子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・・・。
カレンダーにも表記されている動物を表す干支は、十二支と呼ばれています。
しかし正確には十干十二支という十干と十二支を組み合わせたもので、干と支を合わせて干支という言葉です。
では、十干十二支を構成する十干と十二支とは何を意味するのか。
生まれ年を伝えたり年賀状のモチーフに使われたりすることが多い干支とはどんな違いがあるのか。
今回は十干十二支とは何か、十干・十二支の意味や特徴、干支との違いや関係性を早見表付きで解説します。
また、あまり馴染みのない十干十二支の意外な使われ方についても紹介しますので十干十二支を知るきっかけになれば幸いです。
十干十二支(六十干支)とは
十干十二支(じっかんじゅうにし)は、紀元前1600年ごろより中国で用いられていた暦です。
数字の代わりに十干と十二支を組み合わせて年数・日数を表すために使われ、その組み合わせが60通りあることから六十干支(ろくじっかんし)ともいいます。
その十干十二支とは何かを解説する前に、まずは十干と十二支について説明していきます。
十干の特徴・仕組み
十干(じっかん)は、「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10種類で構成された符号です。
十干の種類と読み方・由来
順序 | 十干名(読み) | 由来 | 陰陽五行説(訓読み) |
---|---|---|---|
1 | 甲(こう・きのえ) | 木の陽 | 木の兄(きのえ) |
2 | 乙(おつ・きのと) | 木の陰 | 木の弟(きのと) |
3 | 丙(へい・ひのえ) | 火の陽 | 火の兄(ひのえ) |
4 | 丁(てい・ひのと) | 火の陰 | 火の弟(ひのと) |
5 | 戊(ぼ・つちのえ) | 土の陽 | 土の兄(つちのえ) |
6 | 己(き・つちのと) | 土の陰 | 土の弟(つちのと) |
7 | 庚(こう・かのえ) | 金の陽 | 金の兄(かのえ) |
8 | 辛(しん・かのと) | 金の陰 | 金の弟(かのと) |
9 | 壬(じん・みずのえ) | 水の陽 | 水の兄(みずのえ) |
10 | 癸(き・みずのと) | 水の陰 | 水の弟(みずのと) |
十干と陰陽五行説
十干はもともとは日数の順番を表すための符号で、1ヶ月を上旬・中旬・下旬の3つに分けた時に1つの旬の10日間を示すために用いられていました。
また中国では陰陽五行説に基づいた独自の読み方があり、陰陽とは天と地、上と下、動と静など正反対となる2つのものを意味し、年上を表す陽を「兄(え)」、年下を表す陰を「弟(と)」としています。
陰陽五行説とは、万物は「陰」と「陽」いずれかの性質をもつ「陰陽」の思想と、全てのものは「木・火・土・金・水」の5つから成り立っているという「五行」の思想を合わせた考え方です。
これらは陰陽五行の要素で世の中は回っているという考え方で、五節句に用いられる五色など日本の文化に深く関わっています。
五節句(五色)については、下記記事をご参考ください。
-
五節句の人日・上巳・端午・七夕・重陽それぞれの意味や行事に使われる色の秘密とは?
