
青々とした木々が芽吹き、心地よい風が吹く春から初夏。
千年の都といわれる京都が美しく華やぐ季節といえば桜や紅葉の季節ですが、新緑の季節も負けないくらい美しいです。
初夏の京都は社寺の庭園を彩る青もみじ(新緑)もまた人々を魅了し、日常に癒しと安らぎを与えてくれます。
京都の新緑は桜が散る4月中旬から5月下旬で、ゴールデンウィーク期間と重なり緑に触れる機会です。
今回は、初夏や連休の旅におすすめしたい京都の美しい新緑スポットを15ヶ所紹介します。
天龍寺などの有名どころではないけれど、一度は行っておきたい新緑の美しいスポットに絞っていますので初夏の自然に触れる旅の計画としてご参考になれば幸いです。
最後のほうには新緑ではないけれど、同じ時期に立ち寄りたい注目のスポットも紹介していますので最後までお読みください。
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竹林の小径

竹林の小径(こみち)は、野宮神社から天龍寺北門を通り大河内山荘近くまで続く約400メートルの道です。
竹林が続く美しい光景をテレビなどで見たことがある人も多いでしょう、手入れされた竹林が道の両脇に続く京都を代表する観光名所です。
木漏れ日に映える緑が美しい竹林の小径には、平安時代は貴族の別荘地だったといわれており優雅な雰囲気が漂っています。
空を覆う竹林が整然と立ち並ぶ道に時おり人力車が通ると、また和の風情がより一層に感じられます。
年間を通して多くの観光客が訪れており人通りが途切れませんが、天龍寺に行かれたら一度はこの竹林の小径を通って大河内山荘までいかれると昔の風景にいるような雰囲気が漂うでしょう。

竹林の小径へのアクセス
所在地 | 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町 |
交通アクセス | JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅より徒歩13分 嵐電嵐山本線「嵐山」駅より徒歩10分 阪急電車「嵐山」駅より徒歩21分 |
参考サイト | 竹林の小径 |
大河内山荘庭園

大河内山荘庭園は、昭和初期の時代劇などで知られる映画俳優の大河内傳次郎が別荘として造営した山荘と庭園です。
百人一首で有名な小倉山からの雄大な景色に魅せられ、30年をかけて造り上げたといわれています。
比叡山や保津峡、嵐山を背景に望める回遊式の壮大な借景庭園で、園内に点在する「中門」「大乗閣」「持仏堂」、茶室の「滴水庵」は登録有形文化財に指定されています。
筆者が初めて訪れた時は人の出入りがないほど観光客の姿が見られなかったため、この新緑を1人占めしている気分でした。
近年では海外での評価が高まり、外国人観光客に広く認識されているようです。
大河内傳次郎は知らないけれど

昭和の時代劇や映画で活躍された大河内傳次郎といわれてもピンとこないでしょう。
筆者にもこの説明はできないので割愛しますが、誰が庭園を造ったにしてもこの大河内山荘は他とは違う新緑の美しさを感じます。
なんといっても、山荘から見える山々の眺望には開放感があります。

この地を手に入れたのが34歳の時で64歳に亡くなられるまでの30年間、自ら設計し少しずつ作り上げていったというこだわりの強さをより感じることができます。
大河内山荘庭園には珍しい展望スポットもあり、嵐峡展望台からは嵐山と眼下に保津峡が広がります。
庭園山頂に位置する月香亭では正面に霊峰・比叡山と京都の市街地が一望でき、本当に絶景という言葉が合う風光明媚な場所です。
大河内山荘庭園へのアクセス

大河内山荘庭園は、前述した竹林の小径(こみち)の幻想的な風景を北へ向かって通り抜けた先に門が見えてきます。
時間がある人は途中で寄ってみることをおすすめしますが、ひと通り拝見するのに約1時間はかかります。
入山料はやや割高ですが、抹茶と茶菓子がセットになった金額のためほっこりとした時間を楽しむには安いでしょう。
所在地 | 京都市右京区嵯峨小倉山田渕山町8 |
交通アクセス | JR「京都」駅より市バス「野々宮」下車徒歩10分 JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅より徒歩15分 嵐電嵐山本線「嵐山」駅より徒歩15分 |
参考サイト | 大河内山荘庭園 |
常寂光寺

