YMYL、PREP、PDCA、AISAS、PASONA・・・。
近年、アルファベット3~6文字の頭文字をとって表した、謎のWeb・IT用語を見かけたり聞いたりする機会が増えてきたと感じる方も多いでしょう。
特に、4文字のアルファベットが目立ち、例をいくつか挙げるとキリがないですが、頭文字をとって構成されたこれらの英単語は何を意味しているのか。
どういった目的や働きがあるのか、どう意識し使ったらいいのか、少し似ているようで違うこともあり、紛らわしいという方も多いのではないでしょうか。
今回は、Googleの品質評価ガイドラインに関わる「YMYL」について紹介します。
YMYLの意味から扱い方、Google評価の状況、該当するジャンルの例や理由、SEO対策のポイントを解説していますので、YMYLに特化したコンテンツづくりにご参考ください。
YMYLとは?
YMYLとは、「Your Money or Your Life」の頭文字をとった略称で、直訳すると「あなたのお金、あなたの人生」という意味です。
お金や生活、健康などといった、人生において意思決定を要する局面で、影響を与えるテーマやトピックを扱うWebサイトのことを指します。
YMYLの扱い方
例えば、貯金や収入を増やすために、あるWebサイトで投資や保険の情報が誤った情報で掲載されていると、その情報に面した読者は大きな損失や破産に追い込まれてしまうかもしれません。
また、病状を改善するために、とあるWebサイトで対処方法や薬が間違って紹介されていると、その情報を目にした読者は病気の悪化や生死に関わる問題にまで発展してしまうかもしれません。
そのような重要な専門的知見を要する情報は、Googleの検索品質ガイドラインの中で「YMYL」として位置づけられ、コンテンツの品質をより正確性や信頼性が確立されるよう厳格に扱われます。
人生や生活への影響が高ければどのようなジャンルでもYMYLに位置づけられますが、わかりやすく例えると金融や保険、医療などが挙げられます。
YMYLにおけるGoogleの評価
Googleの品質評価ガイドラインでは、YMYLを「人の将来の幸福、健康、経済的安定、または安全に影響を与える可能性のあるトピック」と定義しており、品質の低いYMYLコンテンツは人の幸福や健康、経済、安全に悪影響を及ぼす可能性があると、通常より厳しい評価基準を適用するとされています。
2.3 Your Money or Your Life (YMYL) Pages
Some topics have a high risk of harm because content about these topics could significantly impact the health, financial stability, or safety of people, or the welfare or well-being of society. We call these topics <Your Money or Your Life= or YMYL.
いくつかの種類のページまたはトピックは、人の将来の幸福、健康、経済的安定、安全に影響を与える可能性があります。 私たちはそのようなページを「あなたのお金またはあなたの人生」ページ、またはYMYLと呼んでいます。
引用:品質評価ガイドライン・11P
For pages about clear YMYL topics, we have very high Page Quality rating standards because low quality pages on such topics could potentially negatively impact a person’s health, financial stability, or safety, or the welfare or well-being of society.