2024/1/21
この陰陽五行説の考え方から、甲=木の兄(きのえ)・乙=木の弟(きのと)・丙=火の兄(ひのえ)・丁=火の弟(ひのと)・戊=土の兄(つちのえ)・己=土の弟(つちのと)・庚=金の兄(かのえ)・辛=金の弟(かのと)・壬=水の兄(みずのえ)・癸=水の弟(みずのと)という呼び方ができたわけです。
十二支の特徴・仕組み
十二支(じゅうにし)は、「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の12種類で構成された符号で、あなたもご存知であろう年ごとに変わる干支のことです。
十二支の種類と読み方・意味
順序 | 十二支名(読み) | 動物 | 意味 |
---|---|---|---|
1 | 子(ね) | ネズミ | 1月・北の方角 |
2 | 丑(うし) | ウシ | 2月 |
3 | 寅(とら) | トラ | 3月 |
4 | 卯(う) | ウザギ | 4月・東の方角 |
5 | 辰(たつ) | タツ | 5月 |
6 | 巳(み) | ヘビ | 6月 |
7 | 午(うま) | ウマ | 7月・南の方角 |
8 | 未(ひつじ) | ヒツジ | 8月 |
9 | 申(さる) | サル | 9月 |
10 | 酉(とり) | トリ | 10月・西の方角 |
11 | 戌(いぬ) | イヌ | 11月 |
12 | 亥(い) | イノシシ | 12月 |
十二支の由来
中国では古くから十二支を月数の呼び方や時刻・方角に使われており、もともとは12ヶ月の順番を示す符号でしたが、後に動物に結びつけられました。
例えば「子」はネズミで、方角は北・時刻は深夜0時前後を表します。
また「午」はウマで、方角は南・時刻は11時から13時までを表していたため、その前半を午前、後半は午後と呼ぶようになったわけです。
十二支と干支の違い
しかし、十二支は干支(えと)と同じかというと実は異なります。
同じ動物を表していますが、干支の「干」と「支」は別の言葉であり、正確には十干十二支のことです。
具体的なことは後述しますが、干支は十干と十二支を組み合わせた十干十二支のことで、十干の「干」と十二支の「支」で構成されます。
- 十干
- 十二支
十干十二支は60通りの組み合わせ
上記の十干と十二支を組み合わせたものが、十干十二支(六十干支)です。
前述の通り、年賀状などでお馴染みの「干支」という言葉は十干十二支のことで、組み合わせは「甲子(きのえね)」から「乙丑」「丙寅」「辛卯」…と続き、「癸亥(みずのとい)」まで60種類あります。
そして60通りの組み合わせが巡った後、61番目には最初の「甲子(きのえね)」に戻って繰り返します。
これが60歳(数え年61歳)を「還暦」と呼ぶ理由で、60年で干支がひと回りし再び生まれた年の干支に還ることから呼ばれるようになりました。
干支は十二支と同じ12種類で認識されていますが、2024年は辰年でも十干十二支では「甲辰(きのえたつ)」となるわけです。
ちなみに、120歳は2回目の還暦という意味として「大還暦」と呼ばれます。
人生の節目を表す賀寿については、下記記事をご参考ください。
十干十二支の早見表
前述の通り、十干と十二支の組み合わせは60通りあります。
その60種類ある干支、いわゆる十干十二支の読み方と年数を表にしましたので参考にしてください。
音読みは日常で使われますが、訓読みは日本式の読み方で十干と十二支の間に「の」を入れて呼びます。
周期 | 十干十二支 (干支) | 訓読み(音読み) | 西暦(和暦) |
---|---|---|---|
1 | 甲子 | きのえね(こうし) | 1924年(大正13年)/1984年(昭和59年) |
2 | 乙丑 | きのとうし(いっちゅう) | 1925年(大正14年)/1985年(昭和60年) |
3 | 丙寅 | ひのえとら(へいいん) | 1926年(大正15年・昭和元年)/1986年(昭和61年) |
4 | 丁卯 | ひのとう(ていぼう) | 1927年(昭和2年)/1987年(昭和62年) |
5 | 戊辰 | つちのえたつ(ぼしん) | 1928年(昭和3年)/1988年(昭和63年) |
6 | 己巳 | つちのとみ(きし) | 1929年(昭和4年)/1989年(昭和64年・平成元年) |
7 | 庚午 | かのえうま(こうご) | 1930年(昭和5年)/1990年(平成2年) |
8 | 辛未 | かのとひつじ(しんび) | 1931年(昭和6年)/1991年(平成3年) |
9 | 壬申 | みずのえさる(じんしん) | 1932年(昭和7年)/1992年(平成4年) |