常寂光寺は、慶長年間(1596〜1614年)に日禛(にっしん)上人によって開創されました。
百人一首でも知られる、小倉山の中腹にある日蓮宗のお寺です。
初夏の常寂光寺は、映画やドラマのワンシーンにも使えそうな青々と茂る生命力に満ちた緑の世界が広がります。


青もみじに包まれた仁王門をくぐると息を呑むほどの自然の美しさに触れ、思わず深呼吸をしてしまうほどです。
しっかりと根を張る木々の生命力、緑と自然に囲まれた癒しのパワーをもらいながらゆっくりと散策を楽しみましょう。
嵐山駅から天龍寺を通ってこの常寂光寺に向かう途中に、空高く伸びるかの有名な竹林の小径がありますので通っていくことをおすすめします。
また竹林の小径を抜けると、大河内山荘の門が見えます。

常寂光寺へのアクセス
所在地 | 京都市右京区嵯峨小倉山3 |
交通アクセス | JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅より徒歩20分 |
公式サイト | 常寂光寺 |
祇王寺

京都嵯峨野にある祇王寺は、小さいながらも紅葉の名所として知られています。
平家物語にも登場するこじんまりとしたお寺で春から夏にかけてはオフシーズンですが、京都でも指折りの鮮やかな新緑の世界が広がります。
中でも多彩な緑の濃淡で庭園の景観を彩る苔が美しく、初夏より夏には青々とした景色が楽しめます。
平家物語という悲恋の舞台としての歴史をもつ祇王寺で、静かに物思いにふけってみませんか。

前述で紹介した常寂光寺に寄るなら、祇王寺まで足を延ばすことをおすすめします。
所在地 | 京都市右京区嵯峨鳥居本小坂町32 |
交通アクセス <電車利用の場合> | JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅より徒歩25分 嵐電嵐山本線「嵐山」駅より徒歩25分 |
交通アクセス <バス利用の場合> | 京都駅より市営バス28番(大覚寺行)で約50分、「嵯峨小学校前」下車徒歩17分 |
公式サイト | 祇王寺 |
北野天満宮

北野天満宮は、菅原道真公(菅公)を御祭神としておまつりする全国約1万2000社の天満宮・天神社の総本社です。
その敷地内に豊臣秀吉が水害や外敵への備えとして築いた御土居の一部を整備した「もみじ苑」があり、紅葉の名所として知られています。
近年では、新緑の美しいスポットとしても知られるようになりました。
約350本の青もみじが新緑に包まれ、陽光が射すと鮮やかさが増して清々しい情景が広がります。
季節ごとに様子が変化し、秋の紅葉とともに初夏の青もみじの清々しい美しさもまた格別です。
また、紙屋川に架かる朱塗りの鶯橋と青もみじが織りなすコントラストもきれいです。

北野天満宮の「もみじ苑」は、期間限定公開です。
青もみじの公開は4月上旬~6月下旬まで行われ、夜間特別拝観ライトアップも行われます。
詳しくは、北野天満宮公式サイトの最新情報を確認してください。
北野天満宮へのアクセス
所在地 | 京都市上京区馬喰町 |
交通アクセス | JR「京都」駅より市バス50系統で約35分、「北野天満宮前」下車すぐ 京都市営地下鉄「今出川」駅より市バス51・203系統で約15分、「北野天満宮前」下車すぐ |
公式サイト | 北野天満宮 |
京都府立植物園

鮮やかなグリーンの木々が高く立ち並び、風に揺れるたびにきれいなグラデーションを見せてくれます。
京都府立植物園が他の植物園と違うのは、四季折々の植物が豊富なことです。
ネモフィラやバラなど季節に合わせて咲くメジャーな植物よりは、カスミソウやアグロステンマ、ガウラなど他の植物園では見られない珍しい植物が多いのが特徴です。


