
夏になると池や沼などの濁った泥水の上で咲く蓮(ハス)。
泥の中で育ち美しく咲く様子が、仏教のあり方に通じるとして神聖な花としても知られている植物です。
今回は、蓮の咲き揃う観光スポットを京都と関東エリアに絞って紹介します。
蓮は約4日間しか咲かない性質だけに数少ないチャンスを逃さず、たくさん観られる穴場スポットとしてご参考になれば幸いです。
蓮の生態や名前の由来、品種などの基本特徴については下記記事をお読みください。
法金剛院(京都)

法金剛院(ほうこんごういん)は、極楽浄土をなぞらえた庭で名高く、通称「蓮の寺」とも呼ばれています。
極楽浄土には青・黄・赤・白の大きなハスの花が咲いていることにちなみ、4色のハスが法金剛院に集められています。
特別名勝に指定されている回遊式庭園には、大賀ハスや王子ハスなど約90品種もの蓮が色とりどりに次々と咲き揃います。

淡いピンクから濃いピンクに白や黄色など、さすがに品種名までは覚えられないほど蓮の種類が豊富です。
境内の真ん中にある蓮池では葉が育ちすぎて肝心の蓮を眺めながら写真を撮ろうとすると難しいですが、池以外にも境内には所狭しと蓮を植えた鉢が並んでいます。

蓮と同じ目線の高さにあるためじっくりと眺めることができ、お寺を背景に花を撮影することも可能です。
法金剛院の基本情報

法金剛院は、平安初期に右大臣であった清原夏野が山荘を建てた場所を双丘寺に改めて営まれた寺院です。
後に文徳天皇が大伽藍を建てて天安寺としたのを、1130年に待賢門院が復興し法金剛院としたといわれています。
住所 | 京都市右京区花園扇野町49 |
交通アクセス | JR嵯峨野線「花園」駅より徒歩3分 京都市営地下鉄烏丸線「丸太町」駅より市バス93系統で「花園扇野町」下車すぐ |
公式サイト | 法金剛院 |
三室戸寺(京都)

三室戸寺(みむろとじ)は、京都・宇治エリアの「あじさい寺」として有名ですが、蓮の名所でもあります。
本堂前には蓮園があり、大賀ハスや古代ハスから珍しい品種の大洒錦や陽山紅など約100種250鉢もある色とりどりの蓮が観られます。
蓮園は、蓮が見頃を迎える6月下旬から8月下旬まで開園されます。

なお紫陽花の咲くあじさい園は6月から7月初旬まで開園されるため、タイミングを合わせることができれば一緒に堪能することも可能です。
紫陽花や蓮だけでなくツツジやシャクナゲ、菖蒲など、とくに春から夏にかけての花が美しい寺院として観光客の人気を集めています。

当時、蓮の観賞だけが目的だった筆者は知らなかったのですが、境内にはさまざまな石像が置かれているそうです。
狛犬ならぬ「狛兎」をはじめ牛や蛇の像もあるそうで、三室戸寺にきたら探してみてください。
三室戸寺の基本情報

三室戸寺は、奈良時代に創建された古寺で光仁天皇が付近の渓流から現れたという観音像を祀ったことが始まりです。
天皇ゆかりの寺は「御室戸寺(みむろとじ)」と称され、その後に光仁・花山・白河の三天皇の離宮になったことから「御」の字を「三」に変え「三室戸寺」となりました。
住所 | 京都府宇治市莵道滋賀谷21 |
交通アクセス | 京阪電車「三室戸」駅より徒歩15分 |
公式サイト | 三室戸寺 |
古代蓮の里(埼玉)

古代蓮の里は、約1400年から3000年前のものとされる行田蓮(古代蓮)をはじめとする42種12万株もの蓮が植えられています。
行田蓮は行田市の花で市指定天然記念物でもあり、例年6月中旬から8月上旬にかけて見頃を迎え蓮池一面に咲きます。

この古代蓮の里ではもう1つの見どころがあり、7月中旬から10月中旬にかけて古代蓮会館にある展望室から田んぼアートを望むことができ圧巻です。
2008年に始まった行田市の田んぼアートは毎年多数のボランティアや参加者により田植えが行われ、オリジナルのデザインだけでなく映画やドラマ、ゲームなどともコラボレーションしています。
2015年には、面積が世界最大の田んぼアートとしてギネス世界記録に認定されました。

古代蓮の里の基本情報

古代蓮の里は、14ヘクタールの広大な公園に樹木や水生植物、草花など自然がたくさん見られます。
敷地内には、ジオラマや大スクリーン映像が楽しめる古代蓮会館やうどん店もありますので、1ヶ所で1日をゆっくり過ごすには最適でしょう。
住所 | 埼玉県行田市大字小針2375-1 |
交通アクセス | JR高崎線「行田」駅東口より行田市市内循環バスの観光拠点循環コースに乗り、古代蓮の里下車 秩父鉄道「行田市」駅南口より行田市市内循環バスの東循環コース右回りに乗り、古代蓮の里下車 |
公式サイト | 古代蓮の里 |
上野不忍池(東京)