10 | 癸酉 | みずのととり(きゆう) | 1933年(昭和8年)/1993年(平成5年) |
11 | 甲戌 | きのえいぬ(こうじゅつ) | 1934年(昭和9年)/1994年(平成6年) |
12 | 乙亥 | きのとい(いつがい) | 1935年(昭和10年)/1995年(平成7年) |
13 | 丙子 | ひのえね(へいし) | 1936年(昭和11年)/1996年(平成8年) |
14 | 丁丑 | ひのとうし(ていちゅう) | 1937年(昭和12年)/1997年(平成9年) |
15 | 戊寅 | つちのえとら(ぼいん) | 1938年(昭和13年)/1998年(平成10年) |
16 | 己卯 | つちのとう(きぼう) | 1939年(昭和14年)/1999年(平成11年) |
17 | 庚辰 | かのえたつ(こうしん) | 1940年(昭和15年)/2000年(平成12年) |
18 | 辛巳 | かのとみ(しんし) | 1941年(昭和16年)/2001年(平成13年) |
19 | 壬午 | みずのえうま(じんご) | 1942年(昭和17年)/2002年(平成14年) |
20 | 癸未 | みずのとひつじ(きび) | 1943年(昭和18年)/2003年(平成15年) |
21 | 甲申 | きのえさる(こうしん) | 1944年(昭和19年)/2004年(平成16年) |
22 | 乙酉 | きのととり(いつゆう) | 1945年(昭和20年)/2005年(平成17年) |
23 | 丙戌 | ひのえいぬ(へいじゅつ) | 1946年(昭和21年)/2006年(平成18年) |
24 | 丁亥 | ひのとい(ていがい) | 1947年(昭和22年)/2007年(平成19年) |
25 | 戊子 | つちのえね(ぼし) | 1948年(昭和23年)/2008年(平成20年) |
26 | 己丑 | つちのとうし(きちゅう) | 1949年(昭和24年)/2009年(平成21年) |
27 | 庚寅 | かのえとら(こうしん) | 1950年(昭和25年)/2010年(平成22年) |
28 | 辛卯 | かのとう(しんぼう) | 1951年(昭和26年)/2011年(平成23年) |
29 | 壬辰 | みずのえたつ(じんしん) | 1952年(昭和27年)/2012年(平成24年) |
30 | 癸巳 | みずのとみ(きし) | 1953年(昭和28年)/2013年(平成25年) |
31 | 甲午 | きのえうま(こうご) | 1954年(昭和29年)/2014年(平成26年) |
32 | 乙未 | きのとひつじ(いつび) | 1955年(昭和30年)/2015年(平成27年) |
33 | 丙申 | ひのえさる(へいしん) | 1956年(昭和31年)/2016年(平成28年) |
34 | 丁酉 | ひのととり(ていゆう) | 1957年(昭和32年)/2017年(平成29年) |
35 | 戊戌 | つちのえいぬ(ぼじゅつ) | 1958年(昭和33年)/2018年(平成30年) |
36 | 己亥 | つちのとい(きがい) | 1959年(昭和34年)/2019年(平成31年・令和元年) |
37 | 庚子 | かのえね(こうし) | 1960年(昭和35年)/2020年(令和2年) |
38 | 辛丑 | かのとうし(しんちゅう | 1961年(昭和36年)/2021年(令和3年) |
39 | 壬寅 | みずのえとら(じんいん) | 1962年(昭和37年)/2022年(令和4年) |
40 | 癸卯 | みずのとう(きぼう) | 1963年(昭和38年)/2023年(令和5年) |
41 | 甲辰 | きのえたつ(こうしん) | 1964年(昭和39年)/2024年(令和6年) |
42 | 乙巳 | きのとみ(いつし) | 1965年(昭和40年)/2025年(令和7年) |
43 | 丙午 | ひのえうま(へいご) | 1966年(昭和41年)/2026年(令和8年) |
44 | 丁未 | ひのとひつじ(ていび) | 1967年(昭和42年)/2027年(令和9年) |
45 | 戊申 | つちのえさる(ぼしん) | 1968年(昭和43年)/2028年(令和10年) |
46 | 己酉 | つちのととり(きゆう) | 1969年(昭和44年)/2029年(令和11年) |
47 | 庚戌 | かのえいぬ(こうじゅつ) | 1970年(昭和45年)/2030年(令和12年) |
48 | 辛亥 | かのとい(しんがい) | 1971年(昭和46年)/2031年(令和13年) |
49 | 壬子 | みずのえね(じんし) | 1972年(昭和47年)/2032年(令和14年) |