ゴールデンウィーク前後には、ドレスを着てダンスしているような可愛らしいフクシア展も行われており品種が豊富に見られます。
また植物園を出て西側へまっすぐに進むと、橋が見えて鴨川が流れているため川べりに腰かけてせせらぎを聴きながら過ごすのもいいですね。

京都府立植物園へのアクセス
所在地 | 京都市左京区下鴨半木町 |
交通アクセス <電車利用の場合> | 地下鉄烏丸線「北山」駅より3番出口すぐ |
交通アクセス <バス利用の場合> | 京阪「出町柳」駅より市バス1系統で、「植物園前」下車徒歩約5分 |
公式サイト | 京都府立植物園 |
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上賀茂神社(賀茂別雷神社)

上賀茂神社(かみがもじんじゃ)は、正式名称が「賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)」で、京都市北区にある京都でもっとも古い神社です。
雷を分けるほどに強い力をもつ神とされる賀茂別雷大神を御祭神とし、古来より厄除・災難除け・必勝の神として信仰されています。
世界遺産と国宝、重要文化財にも

1994年(平成6年)には境内全域が世界遺産(世界文化遺産)「古都京都の文化財」の1つに登録され、うち2棟が国宝、34棟が重要文化財に指定されています。
本殿・拝殿前に建つ楼門は重要文化財の1つで、真っ赤に塗装された外観が美しく上賀茂神社を象徴する建造物です。
御祭神を祀る本殿は、神社建築の1つ「流造(ながれづくり)」の典型として国宝に指定されています。
社殿の壁に描かれた狛犬の絵「影狛(かげこま)」も必見で、江戸時代に日本絵画史上最大の画派「狩野派」によって描かれた貴重な絵です。
見どころは小川の新緑


上賀茂神社は緑あふれた広大な敷地にあり、見どころは楼門や本殿などの建造物だけでなく自然も豊かで、境内の自然そのものがパワースポットともいわれています。
境内を流れる「ならの小川」も注目で、川辺には木々が生い茂り美しい景観を作り出しています。
神社には珍しい神馬舎があり、神に仕える馬「神馬(しんめ)」が参拝者を迎えてくれることもあります。
筆者が訪ねた時は平日だったせいか出社していなくお目にかかれませんでしたが、日曜日と祝日、大きいお祭りのある日に出社しているそうです。
上賀茂神社は678年(白鳳6年)に神山である加茂山で支配していた賀茂氏一族が、賀茂別雷大神をお祀りしたことが創建の始まりといわれています。
以降、賀茂氏の氏神を祀る神社として賀茂御祖神社(下鴨神社)と合わせて賀茂社と呼ばれ親しまれてきました。
下鴨神社との関係
上賀茂神社と下鴨神社はもともとは1つの神社でしたが、奈良時代に分立したため御祭神も異なります。
下鴨神社の正式名称は「賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)」で、上賀茂神社に祭られている賀茂別雷大神の母親にあたる「玉依媛命(たまよりひめのみこと)」と、祖父にあたる「賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)」が御祭神です。
下鴨神社については、下記記事をご参考ください。
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紅葉の鮮やかな京都へ行こう!混雑を避けて秋を楽しむ穴場スポット10選
2025/8/24
上賀茂神社へのアクセス
所在地 | 京都市北区上賀茂本山339 |
交通アクセス | <電車利用の場合> 地下鉄烏丸線「北山」駅より徒歩約15分 <バス利用の場合> JR「京都」駅より市バス4系統(上賀茂神社行き)で、「上賀茂神社前」下車すぐ |
公式サイト | 上賀茂神社 |
詩仙堂

詩仙堂(しせんどう)は、徳川家康の元家臣であった江戸時代の文人・石川丈山が1641年に終の棲家として造営し晩年を過ごした山荘跡です。
創建当時は、でこぼこした土地に建てた住居という意味で「凹凸窠」(おうとつか)と呼んでいました。
その後、狩野派を代表する絵師・狩野探幽が描いた「中国三六詩仙像」(中国の詩家36人)を掲げる詩仙の間があることから「詩仙堂」と呼ばれるようになりました。