低品質なYMYLページは人の幸福、健康、経済的安定、安全に悪影響を及ぼす可能性があるため、YMYLページに関しては非常に高い品質基準を設けています。
引用:品質評価ガイドライン・13P
YMYLに該当するジャンルの例
YMYLに該当するWebサイト・Webページコンテンツのジャンルは、以下のようなものがあります。
医療・健康(病院、薬、予防方法など)
政治・行政(選挙、公的機関など)
金融・財務(税金、保険、ローンなど)
法律(離婚、遺言、養子縁組など)
国民(国籍、宗教、人権や民族など)
ショッピング(商品、決済、返品など)
上記以外に、栄養や住宅、転職、進学、フィットネスなどもYMYLの対象となります。
このような生活やお金と関連が深いページ、つまりYMYLページは特に気を遣って真実味の高い情報を発信する必要があります。
情報の信憑性や他のジャンルよりも詳しく豊富な情報を提供するなどして、より高品質となるようにページを作り込むことが重要です。
Googleは、特にこれらのジャンルが提供する情報の「正確性」を重要視して、ページの品質を評価します。
また、2017年12月には「医療・健康」というYMYL関連において、「信頼性」が高く有益な情報を提供するWebサイトを高く評価した過去があります。
具体的には、歯科(歯科医院や歯医者)、整骨院(接骨院)などはYMYL関連のジャンルとして該当します。
一方、不動産や美容室(美容院)などのジャンルはYMYLのジャンルと関連性が薄いでしょう。
このように、GoogleはYMYLのジャンルをきちんと切り分けて評価しています。
YMYLのジャンル別テーマの例
では、どんなテーマや内容がYMYLに該当し、Googleはどう評価するのか、その主な例をジャンル別に紹介します。
健康・医療
医療問題、薬、病院、緊急時の備え、活動の危険性などに関するアドバイスや情報を扱うコンテンツはYMYLに該当します。
例えば、歯科(歯科医院・歯医者)や整骨院(接骨院)などのジャンルは関係しますが、不動産や美容室(美容院)などのジャンルは関連性が薄いとされています。
これらの情報は、間違った情報を信用してしまった場合、健康上の不利益や生命に関わる問題となるため、非常に厳格に扱われます。
政府や法律といった公的情報
選挙・投票、政府機関、公的機関、社会福祉サービス、法律問題など、市民が常に理解しているために重要となるコンテンツはYMYLに該当します。
法律問題は主な例として、離婚や子どもの親権、養子縁組、遺言書の作成などが挙げられます。
市民生活でこれらの間違った情報があることで、正しい行政サービスを受けられないなど、権利上の不利益が生じないよう厳格に扱われます。
金融・財務
投資、税金、退職金、退職後の生活設計、ローン、銀行、保険など、金融や家計に関する情報を扱うコンテンツはYMYLに該当します。
また、資産に関するアドバイス、オンラインでの購入・決済、送金を可能にするコンテンツも含まれます。
お金に関わる情報は、間違った情報や不正確なアドバイスを信頼してしまうことで、大きな損失を被ってしまうことがないよう厳格に扱われます。
国民・人
ある集団に関する情報や主張のことで、人種または民族、宗教、障害、年齢、国籍、退役軍人の地位、性的指向、性別または性同一性に基づいてグループ化された人々も指します。
LGBTやジェンダーといった性別または性同一性もありますが、これらが全てではありません。
特に人種や宗教、性別などは非常にデリケートな問題であり、間違った情報から差別や争いに発展する可能性があるため厳格に扱われます。
ショッピング・買い物
買い物ジャンルは、商品やサービスの調査や購入に関する情報やサービス、特にオンラインでの送金や支払いを可能にするコンテンツはYMYLに該当します。
オンラインで購入できるサイト、つまり金銭の取引や決済が可能なサイトは全般に含まれ、特に高額の商品については厳格に扱われます。
その他
上記以外にも、国際的なイベント・出来事やビジネス、政治、科学、テクノロジーにまつわる重要なニュースを扱うコンテンツもYMYLに該当します。
ただし、全てのニュースが、必ずしもYMYLに分類されるわけではありません。
例として、スポーツ、エンタメ、日常生活のトピックなどは、一般的にYMYLとはみなされません。
他には、フィットネスや栄養、住宅情報、大学選び、就職など、人生の大きな決断や生活の重要な局面に関するコンテンツもYMYLに該当します。
なお、上記に挙げたジャンルやテーマには当てはまらなくても、情報の正確性が必要とされるトピックは、基本的にYMYLに該当すると判断した方がよいでしょう。
このように、GoogleはYMYLのジャンルをきちんと切り分けて、Webサイト・ページの評価基準をより厳格にし、検索結果の品質向上を目指しています。
YMYLとE-A-Tとの深い関係
YMYLは、Google品質評価ガイドラインの項目で定義されている「E-A-T」と深く関わりがあります。
