
ジメジメとした梅雨の時期、憂うつな気分に彩りを与えてくれる紫陽花(アジサイ)。
雨の日だからこそ魅力を発揮する紫陽花は、日本中で愛されています。
とくに東京都内から日帰りでも行ける鎌倉では、日本有数の紫陽花スポットとして人気があり国内外から訪れる多くの観光客で賑わいます。
今回は、鎌倉にある数多くの紫陽花スポットの中からとくにおすすめの場所を絞って紹介します。
鎌倉三大あじさい寺とも呼ばれる明月院・成就院・長谷寺も取り上げていますので、鎌倉での寄り道としてご参考になれば幸いです。
紫陽花の生態や名前の由来、品種などの基本特徴については、下記記事を併せてお読みください。
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梅雨のシンボル、紫陽花の意外と知らない生態とは?品種による特徴の違いと花言葉
2025/8/22
名月院(あじさい寺)

鎌倉の「あじさい寺」と呼ばれ、多くの人々に愛されている明月院(めいげついん)。
紫陽花の名所が数多くある鎌倉の中で、鎌倉三大あじさい寺の1つとされているほど代表的な寺です。
明月院における紫陽花の見頃時期は、例年で6月上旬から下旬です。
名月院ブルー

明月院で見られる紫陽花は、日本古来種のヒメアジサイでその数はなんと約2500株あります。
他では見ることのない鮮やかで深みのある青色に色づくことから、「明月院ブルー」という言葉も生まれるほど親しまれています。

境内の至るところで咲いている明月院の中で、撮影におすすめなポイントは山門下の参道沿いでしょう。
本堂に続く石段の両脇に美しい青色のヒメアジサイが咲き並び、山下門に続く階段の下から見上げるように撮影すると境内に導くかのように咲いている紫陽花を収められます。
明月院にもある悟りの窓

そんな明月院ですが、中でも観光客から注目を集めているのは本堂にある「悟りの窓」です。
悟りの窓といえば京都の源光庵が有名ですが、鎌倉の明月院でも見ることができます。
特徴はその形にこそありますが、円い形は禅の心と真理、そして宇宙までもを表しているのです。
丸窓は禅の悟りを意味する円相(円窓)に通じ、「己の心をうつす窓・自分自身を見直す窓」として知られています。
かなりの行列を覚悟しないといけませんが、その窓からは非公開の奥庭「後庭園」を望むことができ、季節によって色味が変化する景色は必見です。
後庭園について
後庭園は、期間限定で公開している時期があります。
タイミングが合えば拝観料とは別料金で散策することも可能ですので、詳しくは公式サイトで確認してください。
京都の源光庵については、下記記事をご参考ください。
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新緑の京都へ行こう!心身の疲れを癒す緑の美しいおすすめスポット15選
2025/8/24
月とウサギ

質実剛健な他の禅寺とは一味も二味も異なる魅力がある名月院ですが、実際にウサギが飼われているウサギ小屋があります。
ウサギが月に住んでお餅をつくようになった逸話が紹介されており、境内の至るところにウサギの置物が点在していますのでストーリーを想像してみるのも楽しいでしょう。
個人的には、入り口付近にウサギとカメが並んで橋の向こうを眺めている姿に笑顔がこぼれたほどです。
明月院の基本情報