詩仙堂は庭園の美しいお寺で紅葉の名所ですが、新緑の青もみじも美しい人気スポットです。
想像するほど大きなお寺ではありませんが、別荘や隠れ家的な雰囲気漂うこじんまりとした広さのお寺なので畳の上に腰かけて静かに庭を眺める静けさがなんともいえません。
時おり、静寂の中でししおどし(添水・そうず)の音が響き渡り、風情があります。
石川丈山は庭師でもあり、ししおどしを最初に庭に取り入れた人物といわれており、丈山が手掛けた庭には必ずししおどしが設置されているのが特徴です。
詩仙堂へのアクセス
所在地 | 京都市左京区一乗寺門口町27 |
交通アクセス | <電車利用の場合> 叡山電鉄本線「出町柳」駅より「一乗寺駅」下車徒歩約15分 <バス利用の場合> JR「京都」駅より市バス5系統(銀閣寺・岩倉行き)で、「一乗寺下り松町」下車徒歩約7分 |
公式サイト | 詩仙堂 丈山寺 |
圓光寺

圓光寺(えんこうじ)は、臨済宗南禅寺派の寺院で本尊は千手観音です。
1601年(慶長6年)、徳川家康が足利学校の僧である閑室元佶を招いて伏見に建立し、圓光寺学校としたのが始まりで多くの僧や武士が入学しました。
運慶作と伝えられる千手観音像や元佶像をはじめ、円山応挙作の竹林図屏風、家康に与えられた出版の木活字などがあります。


庭園には洛北で最も古いとされる栖龍池(せいりゅうち)があり、竹林の中を歩くことができます。
裏手にある東照宮からは京都の街を一望でき、秋の紅葉名所としても有名です。
圓光寺へのアクセス
所在地 | 京都府京都市左京区一乗寺小谷町13 |
交通アクセス | <電車利用の場合> 叡山電鉄本線「出町柳」駅より「一乗寺駅」下車徒歩約15分 <バス利用の場合> JR「京都」駅より市バス5系統(銀閣寺・岩倉行き)で、「一乗寺下り松町」下車徒歩約7分 |
公式サイト | 瑞巌山 圓光寺 |
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源光庵

源光庵(げんこうあん)は、丸い窓と四角の窓が印象的でテレビなどで見たことがある人も多いのではないでしょうか。
CMにも使われており、多くの人々を惹きつける人気スポットです。
紅葉の名所としても知られていますが、新緑の季節はまた格別の美しさがあります。

本堂にある「悟りの窓」と名づけられた丸窓は、「禅と円通」の心を表し、円は大宇宙を表現しています。
四角の「迷いの窓」は「人間の生涯」を象徴し、生老病死の四苦八苦を表しています。
円型と角型の窓から見える緑の木々たちは、額縁の景色にも見えて心を見透かすような美しさです。
源光庵へのアクセス
所在地 | 京都府京都市北区鷹峯北鷹峯町47 |
交通アクセス | <電車利用の場合> 地下鉄烏丸線「北大路」駅より市バス北1系統(玄琢行き)で「鷹峯源光庵前」下車すぐ <バス利用の場合> JR「京都」駅より市バス6系統(玄琢行き)で「鷹峯源光庵前」下車すぐ |
公式サイト | 源光庵 |
高桐院

高桐院(こうとういん)は、京都の北区にある大寺院の1つである大徳寺の境内にある塔頭寺院です。
江戸時代の武将で茶人としても知られる細川忠興(三斎)が、父・細川幽斎の菩提寺として1601年(慶長6年)に創建したのが始まりです。
三斎は千利休の高弟とされる7人の武将を指す利休七哲の1人で、書院は利休の邸宅を移築したものといわれています。
その書院に続く茶室松向軒では、三斎のこだわりで壁や天井にも趣向が凝らされています。

