
1月1日、1年の始まりを表す元旦。
私たちがよく使う「元旦」とは別に、「元日」という言葉もあり、どちらも1年の始まりを表しています。
しかし、厳密にいうと元旦と元日は意味が異なるのです。
では、元旦と元日はどんな意味があり、どういう違いがあるのでしょうか?
また、同じ1年の始まりを表す「お正月」ともどう違うのでしょうか。
今回は、元旦と元日、お正月の意味や違い、使い分け方を紹介します。
また、初日の出を拝むようになった起源、おせち料理の意味など、お正月にまつわる意味についても解説していますので、味わい深いお正月を過ごすご参考になれば幸いです。
元旦とは
元旦とは、国民の祝日に関する法律(祝日法)で、「年のはじめを祝う」ことを趣旨として制定された祝日です。
新年の最初に迎える1月1日、日本では元日を「四方拝(しほうはい)」とも呼んでいます。
四方拝については後述しますが、明治時代から昭和時代前期まで、天皇が元旦に宮中・神嘉殿(しんかでん)の南庭で皇室行事である天地四方の神祇を拝する儀式です。
1月2日は、祝日法第3条第2項による休日になります。
なぜ1月1日が元旦なのかというと、元旦の「旦」は、上の「日」が太陽を表し、下の「一」が地平線を表しており、地平線から太陽が昇る様子を表現した漢字です。
このことからも、元旦が1年の始まりの朝を意味する単語であることがわかります。

元旦と元日の違い
元旦(がんたん)と元日(がんじつ)は、どちらも1年の始まりを表す言葉で、1月1日を指すと思っている方も多いのではないでしょうか?
確かに両方とも1月1日の意味として用いられていますが、具体的には少し異なります。
元旦=元日の朝
元旦の「旦」は、明日、明け方、朝を意味する漢字です。
太陽を表す「日」の下に、地平線を表す「一」から成り立っており、「旦」という漢字は朝日が昇る水平線を意味することになります。
元日=1月1日
元日の「日」は、基本的な意味として「1日」であるため、1月1日の朝から夜までの丸1日を表しています。
上記をまとめると、「元旦」は1月1日の午前中、「元日」は1月1日の1日中を指すことになります。

元旦と元日の使い方
元旦は、1月1日の朝を慶ぶ言葉として使われます。
元旦の重複表現に注意
元旦という表記は「元日の朝」を意味し、「元旦の朝」は厳密にいうと重複表現になりますので気をつけましょう。
また、「元旦の夜」も表現がおかしいため、夜を意味して使うのであれば「元日の夜」か「1月1日の夜」とした方がいいです。
ただし、日本で使われる「旦」は一旦、吉旦などの表現もあり、「旦」が必ずしも朝を指すとは限らない熟語でもあります。
国語辞典によっては、「元旦」の意味として「元日」を載せていることがあり、テレビや雑誌などでもよく使われているため、「元旦の朝」が必ずしも間違いではありませんが、できるだけ使わない方がよいでしょう。
例えば、「初日の出が美しく見えた元旦」「元旦は厳しい寒さでも空気が澄んでいて清々しかった」といった使い方で、1月1日の朝の雰囲気が伝わります。
他にも、「正月」や「一月」を組み合わせて「正月元旦」や「一月元旦」とすると重複表現になります。
なお、元日は1日を意味するため、元旦とは違い「元日の朝」という表現が使えます。
年賀状の結びに使う元旦と元日
先述の通り、元旦と元日では意味や使い方が異なります。
では、年賀状の結びとしてよく使われる「令和○年元旦」「令和○年元日」ですが、どのように使い分けたらいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
一般的には、元旦と元日のどちらも、1月1日に届くように投函した年賀状に用いることができます。
また、1月1日に配達される年賀状は、基本的に午前中に届けられるため「元旦」という言葉を使うことが多いです。
年賀状については、下記記事で詳しく解説していますのでご参考ください。
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年賀状の起源や種類、喪中はいつまでに出す?書き方や送り方も解説
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元旦に初日の出を見る意味
元旦に初日の出を見るために、眠い目をこすりながら早起きをしたことのある方もいれば、大晦日から夜更かしをして起きれなかった方もいるでしょう。
日本では、古くから初日の出を特別なものとして見てきました。
初日の出が昇ると同時に、幸福を各家庭にもたらすと信じられている年神様(としがみさま)も現れると考えられていたからです。
初日の出を拝むことで、年神様にその年の豊作や幸せを祈る意味があるため、農耕民族の日本人にとってありがたい存在でした。
初日の出を拝む習慣が広まったのは、天皇陛下が元旦に天地・四方・山稜を拝礼する「四方拝(しほうはい)」が始まりとされています。