E-A-Tは、3つの評価基準の頭文字をとった略語で、品質のよいページを評価をする要素は以下の通りです。
E:Expertise(専門性)
専門性の高いコンテンツであるかどうかを中心に、発信するコンテンツが十分な量で正確に述べられているか。
A:Authoritativeness(権威性)
掲載するコンテンツの執筆者や発信者が信頼できる人物・メディアかどうか、著者や運営元の法人などの社会的認知度や評価・評判は高いか。
T:Trustworthiness(信頼性)
信頼性の高い情報コンテンツかどうかを主に、掲載されているWebサイトやページは安全か、信用に値する法人や個人が運営しているか。
Googleは、SEO対策においてE-A-Tを表す3つの要素を満たすコンテンツを重要とし、高く評価しています。
特に、YMYL領域のコンテンツは、情報の正確さや信頼性が重要になるため、高いレベルでE-A-Tを満たすことが必須とされています。
また、YMYLコンテンツにおいて、E-A-Tのレベルが低いものは評価を下げる原因になると、Google品質評価ガイドラインで明言しています。
YMYLにおけるSEO対策ポイント
YMYL領域で展開しているWebサイトやWebページは、通常のSEOに比べて検索上位表示を目指す難易度が非常に高くなります。
もしあなたが、YMYLに該当するジャンルのWebサイトやブログを展開する場合は、以下のポイントを押さえて対策するとよいでしょう。
著者のプロフィールを充実させる
E-A-TのAに当たる「Authoritativeness(権威性)」を高いレベルで確立させるため、そのコンテンツの著者がその分野の専門であること、社会的に認知されていることなど、あらゆる信頼できる情報を掲載します。
著者が過去に本を出版している、その専門分野にて賞や認定証を有している、あるいは会員など関連機関に所属している、といった信頼性をより高める要素がある場合は、できる限り明示しておくことをおすすめします。
正確な情報で裏付けができる形にする
YMYL領域で展開するWebサイトやページでは、不正確で曖昧な情報は評価されません。
YMYLコンテンツでは、間違った情報ではなく、正確であることがYMYL以外の他のコンテンツに比べて厳格に評価されます。
そのため、掲載する情報の正しさを裏付けるためにも、参照できるデータを引用・出典掲載し、公的機関や専門家の信頼できるソースであることなどを明記するようにした方がよいでしょう。
引用や出典は、著作物に対するルールを正しく守る必要があります。
無断転載やコピーだけで出典を明記せず、掲載することは著作権侵害にもあたるため注意が必要です。
Webサイトの運営者情報を明記する
E-A-TのTに当たる「Trustworthiness(信頼性)」を高いレベルで確立させるため、責任者や運営者情報、法人の場合は企業情報を掲載してください。
YMYL領域でのWebサイトにおける自身に関する責任者情報が欠けると、マイナス評価の要因となります。
オンライン決済などを展開しているWebサイトの場合は、住所や連絡先だけでなく、カスタマーサポートや利用規約など豊富な情報掲載が必要です。
外部からのよい評判を増やす
YMYL領域のWebサイトにおいては、外部からのよい評判(レピュテーション)を獲得することは重要です。
品質評価ガイドライン(2.5 Understanding the Website)では、Webサイトが自身について説明していることと、外部の評価(評判の良い独立した情報源)との間に相違がある場合は、外部の評価を信頼すべきだと説明しています。
このことから、Googleの評価としても外部の評判が優先されるものと想像できます。
また、権威性の高い外部サイトから被リンクされたり、自サイトについて引用・言及(サイテーション)されたりすることは、SEOにおいて強く影響するといえます。
最新の情報に更新する
コンテンツを常に最新の情報にすることは、Webサイトの運営にとって重要な要素です。
新しい情報であることは、コンテンツの信頼性にもつながり、Googleも情報を定期的に更新しているWebサイトを高く評価しています。
特に、定期的に開催されるイベント情報や、進歩が著しい健康・美容、IT関係の専門ジャンルは、情報の新鮮さが鍵となるため、更新日も明記しておくとよいです。
終わりに
Googleの品質評価ガイドラインにおけるYMYLは、SEO対策において最もハードルが高いジャンルです。
Webサイトのジャンルによって、Googleに求められるものが異なるため、それを考慮して対策を進める必要があります。
具体的には、より情報の正確さを重視して、信頼性の高いコンテンツを提供することが重要です。
一方、誤解を招く情報などにより、それを満たしてないYMYLコンテンツは、低評価を受けて検索順位の低下に繋がりやすくなります。
情報の正確性や信頼性を考慮した上でSEOを行い、YMYL対策を進めていきましょう。