明月院は、臨済宗建長寺派の寺院で、平安時代後期に山内首藤経俊が建てた「明月庵」が始まりで1160年(永暦元年)に平治の乱で戦死した父、山内首藤俊通を供養するために創建したとされています。
第二次世界大戦の戦争で荒れ果てた人々の心を慰めるために、明月院の住職が紫陽花を植え始めたことがきっかけで、1965年(昭和40年)頃から鎌倉の街や寺に紫陽花が増えていったとされています。
住所 | 神奈川県鎌倉市山ノ内189 |
交通アクセス | JR「北鎌倉」駅より徒歩10分 |
公式サイト | 明月院 |
名月院にきたら、北鎌倉駅の反対方向で徒歩圏にある建長寺や浄智寺によることもおすすめします。
建長寺
建長寺(けんちょうじ)は、1253年に創建された鎌倉五山の歴史ある寺院です。
国宝の梵鐘、重要文化財の三門、仏殿、法堂が建ち並び、境内は国の史跡に指定されています。
建長寺では、広い境内のあちらこちらで趣のある紫陽花を楽しめます。
ヤマアジサイが少なく、逆にセイヨウアジサイに代表される手毬型(テマリ)のアジサイが多い印象で、鎌倉で有数のセイヨウアジサイの名所です。
総門から徒歩15分ほど先にある半僧坊がおすすめで、さらに上ると展望台からの眺望も素晴らしいため体力に自信のある人はいってみるとよいでしょう。
住所 | 神奈川県鎌倉市山ノ内8 |
交通アクセス | JR「北鎌倉」駅より徒歩15分 |
公式サイト | 建長寺 |
浄智寺
浄智寺(じょうちじ)は、1281年頃の創建され本尊が木像三世仏坐像で県指定の重要文化財です。
阿弥陀・釈迦・弥勒の各如来は、それぞれ過去・現世・未来の三世に渡って人々の願いを聞き入れてくれる仏様といわれています。
石段、唐様の鐘楼門、茅葺の書院など自然と寂静に溶け込む禅寺で、境内は深い木々に囲まれています。
風情ある石造りの階段などで紫陽花の花が彩りを添える季節は、一層美しく感じられます。
浄智寺に向かってくると、石橋とその奥に見える総門と呼ばれる門が見えてきてその左側にガクアジサイが咲いています。
ガクアジサイと石橋の組み合わせが古都・鎌倉らしい景色に見えます。
総門をくぐり参道を進んだ先にある石段を上ると、受付があり有料拝観エリアに入りますが、鐘楼門までは横から無料で見ることができます。
鐘楼門の手前にも紫陽花が少し咲いており、最初の石橋や建築物との組み合わせが古都・鎌倉らしい景色に見えます。
住所 | 神奈川県鎌倉市山ノ内1402 |
交通アクセス | JR「北鎌倉」駅より徒歩8分 |
公式サイト | 浄智寺 |
極楽寺

極楽寺(ごくらくじ)は、1259年に建立された真言律宗の寺院です。
全盛期には金堂、講堂、十三重塔などの伽藍のほかに49の塔頭を備えた大寺院でしたが、戦や火災、地震などにより今では山門と本堂を残すのみとなっています。
紫陽花の数は多くありませんが、開創した僧行基が「極楽へゆく人の乗る紫の雲の色なるアジサイの花」と詠んだことにちなんでいることからピンク寄りの紫が多い印象があります。

趣のある茅葺き屋根の渋い門構えと紫陽花の組み合わせが和の風情で、門前を走る江ノ電との組み合わせも素敵です。
住所 | 鎌倉市極楽寺3-6-7 |
交通アクセス | 江ノ島電鉄「極楽寺」駅より徒歩2分 |
参考サイト | 極楽寺 |
成就院
鎌倉・長谷エリアのあじさい寺といえば成就院(じょうじゅいん)も有名で、鎌倉三大あじさい寺の1つです。
極楽寺に向かう山の上に位置するため、由比ヶ浜を背景に紫陽花を楽しめる絶景スポットとして6月には大勢の観光客でにぎわいます。
しかし2015年以降は参道工事のため、以前のような紫陽花の絶景は見られなくなっています。
成就院の現在

2017年時点で改修工事は完了しましたが、残念ながら2019年に創建800年を迎えたのを機に多くの紫陽花が東日本大震災被災地の宮城県南三陸町に移植されました。
成就院参道には宮城県の花である萩が植えられ以前のような一面アジサイの絶景風景は見られません。
しかし紫陽花は100株ほど残されているそうで、見頃になると由比ヶ浜を背景に美しい姿を確認することができます。
成就院の本尊は縁結び不動明王で恋愛成就の寺ともいわれるほど有名ですが、男女の縁のみならず仕事の縁や人間関係の縁にもご利益があるそうです。
煩悩の数と同じ108の階段を上った山頂からは、由比ヶ浜が一望できます。
鎌倉で人気のパワースポットになっていますので、紫陽花を見にいくだけではなく縁結びを祈願するのに寄ってみるのもいいでしょう。
成就院の当時風景

過去の記録になりますが、当時賑わっていた成就院あじさいロードの写真を掲載しておきます。
紫陽花越しに、由比ヶ浜の雑踏が嘘のように静かに見える絶景スポットです。

参道の両側を埋め尽くす紫陽花は262株で、般若心経の文字と同じ数とされています。
かつての参道の景色が頭にあると少々寂しい気もしますが、東日本大震災の記憶を消さないための計らいですのでしっかり心に受け止めたいと思います。
住所 | 鎌倉市極楽寺1-1-5 |
交通アクセス | 江ノ島電鉄「極楽寺」駅より徒歩3分 |
公式サイト | 成就院 |
極楽寺と成就院にいったら極楽寺駅に戻らずに、長谷寺まで足を延ばすことをおすすめします。
極楽寺駅から長谷寺のある長谷駅までは、混雑する電車に乗らなくても徒歩でいける距離で所要時間は約20分ほどです。
長谷寺(長谷観音)