年神様とは
年神様(としがみさま)は、正月に各家に迎えて祭る神様で、豊作の守り神でありいつも私たちを見守っている祖霊であるともいわれています。
年に1度決まったお正月の時期に人間界へ降りてきて、各家々を訪れ、新しい年の豊穣や幸福を与えてくれます。
年末になると各家庭では、お正月に年神様をお迎えするために必要な準備を行うわけですが、正月飾りや門松は年神さまを迎えるために役割があり、しめ縄は神様に安心しておいでいただける場所の範囲を示す結界のような意味があります。
年神様(歳神様)は地域によって、歳徳神(としとくじん)、とんどさん、恵方神、お正月様など、さまざまな名前で呼ばれることがあります。

四方拝とは
四方拝は、平安時代初期に行われた天と地、四方の神様と山稜に1年間の豊作や安寧を願う儀式のことです。
年間で約20件近く行われる宮中祭祀の1つで、天皇陛下の公務として重要な祭祀です。
元日の午前5時半に、皇居の宮中三殿といわれる「賢所(かしこどころ)」「皇霊殿(こうれいでん)」「神殿(しんでん)」の西側にある神嘉殿(しんかでん)の庭に設けられた建物の中に入り、天地、四方および山稜を拝礼し、国家・国民の安寧と五穀豊穣を祈ります。
この四方拝という儀式が次第に国民にも広がり、元旦を迎えたことを祝う習慣が定着しました。
もともとは家族で自宅から日の出を待つことが習慣でしたが、現在のように見晴らしのよい場所から初日の出を拝むようになったのは明治時代からです。

お正月とは?
元旦や元日とは別に、お正月(正月)という言葉もよく聞くと思います。
お正月といっても、三が日、松の内、小正月、大正月と種類があるため、1つずつ説明していきましょう。
お正月の意味と起源
お正月(しょうがつ)は、新しい年が始まった数日間を指します。
もともとは1月を正月と呼んでおり、「正」という漢字が、年の初め、年を改めるという意味があるためです。
昔から、1年間の幸せをもたらすためにやってくる年神様(としがみさま)を、家族が揃ってお迎えする大切な日で、日本の行事の中で最も古くから存在するものだとされています。
年神様は健康をもたらし、子孫繫栄や五穀豊穣を授けてくれる神様です。
諸説ありますが、一説では6世紀半ばにはすでにお正月の行事は存在していたともいわれ、農耕の神様とご先祖様への信仰が合わさって、家を守る神様が誕生したと考えられています。
古来より日本人が年の初めに年神様をお迎えとおもてなしをして、各家の幸福と繁栄をいただこうとしたことがお正月の由来とされています。


お正月の時期
現在のお正月は、1月1日~3日までの「正月三が日」を指しますが、一般的には7日まで、地域によっては15日までの期間がお正月と認識されています。
しかし、本来は1月1日から31日までの1ヶ月を指す言葉でした。
宮中や神社など日本の伝統と縁が深い場所では、1月の1ヶ月間にさまざまな正月の行事があります。
また、お正月の準備や接待で疲れた女性たちを休めるための「小正月」や「女正月」があり、時期は1月15日前後です。
ちなみに戦前までは、1月1日から3日までは台所の火を使わずに過ごす風習もありました。
おせち料理は、そのための食べ物でもあったわけです。