庭園は「楓の庭」と称され、四季折々に変化に富んだ風情で参道とともに紅葉の名所として知られます。
しかし度重なる台風被害や修復工事などで、現在も拝観休止中とのことです。
筆者が訪れた時も庭園などを観賞できませんでしたが、22寺ある広い大徳寺の片隅にひっそりと佇む外観の奥ゆかしさがなんともいえない静寂さを感じさせます。
参道の石畳を歩いていくと広がる青々とした緑は、隣接する寺院とはまた違う清涼感があふれていました。
庭園の苔とのコントラストも美しいとのことで、チャンスがあればまた訪れたいものです。
高桐院へのアクセス
所在地 | 京都市北区紫野大徳寺町73-1 |
交通アクセス | <電車利用の場合> 京都市営地下鉄烏丸線「北大路」駅より徒歩20分 <バス利用の場合> JR「京都」駅より市バス1・205・206系統で「大徳寺」または「建勲神社前」下車徒歩約5分 |
参考サイト | 高桐院 |
三千院

三千院(さんぜんいん)は、京都市街の北東に位置する山中、かつては貴人や仏教修行者の隠棲の地として知られた大原の里にある天台宗の寺院で本尊は薬師如来です。
平安時代から皇族や貴族が住職を務めてきた門跡寺院で、三千院・妙法院・青蓮院を三門跡、そこに毘沙門堂・曼殊院を含めて五門跡と呼ばれています。
三千院はもともと比叡山にありましたが、時代の流れの中で何度も移転し明治維新後に現在の大原へ移ったという1200年の歴史をもつ格式高いお寺です。
三千院という名前の由来は、「一念三千(いちねんさんぜん)」という天台宗の教えからきており、心のわずかな働き(一念)の中にもこの世のあらゆる要素(三千)が備わっているという意味があります。
四季の豊かさを感じられる聚碧園や有清園、格式の高い宸殿・客殿、そして国宝を安置した重要文化財の往生極楽院などがあります。
聚碧園
聚碧園は、江戸時代初期、千利休から茶の湯を学んだとされる茶人の金森宗和が手がけた庭です。
透き通った綺麗な池と清流のせせらぎが美しく、縁側に座ってみる景色は木々と苔と飛び石と池が見事に調和された見ごたえのある庭園です。
有清園

有清園は、一面が緑のじゅうたんのような苔庭と美しい池、すらりと立つスギやヒノキが圧巻の景色をつくり出す池泉回遊式庭園です。
苔庭の中には石彫刻家の杉村孝氏の作った可愛らしい童地蔵が顔を覗かせており、美しい庭園に点在する愛らしい姿に心が温かくなります。
童地蔵は顔だけ覗かせていたり立っていたりと数種類あるため、じっくりと探してみてください。
往生極楽院
往生極楽院は、平安時代に建てられ、有清園にある瑠璃光庭の中にあります。
天台浄土教の大成者である恵心僧都と姉の安養尼が、父母の供養のために建てたとされています。
建物の中には国宝である本尊の木造阿弥陀如来及両脇侍坐像が安置されており、お堂に対して大きいため天井を舟底型に高くして納めています。
自然豊かな大原エリア
三千院のある大原エリアは山間の盆地であるため寒暖の差が大きく、それが功を奏して紅葉の色鮮やかさは格別となります。
聚碧園と有清園は紅葉シーズンには温かい色が追加されて、他の季節とはまた一味違う庭に変化します。
木々に色づく赤い葉はもちろん、散ったモミジの葉が深い緑の苔に生えて美しいです。
日本らしい柔らかな色の紅葉が計算された美しい庭に映えて、見る人の目を楽しませてくれるでしょう。
大原を散策する際はまず三千院を拝観して、その後に宝泉院や勝林寺、寂光院など周辺の寺院を巡るのがおすすめです。
三千院へのアクセス
所在地 | 京都府京都市左京区大原来迎院町540 |
交通アクセス | JR「京都」駅より京都バス17・18系統で、「大原」下車徒歩約10分 |
公式サイト | 三千院 |
宝泉院

