
馴染みのない人が聞くと土曜の丑の日と勘違いされがちな、土用の丑の日。
スーパーや百貨店で「土用の丑の日」と書かれた張り紙と一緒に、ウナギが並ぶのを見たことがある人も多いでしょう。
そもそも土用の丑の日とは何の日を指すのか。
土用や丑の日とはどういう意味なのか。
土用の丑の日がくるとなぜウナギを食べるのか。
今回は、そんな疑問に答えるべく土用の丑の日という意味や時期、ウナギを食べる習慣となった由来を解説します。
昔の人がウナギ以外で食べていた身体に嬉しい食材も紹介しますので、暑い夏を乗り切るご参考になれば幸いです。
他の年中行事・イベントについては、下記記事でまとめていますので併せてご参考ください。
土用の丑の日とは
土用の丑の日とは何を意味するのか、まずは「土用」と「丑の日」から説明します。
「土用」の意味

土用とは、春・夏・秋・冬が到来する直前、つまり立春・立夏・立秋・立冬の直前の約18日間の期間を指します。
紀元前770年頃の古代中国がルーツで、中国古来の陰陽五行説である五行思想は「木・火・土・金・水」の要素からなりそれぞれの季節に当てはめられていました。
春は、草木が芽吹く「木」
夏は、1年で最も暑い「火」
秋は、実りの「金」
冬は、木枯らしの吹く静かな「水」
それぞれの要素を季節ごとに当てはめていくと「土」が1つ残ります。
その余った土を季節の節目に割り当てて「土用」と名づけられているのです。
ちなみに立春は2月4日頃、立夏は5月5日頃、立秋は8月7日頃、立冬は11月7日頃のため、おおよそ季節の変わり目であることがわかるでしょう。
立春前が「冬の土用」、立夏前が「春の土用」、立秋前が「夏の土用」、立冬前が「秋の土用」で分けられます。
土用の区分 | 季節の目安(時期) | 土用入りの時期 |
---|---|---|
冬の土用 | 立春(2月4日頃) | 1月17日頃~ |
春の土用 | 立夏(5月5日頃) | 4月17日頃~ |
夏の土用 | 立秋(8月7日頃) | 7月20日頃~ |
秋の土用 | 立冬(11月7日頃) | 10月20日頃~ |
そして土用にあたる日が1年に4回あるということは、土用の丑の日も最低でも年に4回あるということになります。
「丑の日」の意味

丑の日の「丑」は、十二支(干支)の丑(うし)のことです。
日本や中国などではご存知の通り、今年は丑年などというふうにその年を干支で表すように年単位で繰り返されています。
十二支=子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥
ところが昔の人は年単位だけでなく、日付も十二支(子・丑・寅・卯…)で割り当てていました。
つまり12年周期で「丑年」がやってくるのと同じように、12日ごとに「丑の日」も回ってくるわけです。
「土用の丑の日」という意味

前述の「土用」と「丑の日」の意味を組み合わせると、「土用の丑の日」は年に4回くる土用の約18日間に訪れる丑の日を指しています。
つまり土用の丑の日とは、土用の期間内にくる丑の日という意味です。
土用の丑の日といえば夏のイメージが強いですが、土用が立春・立夏・立秋・立冬それぞれの期間にあり、丑の日で日付が異なるため土用の丑の日も毎年日付が変わり、年に数回程度やってくるのです。
わかりやすくいうと、土用の丑の日は季節の変わり目ともいえます。
ちなみに、土用の丑の日と土曜日とは関係がありませんので覚えておきましょう。
土用の丑の日カレンダー

前述通り、土用の丑の日は立春・立夏・立秋・立冬それぞれにあり、それとは別に丑の日が12日ごとに巡ってくるため毎年日付が異なります。
各年にあたる土用の丑の日を見てみると、必ずしも同じ日ではないことと夏だけではないことがわかります。
2025年の土用の丑の日と今後5年間にわたる土用の丑の日を一覧にしますので、参考にしてください。
2025年の土用の丑の日
冬土用 | 1月20日、2月1日 |
春土用 | 4月26日 |
夏土用 | 7月19日、7月31日 |
秋土用 | 10月23日、11月4日 |
2026年の土用の丑の日
冬土用 | 1月27日 |
春土用 | 4月21日、5月3日 |
夏土用 | 7月26日 |
秋土用 | 10月30日 |
2027年の土用の丑の日
冬土用 | 1月22日、2月3日 |
春土用 | 4月28日 |
夏土用 | 7月21日、8月2日 |
秋土用 | 10月25日、11月6日 |
2028年の土用の丑の日
冬土用 | 1月23日 |
春土用 | 4月19日、5月1日 |
夏土用 | 7月27日 |
秋土用 | 10月22日、11月3日 |
2029年の土用の丑の日
冬土用 | 1月23日 |
春土用 | 4月17日、4月29日 |
夏土用 | 7月22日、8月3日 |
秋土用 | 10月26日 |
2030年の土用の丑の日
冬土用 | 1月18日、1月30日 |
春土用 | 4月24日 |
夏土用 | 7月29日 |
秋土用 | 10月21日、11月2日 |
土用の丑の日は年ごとに日付が異なりますが、夏だけではなく1年に数回あるためおおよそで1月、4月、7月、10月頃にあると覚えやすいでしょう。
一の丑、二の丑について
また土用の期間は約18日間で丑の日が12日周期でやってきますが、年によっては1つの季節に土用の丑の日が2回巡ってくることがあります。
その場合に、最初の1回目に訪れる土用の丑の日を「一の丑」、2回目に訪れる土用の丑の日を「二の丑」と呼びます。
例えば2027年の土用の丑の日でいう一の丑と二の丑は、以下の通りです。
冬土用 | 一の丑=1月22日、二の丑=2月3日 |
春土用 | 一の丑=4月28日 |
夏土用 | 一の丑=7月21日、二の丑=8月2日 |
秋土用 | 一の丑=10月25日、二の丑=11月6日 |
土用の丑の日にウナギを食べる理由
土用の丑の日といえばウナギを食べることが定着していますが、そういう習慣になったのはなぜでしょうか。
夏とウナギの関係