正月三が日
正月三が日(しょうがつさんがにち)というのは、元日(1月1日)・1月2日・1月3日の3日間を意味し、単に三が日とも呼ばれます。
この間は休日として、日本の官公庁や多くの企業では、三が日を正月休みとし、1月4日から平日となります。
祝日法には元旦しか触れていませんが、労働基準法上の扱いとして国民の祝日と同じ法定外休日です。
現代では、1月1日から一部のスーパーやコンビニも営業していますが、昔は正月三が日を「正月休み」として大部分のお店が閉まっていました。
松の内
松の内は、松七日ともいい、前の年が無事に終わったことと新しい年をお祝いする行事です。
時期は、一般的に関東圏は1月1日から7日までの大正月、関西圏は1月1日から15日までの小正月を指しています。
松の内には、年神様がいるとされているため、門松(松飾り)を飾る風習があります。
大正月
大正月(おおしょうがつ)とは、一般的に元日から1月7日の「七草粥・七種粥(ななくさがゆ)」までの期間を指します。
七草粥を食べて1年の無病息災を祈る1月7日は、「人日(じんじつ)」という節供の日です。
昔から重要視されてきた1月7日を区切りとしていることにより、大正月は元日から1月7日の期間となります。

小正月
元日から1月7日までを大正月と呼ぶのに対して、1月15日を小正月(こしょうがつ)と呼びます。
昔は月の満ち欠けを基準に生活していた日本人は、満月から満月までを1ヶ月と数えており、1年で一番最初の満月(旧暦1月15日)を年の始まりとしていました。
中国の旧暦(太陰太陽暦)は新月から新月までを基準にしており、旧暦1日1日(新月)を正月とするようになってからは、満月の1月15日を小正月と区別して呼ぶようになりました。
明治時代に暦が新暦(太陽暦)に変わった後も、名残で1月15日を小正月と呼んだまま現在に至っているため、小正月は1月15日となります。
お正月前にやること、準備すること
お正月には、行政機関や金融機関はじめ、ほとんどの企業や病院、場合によっては日常的に利用しているスーパーも正月休みとなります。
新年を気持ちよく迎えるためには、大掃除や買い出しなどさまざまな準備が必要です。
お正月前の年末にやることや準備すること、お正月にまつわるそれぞれの意味を解説します。
お正月飾り
クリスマスが終わり、年末に近づくとあちこちの商店で見かけるのがお正月飾りです。
お正月飾りでよく知られる代表的なものは、門松、しめ縄、鏡餅でしょう。
地域によってはお正月飾りの種類は異なりますが、ここでは一般的に広く知られているお正月飾りの意味を紹介します。

門松
門松は、年神様が探しやすいように家の目印として置くという意味があります。
松は繫殖力が強く永遠性や生命力を感じることで、縁起がいい植物として選ばれたといわれています。
しめ縄
しめ縄は、結界を張って厄除けをするためという意味があります。
神様のいる聖域と現世を隔てる境界の役割をもち、神棚にしめ縄を飾ることで年神様が安心して現世に降臨できる神域を作りお迎えします。

しめ飾り
しめ飾りは、しめ縄に縁起物などを取りつけて装飾したものです。
玉飾りとも呼ばれ、玄関にしめ飾りを飾ることで年神様への目印としてお迎えします。

鏡餅
鏡餅は年神様へのお供えでもあり、神様が宿るものとしての意味もあります。
古くからお米には、1粒1粒に神様が宿っていると信じられてきました。
よくご飯の米粒を残す子どもに対して、お茶碗のご飯は1粒残さず食べなさいという言葉を聞きますが、お米1粒1粒に神様が宿っているため粗末してはならないという意味があるためです。
神様が宿っている米粒を固めて作る鏡餅は、さらに強い神様の力が宿る神聖な食べ物と考えられてきました。

お正月飾りは、正月始めといわれる12月13日以降なら、飾り始めてもよいとされています。
とはいえ、クリスマス真っ盛りの時期にお正月飾りをつけるのも時期尚早のため、クリスマスが過ぎた12月26日以降に飾ることが多いでしょう。
ただし、12月29日と12月31日は縁起の悪い日で、飾るのは避けた方がいいとされています。
そのため、正月飾りは12月28日までに済ませるか、12月30日に行うのがよいです。
詳しくは、大晦日の記事で解説していますのでご参考ください。
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そして、鏡餅を除くお正月飾りの処分は、松の内が過ぎた時に行います。
松の内は、東北・関東・九州などは1月7日まで、関西地方では1月15日まで、と地域によって異なるため確認しておきましょう。
遅くとも1月15日までに片づけ、お焚き上げに持っていくか、塩をまいてお清めをしてから処分します。
鏡開き・ぜんざい
鏡開き、という言葉を聞いたことがありますでしょうか。
鏡開きというのは、お正月が過ぎて年神様をお見送りした後に、お供えしていた鏡餅を下げ、木槌などで割って食べる昔からある日本の習慣です。
鏡開きは、毎年1月11日に行います。
つまり、鏡餅はお正月飾りとは違い、松の内ではなく鏡開きまで処分などをしません。