東京都内で見る蓮の名所としてまず思い浮かぶのが、上野不忍池(うえのしのばずのいけ)という人も多いのではないでしょうか。
蓮の見頃時期には、朝早くから多くの人がカメラを持って訪れシャッターを押しています。
蓮池の範囲が広すぎるために数輪まとめて咲き揃うのを見る機会は少ないですが、遠めに見た時の風景は格別です。
とくに池の中に佇む弁天堂を背景に撮影をすると、インスタ映えにも最適です。
上野不忍池の基本情報

不忍池は「しのばずのいけ」と呼び、京成線の上野駅と繋がっている上野恩賜公園の南に位置し周囲は約2キロ、全体で約11万平方メートルあります。
東京湾の入り江だったのが、平安末期に海と分かれて沼となったといわれています。
住所 | 東京都台東区上野公園・池之端3 |
交通アクセス | 京成線「上野」駅より徒歩約3分/JR各線「上野」駅不忍口より徒歩約7分 |
公式サイト | 上野不忍池 |
薬師池公園(東京)

東京・町田にある薬師池公園(やくしいけこうえん)では、北端に約3000平方メートルあるハス田があり、例年7月下旬から8月上旬にかけて約120本もの大賀ハスが咲き誇ります。
大賀ハスは、千葉県の検見川にある遺跡で発見された2000年ほど前とされる蓮の実から発芽したものだといわれています。
千葉公園に移植された後、愛好者たちの手によって日本各地にも株分けされていきました。
薬師池公園の案内板によると、その株分けされた大賀ハスが相原町の円林寺と大蔵町の柏木常吉氏のところにあったのをさらに薬師池公園へ株分けされたものです。

大きく開いた蓮の花はもちろん美しいですが、薬師池公園のハスは葉の位置が高く花が低い位置にある印象で、葉の隙間に見え隠れする蕾もきれいです。
その場所で花開く姿は、陰のある控えめな美しさを感じます。

重なり合って茂る葉そのものも瑞々しい緑で、その葉の上で玉となった水滴にも風情があるでしょう。
見頃の時期に合わせて開催される観蓮会では、蓮の葉に注いだお酒を飲むイベントなどが行われます。
薬師池公園の基本情報

薬師池公園のある四季彩の杜は複数のエリアで構成されており、敷地内にはリス園もあるので小動物との触れ合いも楽しむのもおすすめです。
住所 | 東京都町田市野津田町3270 |
交通アクセス | 小田急線「町田」駅北口を出て、POPビル先にある21番のバス乗り場から本町田経由鶴川行きまたは本町田経由野津田車庫行きで「薬師池」または「薬師ヶ丘」下車すぐ |
公式サイト | 薬師池公園 |
千葉公園(千葉)

千葉公園では、大賀ハスが蓮華亭の前にあるハス池に群生し、多い時には700輪を超える蓮の花が咲きます。
千葉公園は大賀ハスの故郷

千葉公園は、古代ハスの発祥地であり故郷でもあるとされています。
1951年、千葉県検見川の遺跡を植物学者の大賀一郎博士らが発掘調査をしていたところへ蓮の実が3個発見され、そのうち1個の発芽に成功し翌年には見事な蓮の花を咲かせました。
2000年の眠りから目覚めた古代ハスは国内外で大きな話題を呼び、大賀博士の名をとって「大賀ハス」と呼ばれるようになりました。
大賀ハスは千葉市の天然記念物に指定され、さらに千葉市の花にもなり千葉公園には大賀蓮記念碑が建てられています。
千葉公園の大賀ハスは、前述で紹介した薬師池公園より開花時期が早いようで例年6月上旬には花開き、6月中旬から7月上旬に見頃を迎えます。
筆者が訪れた時にはほぼ終わりかけていてあまり多くの写真を撮れなかったため、いつかリベンジしたいと考えています。
千葉公園へのアクセス
住所 | 千葉県千葉市中央区弁天3-1-1 |
交通アクセス | 千葉モノレール「千葉公園」駅下車すぐ JR・京成線「千葉」駅より徒歩約10分 |
公式サイト | 千葉公園 |
京都と関東で見られる蓮スポットまとめ

全国的に見ると他にもおすすめしたいところはあるのですが、今回は蓮をできるだけ間近で見られるスポットに絞りました。
古くから広く親しまれ、仏教では神聖な花としても知られている蓮の花。
蓮は澄んだ水は好まず、むしろ泥水が濃いほど大きく美しい花を咲かせます。
泥の中から清らかな花を咲かせる蓮の花姿を見て、私たちも苦しみや困難を乗り越えていつか清く浄化されて美しい大輪の花を咲かせたいものですね。
以下の記事では、蓮の生態や仏教との関係、花言葉などの基本特徴について紹介しています。
古代ハスや大賀ハスについても解説していますので、併せてお読みください。