長谷寺(はせでら)は、数ある鎌倉の寺院の中でも圧倒的な規模で紫陽花が咲くことで有名な寺院です。
鎌倉三大あじさい寺の1つともされ、明月院と肩を並べるほどの人気があります。
別名で「花の御寺(みてら)」とも呼ばれており、1年を通じて美しい花々が絶えず咲き誇ります。
一面のアジサイが広がる散策路

境内にあるあじさい路(観音山あじさい路)は順路が整っており、眺望散策路を上がっていくと色とりどりの紫陽花とともに相模湾を一望できます。
相模湾の眺望と共に、梅雨に映える40種類2500株を超える紫陽花が織り成すその風情は鎌倉でも有数の景勝地です。

眺望散策路の上段から真下を見下ろすと、敬蔵(輪蔵)を囲むように咲き誇る紫陽花も風情があります。
またあじさい路を下り出口となる敬蔵からも見上げると、観音山の裾野から広がる竹林とともに一面の紫陽花が広がり、360度に見渡せる絶景は圧巻で一番の撮影スポットです。
鎌倉の海や街並みが望める見晴台の近くには、お食事処「海光庵」がありますのでランチの時間に合わせて訪れるのもおすすめです。
あじさい路は別途入場券が必要

あじさい路は5月から6月にかけて有料となり、拝観券とは別に「あじさい路入場券」(小学生以上500円)が必要になります。
あじさい路が混雑しそうな場合には入園制限を設け、あじさい路入場券に記載されている番号順で案内される仕組みです。
またインターネットで事前のWeb予約も行われており、日時指定の「拝観・あじさい鑑賞セット券」を購入した人は当日優先的に紫陽花を鑑賞できます。
なお当日券のみとなる日もありますので、詳しくは公式サイトを確認してください。
筆者が訪れた時にもあじさい路の入場券があり無料でしたが、当時から長谷寺の紫陽花がいかに人気かわかりますね。
待ち時間がある場合に、一度外へ出ることも可能です。
ただし17時前までに戻る必要があり、その時にあじさい入場券の番号が過ぎていればすぐにあじさい路へ入れます。
長谷寺の混雑状況も、公式サイトでチェックできます。
他にも見どころあり

あじさい路入り口までは、約80段の階段を登る必要があります。
またあじさい路内では約130段の階段がありいずれもスロープなどがないため、体力に自信がない人はあじさい路以外にも境内各所で紫陽花を観賞できます。
境内には長谷寺で命名された新種の「長谷の潮騒」「長谷の祈り」も咲いており、独特の形状をしているため見逃さないようにしましょう。

また境内の3ヶ所に良縁地蔵が置かれていますので、ぜひ一緒に探してみてください。
いかにも話しかけてくるような、優しい微笑みに癒されます。
長谷寺の基本情報
長谷寺は736年の奈良時代に創建したと伝えられており、創建当初は真言律宗の寺だったのが江戸初期に浄土宗となっています。
もともとは新長谷寺といい、創建年も奈良の長谷寺にならったといわれています。
実際の創建年次は不明ですが、梵鐘に1264年との銘が刻まれていることから鎌倉時代後期に長谷寺があったことは間違いないとされています。
住所 | 神奈川県鎌倉市長谷3-11-2 |
交通アクセス | 江ノ島電鉄「長谷」駅より徒歩約5分 |
公式サイト | 長谷寺 |
鎌倉散策ついでの紫陽花巡りまとめ

鎌倉の紫陽花が美しく開花する見頃時期は、例年6月上旬から7月上旬ごろです。
ただし気候や環境によって前後することもあるため、各公式サイトやSNSでチェックしておくとよいでしょう。
1日では回れないほど、鎌倉には名所がたくさんあります。
日帰りでも十分楽しめますが、筆者は2日間に分けていってきても足りないほどでした。
紫陽花スポットに限らず、鎌倉の有名どころをとにかく堪能したい人は近くでホテル・宿をとることをおすすめします。

鎌倉駅周辺の街並み、足を延ばせば江の島が望める由比ヶ浜、あの人気漫画「スラムダンク」にも登場する鎌倉高校前駅なども近くにありますので計画的に梅雨の旅を楽しんではいかがでしょうか。
雨が降る日にこそ映える紫陽花は、梅雨に沈みがちな気分を爽やかにしてくれるでしょう。
以下の記事では、鎌倉以外で見られる関東の紫陽花スポットを紹介しています。
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2025/8/22