旧暦で松の内は15日まで、鏡開きは20日に行われていました。
しかし、徳川3代将軍の家光が4月20日に亡くなったことを受け、月命日である20日は避けるようになったことが由来です。
代わりに11日に鏡開きを行うことになり、それに伴って松の内も現在のように7日に変更されたといわれています。
鏡餅を割った後は、ぜんざいにして食べることが一般的に多いようです。
これは、厄や邪気を払う・魔除けができると古くから考えられてきた、小豆を食べることで、1年の無病息災を願う風習があるためです。
ちなみに、ぜんざいは、お餅や白玉などの上に汁気のない餡を添えた行動食をいいます。
ぜんざいといえば、おしるこという名前を聞いたことがあると思いますが、つぶ餡をぜんざい、こし餡をおしること呼ぶという違いがあります。
いうまでもないですが、鏡餅はおせち料理やお雑煮に使って食べるものではありませんので注意しましょう。

年賀状
年賀状は、お世話になった方や遠方でなかなか会えない方などへ、新年をお祝いする言葉を添えて送る挨拶状です。
古くから遠方のために年賀の挨拶訪問ができない方や、年始の来客が多く訪問することを遠慮する方に、自分にも相手にも都合のよい挨拶の形として用いられてきました。

新年の挨拶の後には、近況を伝える言葉を添えたり、写真で現在の状況を伝えたりするなど、それぞれの想いを綴ります。
干支の絵を描いたり、手作りスタンプを押したりするなど、楽しく表現しましょう。
近年ではインターネットの普及により、メールやLINE、SNSを使用してメッセージを送る方も増えていますが、相手の様子を伺ったり自分の近況を伝えたりする手段でもあります。
年賀状は元日に届くように送るのがマナーですが、返信する可能性を踏まえると遅くとも松の内までに届くように出します。
もし、松の内が過ぎてしまうようであれば、寒中見舞いとして出しましょう。
年賀状の由来や送り方のマナーについては、下記記事で詳しく解説していますのでご参考ください。
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大掃除
実はお正月に掃除をすると、福をもって訪ねてくれた年神様を追い払うことになってしまいます。
しかし、新年に神様を迎え入れる準備として、家の中をけがれのない清浄な場所にする必要があるため、前日の大晦日には大掃除をする習慣があります。
つまり、年末に大掃除をするのは、新年に神様を迎え入れるためです。
大晦日については、下記記事で詳しく解説していますのでご参考ください。
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七草粥(七種粥)
七草粥は、春の七草を刻んで作ったお粥のことです。
日本では昔から、松の内である1月7日の朝に、春の七草すべての種類が入った七草粥を食べて、1年間を無病息災で過ごせることを願ったとされています。

現在では、正月料理のご馳走で疲れた胃腸を休めるという意味も含まれており、平安時代には米や粟など7種類の穀物を入れた七種粥が一般的であったといわれています。
この無病息災のもととなる、七草の種類をすべて答えられるでしょうか。
七草の種類は、セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロです。
ゴギョウはハハコグサ、ハコベラはハコベ、スズナはカブ、スズシロはダイコンを指します。