50 | 癸丑 | みずのとうし(きちゅう) | 1973年(昭和48年)/2033年(令和15年) |
51 | 甲寅 | きのえとら(こういん) | 1974年(昭和49年)/2034年(令和16年) |
52 | 乙卯 | きのとう(いつぼう) | 1975年(昭和50年)/2035年(令和17年) |
53 | 丙辰 | ひのえたつ(へいしん) | 1976年(昭和51年)/2036年(令和18年) |
54 | 丁巳 | ひのとみ(ていし) | 1977年(昭和52年)/2037年(令和19年) |
55 | 戊午 | つちのえうま(ぼご) | 1978年(昭和53年)/2038年(令和20年) |
56 | 己未 | つちのとひつじ(きび) | 1979年(昭和54年)/2039年(令和21年) |
57 | 庚申 | かのえさる(こうしん) | 1980年(昭和55年)/2040年(令和22年) |
58 | 辛酉 | かのととり(しんゆう) | 1981年(昭和56年)/2041年(令和23年) |
59 | 壬戌 | みずのえいぬ(じんじゅつ) | 1982年(昭和57年)/2042年(令和24年) |
60 | 癸亥 | みずのとい(いがい) | 1983年(昭和58年)/2043年(令和25年) |
日常でも使われる十干十二支
あまり馴染みのない十干十二支ですが、実は日常でも使われていることをご存知でしょうか。
契約書の作成
引越しやビジネスでの取引、就職・転職活動などでさまさまな契約書を取り交わす時に、「甲」「乙」という言葉を目にしたことのある人もいるでしょう。
借主:○○○○(以下「甲」とする)
貸主:○○○○(以下「乙」とする)
上記のように十干は契約や取引などの場で、氏名や名称の略称として使われることがあります。
節分の恵方巻きを食べる方角
節分に行うことといえば豆まきが定番ですが、近年では恵方巻きを食べる機会が増えています。
恵方巻きは歳徳神のある方を向いて食べるのが習わしですが、この方角を表す恵方は十干をもとに決められています。
甲・己 | 東北東(東北東やや右) |
乙・庚 | 西南西(西南西やや右) |
丙・辛 | 南南東(南南東やや右) |
丁・壬 | 北北西(北北西やや右) |
戊・癸 | 南南東(南南東やや右) |
丙・辛と戊・癸は同じ方角のため、方角は全部で4種類です。
節分については、下記記事をご参考ください。
-
節分の日の由来や豆まきの目的とは?恵方巻きに使われる7つの具材も解説
2024/2/3
昼の12時前後を表す言葉
現在では1日を24時間という数字で生活していますが、江戸時代までは1日を12の刻に分けており、もともと月数の呼び方や時刻・方角に使われていた十二支で時刻を数えていました。
時刻における十二支は、深夜23時から翌1時が子の刻で、午前1時から3時が丑の刻です。
以降は2時間刻みで寅、卯、辰…の順に並べていくと、昼の12時前後(11時から13時)は午の刻にあたります。
12時を「正午」というのは、12時がちょうど「午」の刻にあたるのが由来です。
また昼の12時を境に「午前」「午後」というのも「午の刻」より前か後かということを指しています。
つまり、現在でも用いられている「正午」「午前」「午後」の時間を表す言葉は、十二支「午」を表しているわけです。
別談ですが、日付が変わった夜の0時は子の刻となるため「正子」と呼ばれます。
夏の高校野球・甲子園
夏の高校野球といえば、甲子園球場です。
この甲子園球場が完成したのは1924年(大正13年)で、この年は「甲子の年」にあたります。
十干十二支で最初の組み合わせにあたる年で縁起がよいとされたため、「甲子園」と命名されたのが名前の由来です。
縁起がよいのは甲子の年だけでなく、甲子の日も縁起がよいとされています。
甲子の日については、別記事で紹介します。
60種類ある十干十二支まとめ
年賀状などで見られるように干支は一般的に12種類ですが、もともとは十干や十二支を組み合わせた十干十二支のことであり60種類あります。
干支といえば、十二支のことだと認識していた人も多くいるようです。
その年の干支という意味だけでなく、契約書や甲子園球場など意外にもさまざまな場面で用いられている十干と十二支。
十干十二支の早見表からあなたが生まれた年の十干と十二支を確認してみると、より身近に感じられると思いますがいかがでしょうか。
以下の記事では、干支を表す十干と十二支の種類について紹介しています。
10種類ある十干と12種類ある十二支それぞれの特徴や性質、意味を解説していますので、あなたの生まれ年から性格やイメージが合っているかチェックしてみてください。