三千院の参道の奥の突き当たりに天台宗の仏教が栄えた大原の中心的道場である勝林院(大原寺)本堂があり、宝泉院(ほうせんいん)はその中の僧坊として古く800年前よりあったお寺です。
宝泉院といえば、やはり「額縁庭園」でしょう。
柱や鴨居がまさに額縁のように見えるため、庭の景色がそのまま絵画になったような空間になります。


その主役となるのが樹齢約700年の五葉松で、まるで生命が宿っているかのように力強く今にも動き出しそうなほどの迫力があります。
抹茶をいただきながら庭を観賞し五葉松と向き合い過ごす時間は、最高のご褒美ともいえるでしよう。
宝泉院へのアクセス
所在地 | 京都市左京区大原勝林院町187 |
交通アクセス | JR「京都」駅より京都バス17・18系統で、「大原」下車徒歩約15分 |
公式サイト | 宝泉院 |
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勝林院

勝林院(しょうりんいん)は、大原・三千院の参道奥にある天台宗の寺院で本尊は阿弥陀如来です。
1013年(長和2年)に寂源法師が国家安穏のために建立し、日本音楽の源である天台声明の根本道場となりました。


法然上人が学僧と宗論した「大原問答」の舞台としても有名で、この問答の際に光を放ち法然が正しいということを示したことから、本尊の阿弥陀如来坐像は「証拠の阿弥陀」と呼ばれたそうです。
日本音楽の源流といわれる声明音律の発祥の地でもあり、来迎院と並んで大原二流の1つとされています。
勝林院へのアクセス
所在地 | 京都市左京区大原勝林院町187 |
交通アクセス | JR「京都」駅より京都バス17・18系統で、「大原」下車徒歩約12分 |
公式サイト | 魚山大原寺 勝林院 |
瑠璃光院

瑠璃光院(るりこういん)は、京都の中心地から離れた比叡山のふもとで八瀬という地にひっそりと佇む寺院です。
年に2回だけ特別拝観ができる新緑と紅葉が絶景のスポットで、京都内に多数ある新緑の名所がありますが、なぜわざわざ遠い瑠璃光院まで足を運ぶほど人気があるのでしょうか。
人気の秘密は逆さもみじ

その人気の秘密は新緑や紅葉が床に映るもみじ、写経用の大きな机に写り込むもみじの様子が、この世のものとは思えないほど美しい光景であるためです。
瑠璃光院が、一番美しくなるのが紅葉シーズンで、敷地内の紅葉が一斉に色づく様はまさに絶景です。
とはいえ、新緑もまた魅力で、廊下の板張りや写経用の机に写り込む緑は、息を飲むほどの美しい世界観があります。
上も下も鮮やかな新緑に包まれるこの光景が見られるのは約2か月間だけ、だからこそ幻で価値があるといわれています。

また、瑠璃光院の床に写るもみじを指す「床もみじ」も見ごたえがあります。
きれいに磨かれた廊下に写り込む鮮やかな緑を見ていると、時間を忘れてしまいそうなほどいつまでも眺めていたくなる美しさです。
そして、瑠璃光院には2つの庭があります。
臥龍の庭
臥龍の庭は、水と石で天に昇る龍を表した庭園です。
眺める人の心を解放し運気をアップさせるそうで、池に紅葉が浮かぶ光景も綺麗です。
瑠璃の庭
瑠璃の庭は、瑠璃光院のメインである庭で瑠璃色に輝く浄土の世界が表現されています。
数十種の苔に覆われた地面には小さなせせらぎが清らかに流れており、眺めていると心が洗われるような光景です。
紅葉も人気だけれど

この記事では新緑に焦点を当てていますが、時期によって表情を変える紅葉もきれいでしょう。
燃えるような赤から目の覚めるような橙や黄など色とりどりの紅葉が見られる時期もあり、その時にしか見られない鮮やかな絶景にきっと心まで奪われるはずです。
筆者は紅葉シーズンの京都へはここ数年行けていませんが、まだ見たことのない瑠璃光院の紅葉も一度は見てみたいものです。
ただ筆者はやはり明るく賑やかな雰囲気がある紅葉よりも、穏やかで落ち着いた雰囲気が漂う新緑・深緑の青紅葉が無音に近い静けさに囲まれて好きかもしれません。
時間帯や訪れる日によっても、青もみじの雰囲気はさまざまな表情があります。
きれいに磨かれた床に写り込む床もみじはもちろん、写経をしたりお茶をいただいたりゆっくりと風景を眺めたり、この特別拝観という期間限定でしか見られない絶景を堪能してみてはいかがでしょうか。
瑠璃光院の基本情報