この七草をお粥にした七草粥を1月7日に食べる習慣は、江戸時代に広まったそうです。
ちなみに七草粥の起源は、中国が唐と呼ばれていた時代にまで遡り、1月7日の「人日の節句」に、七種菜羹(しちしゅさいこう)という7種類の野菜が入った汁物を食べて無病息災を願う風習があったことからきています。
クリスマスが終わると年末にかけて一層慌ただしくなるため、しっかり確認しておきたいですね。
なお、地域や各家庭によってお正月前の準備はさまざまで、上記はあくまで一般的な習慣として行われていることとしてご留意ください。
お正月にやること、過ごし方
元旦に初日の出を見た後に始まる、お正月の期間には何をするのでしょう。
古来から伝わる行動の意味や由来も説明していきます。
新年の挨拶
元日の朝、今年初めて家族と目を合わせた時や親戚や友人と会った時に使う挨拶の言葉があります。
すでにあなたもご存知でしょう、「あけましておめでとうございます」です。
このお正月ならではの言葉の意味を知っていますか?
年の初めに神様が家にやってくるのはめでたいことだ、という意味でそのような言葉になったといわれています。
おせち料理
元日は新たな年を迎えるめでたい日として、お正月に食べるものを「おせち料理」と呼びます。
1年の豊作と家族の安全を祈願して年神様をお迎えするため、正月三が日の間は炊事をしないという風習があります。
年末に日持ちのする料理を作っておき、三が日の間はそれらをおせち料理として食べる習わしです。

そして、おせち料理に使われる単品料理・具材には、実は意味が込められています。
おせち料理については、下記記事で詳しく解説していますので食べる時の参考にしてください。
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お雑煮
お雑煮は、さまざまな具材を混ぜて煮合わせたことが語源です。
お雑煮の具材や味付けは地域や各家庭によって異なりますが、1つだけ必ず入っているのがお餅です。
新年の実りと幸せを与える年神様をお迎えするために、前年に収穫したお米から作った餅をお供えし、そのお下がりとして農作物や海産物などと一緒に煮込んで食べたことが始まりです。

ちなみに、鏡餅は年神様へのお供えであるため、神様にお帰りいただく松の内が明けるまでは食べてはいけません。
お雑煮の味付けは味噌が一般的に多いですが、お餅の形は関東圏では角型、関西圏では丸型が使われるという興味深い慣習があります。
諸説ありますが、関西の丸型は円満を意味する縁起物として扱われ、関東は1つずつ手で丸めるよりも1度に多く作れる角餅が使われるようになったからといわれています。
具材は、大根やニンジン、ネギなどの一般的な野菜に、地域によっては山菜やキノコ類、サケやカキといった魚介類などその土地の産物を加えます。
お年玉
子どもたちの正月の楽しみといえば、お年玉でしょう。
今では現金を祖父母や父母、親戚から子どもに渡す習慣になっていますが、もともとは年神様から新年に新しい魂「年魂(としだま)」を授かることを意味していました。

年神様は鏡餅などのお供え餅に宿り、餅玉に分けたものが「年魂」で、これを家長が「御年魂」「御年玉」として家族に分け与え、この餅玉を食べる料理がお雑煮です。
初夢
初夢は、年明け後に初めて見る夢のことを指します。
具体的には、元日から1月2日にかけて初めて見る夢のことで、その年の最初に見た夢と考えれば問題ないでしょう。
初夢には、「一富士二鷹三茄子(いちふじにたかさんなすび)」を見ると、縁起がよいと聞いたことのある方も多いでしょう。

一富士は富士山のことを指し、富士は「不死」に通じるため不老長寿を意味しているといわれています。
二鷹の鷹は、狙った獲物を捕まえることからチャンスをつかみ取るとの意味がありますが、鷹は「高い」とかけて、高い目標を実現したりするともいわれています。
三茄子の茄子は、実がよくなることから子孫繁栄を意味とする説がありますが、「成す」とかけて物事を成すということからもいえます。
一富士二鷹三茄子には続きがありますが、簡潔にまとめると富士は「不死」、鷹は「高い」、茄子は「成す」という言葉をかけた意味だと覚えておくとよいです。

お正月にやってはいけないこと
お正月には掃除をしてはいけないといわれたり、聞いたりしたことがある方は多いでしょう。
その理由は、せっかくきてくださった年神様を追い払うことになるためです。
年神様を迎えるはずのお正月に掃除をしてしまうと、お迎えするどころか追い払ってしまうことになります。
他にもお正月にしてはいけない行動がいくつかありますので、以下に紹介します。
掃除や洗濯をする
先ほど説明した通り、お正月に掃除をすると、福をもって訪ねてくれた年神様を追い払うことになってしまいます。
洗濯やトイレ、浴室、キッチンなどの掃除も神様を水で洗い流すといった意味合いになるため、控えた方がよいです。
厳密にいうと、入浴も避けた方がいいといわれています。
お風呂で体を洗ってしまうと、神様が良い気を振りまいてくれたにも関わらず水に流してしまうことになります。

