などを覚える頃のことです。
中でも大鷹(オオタカ)は、昔から日本人と関係が深い身近な鳥で、伝統猟法として知られる鷹狩りは日本書紀にも登場しています。
大暑 ~暑さの極み~
大暑(たいしょ)は、1年で最も暑さが厳しく、花火大会など夏のイベントが盛り沢山ですが、夕立を連れてくる入道雲も見られます。
桐始結花
読み:桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)
区分:大暑・初候/第三十四候
時期:7月23日~27日ごろ
意味:キリが花をつけ始める
桐(キリ)が花を咲かせる頃のことです。
立秋前の18日間で夏の土用入りとなり、夏の土用から最初の丑の日にあたる土用の丑にはウナギを食べる習慣があります。
土用の丑の日については、下記記事で解説していますのでご参考ください。
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2024/7/21
土潤溽暑
読み:土潤溽暑(つちうるおいてむしあつし)
区分:大暑・次候/第三十五候
時期:7月28日~8月1日ごろ
意味:土が湿り蒸し暑くなる
土が湿り気を帯びて、夏らしい蒸し暑さを感じる頃のことです。
この時期になると学校は夏休みに入り、子どもたちの夏が始まります。
大雨時行
読み:大雨時行(たいうときどきふる)
区分:大暑・末候/第三十六候
時期:8月2日~7日ごろ
意味:大雨が時に降る
天高く立ち上る入道雲が夕立を連れてきたり、台風が近づいたりして夏の大雨が降る頃のことです。
小暑から大暑までの1年で最も暑い時期には、相手の健康を気遣って暑中見舞いを送ります。
暑中見舞いについては、下記記事で解説していますのでご参考ください。
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暑中見舞いの起源や送る時期はいつ?挨拶状の書き方・文例解説
2024/6/26
終わりに
以上で、1年で最も気温の高い夏の二十四節気や七十二候を紹介しました。
季語のような美しい2字の二十四節気と、謎解きのように気象や動植物を表した七十二候の言葉を見ると、夏のさまざまな情景が脳内に浮かんできます。
季節を把握するための手段として、現在も生き続けるそんな季節・暦の意味を紐解くと、より深い季節感のある365日を感じながら過ごしたいものですね。