瑠璃光院は、天武天皇が壬申の乱で怪我をした時に日本式蒸し風呂の原型である釜風呂で傷を癒し、以後平安貴族や武士たちに安らぎの郷として親しまれてきた場所です。
広大な敷地に240坪ある数寄屋造りで、景色の違う2つの庭をもつ瑠璃光院。
一面を楓紅葉に囲まれた静かな空間にいると、時の流れを忘れてしまいそうです。
一時期は一般公開されていましたが、現在では建物保全のため、春と秋の特別拝観を設けた期間限定での公開となっています。
瑠璃光院へのアクセス
近年、瑠璃光院へ訪れる観光客は増えつつあります。
筆者が訪れた時はまだ世界的に知られていなかったためか外国人観光客も見かけず、ゆっくり眺めていられましたが瑠璃光院へたどり着くまでがたいへんでした。
叡山電鉄は詩仙堂や圓光寺へも寄れるので、途中の駅からは乗車できないほど混雑しています。
どうしようか考えあぐねていた結果、やむを得ずに始発駅である出町柳駅に戻ってから向かうことができたのでコツともいえませんが、とにかく途中駅での乗車は無理だと思ったほうがよいでしょう。
瑠璃光院に駐車場はありませんのでご注意ください。
所在地 | 京都府京都市左京区上高野東山55 |
交通アクセス | 叡山電鉄本線「出町柳」駅より「八瀬比叡山口」駅下車徒歩12分 JR「京都」駅より京都バス17系統の大原行きで「八瀬駅」下車徒歩10分 |
公式サイト | 瑠璃光院 |
新緑以外の注目スポット
新緑からテーマが少しずれますが、同じ時期に新緑だけではない見どころのあるおすすめのスポットを紹介します。
愛宕念仏寺

愛宕念仏寺(おたぎねんぶつじ)は、もともとは766年の奈良時代に東山の地に建てられたと伝わる古刹です。
平安初期に鴨川の洪水により堂宇が流失し、天台宗の僧・千観内供が再興させて比叡山の末寺となりました。
本尊は「厄除千手観音」で、「千二百羅漢の寺」という別名としても呼ばれています。
千観内供は生涯念仏を絶やすことがなかったということから後に念仏上人といわれ、この寺も後に愛宕念仏寺と言われるようになりました。
現在の地に移ったのは大正時代で、境内には一般参拝者の手によって彫られた1200体の羅漢像が表情豊かに並び「癒しの寺」として訪れる人の心を和ませています。

どこを見渡しても立ち並ぶ石像、千二百羅漢像を目にしたら見覚えのある人も多いのではないでしょうか。
そう、「るろうに剣心」にも登場したアニメの聖地でもあります。
嵐山は人気エリアで多くの観光客で混雑し賑やかですが、北へ少し足を進めて静寂に包まれた世界に浸るのもおすすめです。
直接向かうにはアクセスがしづらい場所にありますが、愛宕山愛宕神社参道の山麓の入り口は「嵯峨野めぐりの始発点」として知られています。
筆者は早朝に市バスで神護寺まで向かい、神護寺から清滝川に沿って嵐山へ南下する途中に愛宕念仏寺があったので寄りました。
その後に嵐山エリアに入り、約9キロのトレイルです。
愛宕念仏寺の公式サイトによると、JR嵯峨駅・阪急嵐山駅から愛宕念仏寺までの長い上り坂をタクシーでいき、愛宕念仏寺 → 嵯峨野町並み保存地区 → 竹林 → 渡月橋 → 嵐山の下り坂ルートで歩く嵯峨野嵐山散策コースを推奨しています。
所在地 | 京都市右京区嵯峨鳥居本深谷町2-5 |
交通アクセス | JR「嵯峨嵐山」駅北口よりタクシーで5分(徒歩の場合は約60分) JR「京都」駅より京都バス62・72・92・94系統の清滝行きで「愛宕寺前」下車すぐ |
公式サイト | 愛宕念仏寺 |
松尾大社