とはいえ、正月の三が日すべてで掃除も風呂も控えるのは難しいため、1月1日の元日だけでも控えましょう。
毎日の家事労働は年末までにして、元旦だけでも家族とゆっくり過ごしたいものです。
なお、新年を迎える前日の大晦日までには大掃除をする習慣があります。
大晦日(年末)に大掃除する習慣については、下記記事で詳しく解説しています。
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刃物を使ったり煮焚きをする
お正月に刃物や煮焚きは、できるだけ避けたいものです。
これは、三が日に刃物を使わなければこの1年を無事に過ごせるという古くからの考え方があり、また、刃物で切るというのは縁を切ることにも繋がるためやってはいけない行動とされているようです。
火を使う煮焚きも実は避けた方がいいとされており、灰汁が出る=悪が出るという意味合いもあるため、お正月には好ましくない行動となります。
また、火の神様である荒神様に休んでもらうためにも、お正月の三が日は火を使わない方がいいでしょう。
四足歩行の動物肉を食べる
四足歩行の動物というと、牛や豚、馬などが代表的です。
諸説ありますが、殺生を禁止する仏教の教えからなる風習があり、基本的におせち料理には肉類を入れてはいけないとされています。
しかし現在では、お肉を使った単品料理をおせちのメニューに加えて販売するホテルや料理専門店が数多くあります。
現代の日本人の食生活を考えると、お肉を避けるのは少し難しいため、あまり神経質にならずに食べたいものを食べてゆっくりお正月を過ごしたいものですね。
どうしても古くから伝わる決まりが気になる方は、二本足の動物である鶏肉を使用するのもいかがでしょうか。
お金を使う
神様に手向けるお賽銭や子孫にあげるお年玉は、縁起物のため必要な出費ですが、他の出費はできるだけ抑えた方がよいとされています。
それは、元日にお金を使うとその年は浪費する年になってしまうという言い伝えがあるためです。
しかし、初詣や初売りセールなどでお金を使う場面が多く、気づけば浪費していることもしばしばあるでしょう。
購入する前に本当に必要なものなのかよく考えて、できるだけ浪費を抑えたいものです。

ケンカや揉め事を起こす
新年早々、悪い運を植えつけてしまうという考えからお正月にケンカは禁物です。
しかしお正月は毎年、親戚の集まりがあるというご家庭もあるでしょう。
大勢の人が集まると、お酒の酔いもありケンカや揉め事が発生しやすいため、居心地の悪さを感じたら無理にその場にいようとせず、頃合いを見計らって去るとよいです。
正月飾りの片づけや処分には注意
しめ縄やしめ飾りといった正月飾りは、年神様をお迎えするための目印やお帰りいただく時の結界という役割があるため、正月三が日が終わったからといって片づけてはいけません。
前述の通り、お正月飾りの処分は松の内が過ぎた時に行います。
遅くとも1月15日までに片づけ、お焚き上げに持っていくか、塩をまいてお清めをしてから処分します。
鏡餅も年神様へのお供えであるため、正月飾りとともに年神様がお帰りになる松の内が明けて、鏡開きをするまでは食べたり下ろしたりしてはいけません。

終わりに
1年の始まりをお祝いする元旦、元日、正月。
お正月飾りやおせち料理1つとっても、きちんとした目的や役割があり、その意味を知ると背筋が伸びる思いがしませんか。
お正月を円満に過ごすためにも、お肉は控える、出費を抑えるなどすべての決まり事を守る必要はなく、楽しく過ごすことが大切です。
家事をいつも頑張っている、お母さんやお嫁さんなどにはゆっくり休んでもらうためにも、正月にできないことを年末のうちに済ませて、正月三が日はゆっくり過ごしましょう。
一年の計は元旦にあり、という言葉があるように、1年の始まりには事始めとして新しい何かを決めて行動してみることもおすすめですね。