松尾大社では、初夏にヤマブキという鮮やかな黄色の花が境内のあちこちに咲き誇ります。
関西随一の山吹の名所として知られる松尾大社ですが、その周辺はもともとヤマブキの自生地で境内には約3000株ものヤマブキが植えられています。
また松尾大社に咲くヤマブキは一重咲き・八重咲き・菊咲きの3種類が見られ、他ではなかなか見られない八重咲きが最も多く咲いています。
一重咲きのヤマブキは八重咲きより少し淡い黄色で丸みのある5枚の花びらですが、たくさんの八重咲きに混じって咲きますので目を凝らして探してみてください。
ちなみにヤマブキ(山吹)という名前は、山の斜面に群生する植物で風に吹かれると山が動いて見えることから名づけられたそうです。

例年、見頃となる4月下旬から5月初旬まで山吹まつりが行われ、川のほとりに咲き誇るヤマブキの群生を見ることができます。
ヤマブキには「気品」「崇高」といった花言葉があり、この黄金色に輝くヤマブキを観た人は心穏やかになれること間違いありません。
筆者は数年前に北の神護寺から散策をスタートし、清滝川沿いに南下してこの松尾大社をゴールに目指してトレイルしました。
約9キロある歩行距離のため天龍寺まできたら安心したのか疲れ果ててしまい、ここで終わろうかと思いましたが、松尾大社にきてよかったと思えるほどこの鮮やかなヤマブキに癒されました。

松尾大社は、701年(平安遷都以前)に創建されたと伝えられる由緒ある神社です。
お酒の神様を祀ることでも有名で全国の酒造業者からの信仰も厚く、各地から奉納されたたくさんの酒樽を見ることもできます。
ヤマブキといえば、その名の通り山吹色で黄色や橙色に近いイメージがあるでしょう。
しかし、松尾大社には珍しいシロヤマブキ(白山吹)も咲いていることで有名です。
このシロヤマブキは、重森三玲作の庭園「松風苑」という昭和を代表する現代庭園で観ることができます。

嵐山駅から徒歩30分ほどでいくこともできますが、阪急「松尾大社」駅を下車するとすぐに松尾大社の大鳥居(一の鳥居)が見えます。
1輪ずつ見ると小さなヤマブキですが、境内でいっせいに咲き誇るその景観は圧巻ですので桜の季節の後はヤマブキで春を感じてみてください。
所在地 | 京都市西京区嵐山宮町3 |
交通アクセス | 阪急嵐山線「松尾大社」駅下車すぐ JR「京都」駅より市バス・嵐山大覚寺行きで「松尾大社前」下車すぐ |
公式サイト | 松尾大社 |
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新緑が輝く初夏の京都まとめ

多くの植物が芽吹き始める初夏の爽やかな季節に、鮮やかな新緑が輝く京都。
新緑の京都を楽しめるピークは、4月中旬から5月下旬です。
環境や場所によっては6月下旬までと比較的長い期間に鑑賞できるため、ゴールデンウィークの連休が仕事だったり日にちをずらしての休みにもおすすめです。
緑あふれる森林や庭園で自然と触れ合いながら、ゆっくりとリフレッシュしてはいかがでしょうか。
また梅雨が明ける頃には新緑から深緑になり、8月下旬ごろまで緑の鮮やかな変化を楽しめます。
スマートフォンやパソコンなどと距離を置くデジタルデトックスも兼ねて、酷使している目を心身ともに休ませてあげましょう。
以下の記事では、自然や緑を大切にすることを趣旨としたみどりの日について紹介しています。
みどりの日ができた由来から現在の形になるまでの流れ、本当の意味も解説していますので木々の新芽が芽吹く新緑の季節に併せてご参考ください。