夏バテに食べるといえばウナギですが、なぜそういうイメージがついたのでしょうか。
日本最古の歌集とされる万葉集にはウナギを詠んだ歌が残されており、奈良時代にはウナギが夏バテに効くという認識があったとされています。
石麻呂に 吾れもの申す 夏痩せに
よしといふものぞ むなぎとり食(め)せ
この歌は夏痩せにはむなぎ(ウナギ)を食べるとよいと、大伴家持が石麻呂に勧めている和歌です。
当時からすでにウナギは健康食として認知されており、体調を崩しやすい夏にはウナギを食べて栄養をたっぷり摂ろうという考えがあったのです。
土用の丑の日にウナギを食べるのも、この時期が体調を崩しやすい季節の変わり目にあたるため合理的ともいえます。
実際ウナギにはビタミンAやビタミンB群など、疲労回復や食欲増進に効果的な成分が多く含まれているため夏バテ防止にはピッタリの食材といえるでしょう。
ウナギを食べる習慣ができた由来

土用の丑の日にウナギを食べる習慣が一般にも広まったのは、1700年代後半の江戸時代でした。
多くの言い伝えがある中で有力なのは、蘭学者の平賀源内による発案です。
ウナギは本来秋と冬が旬であるため、夏のウナギは売り上げが落ちる食材でした。
夏に売れなくて困っている鰻屋から相談を受けた平賀源内が、店先に「本日土用の丑の日」といった張り紙を出すように提案したことが始まりといわれています。
この張り紙の効果で鰻屋が大繁盛したために他の鰻屋にも評判が広まり真似するようになり、土用の丑の日にウナギを売ることが当たり前になっていったのです。
その後もウナギの売り上げを伸ばすために鰻屋が宣伝していったことで、土用の丑の日にウナギを食べるという風習が今日に至るまで引き継がれています。
余談ですが、この「本日土用の丑の日」が日本初のコピーライティングかもしれないといわれているため、当時からマーケティングが行われていたのだと思うとすごいことですよね。
ウナギの主な栄養素と効能

梅雨が終わると一気に気温が高くなる夏は、とくに体調を崩しやすく食欲不振になる人が増えるため、精のつくウナギを食べる風習が定着しています。
そんなウナギにはどんな栄養成分があるのか、どういった効能があるのかをまとめましたので参考にしてください。
免疫力を高めるビタミンA
ウナギに含まれるビタミンAは、成人が1日に必要な摂取量の2倍に相当し、抗酸化作用が強く免疫力を高める効果があります。
また皮膚や粘膜の新陳代謝を促進する働きがあり、美肌を保つだけではなく疲れ目や視力回復にも期待できます。
疲労回復に役立つビタミンB群
ウナギには疲労回復に役立つビタミンB群を含んでおり、とくにビタミンB1・B2が豊富です。
ビタミンB1は、糖質の代謝を促しながらエネルギーに変えて食欲不振や疲れを回復させます。
ビタミンB2は、脂質をエネルギーに変えて細胞の再生を促すことで老化の原因となる体内の酸化物質を分解するため、皮膚や髪などを健康に保ちます。
血管を健康に保つビタミンE
ビタミンEには抗酸化作用やバリア機能があり、肌トラブルといったとくに女性の悩みの多くを解決してくれます。
またウナギのビタミンEを摂取することで血行促進作用が働き、冷え性など身体のさまざまな老化を防ぎます。
その他の栄養素まとめ

上記以外にもウナギには筋肉や臓器など体の機能を調節するタンパク質、オメガ3系脂肪酸と呼ばれるDHA・EPAも含まれています。
簡潔にまとめるとウナギは基本的にビタミン群が豊富で、疲労回復だけでなく病気の予防や身体機能の維持、丈夫な骨を維持し代謝を促進します。
鰻屋は繁華街に構えるお店や海に近い漁業の盛んな町にあるため、身近にウナギ専門のお店がないことが多いですが、現代ではスーパーやデパートのほかネットオンライン注文で取り寄せることができるため土用の丑の日を気軽に楽しめます。
また土用の丑の日だけでなく、母の日や父の日、敬老の日などのギフトにも喜ばれるでしょう。
上記のウナギは、楽天市場のうなぎ部門で13年連続グルメ大賞を受賞している「国産うなぎ蒲焼き3種セット」です。
特大ウナギの長焼きに蒲焼き、ひつまぶしまで、いろんな食べ方を楽しめるウナギの蒲焼きが3種類入っています。
ウナギ以外の身体に嬉しい食材
前述の通り、鰻屋の商売繁盛を助けたことがウナギを食べる習慣の始まりです。
しかし土用の丑の日に食べるのは、ウナギと決まっているわけではありません。
昔の人は季節の変わり目である土用の体調を崩しやすい時に、ウナギ以外で「う」のつくものを食べていました。
つまり、丑(うし)の日にちなんだ「う」です。
とくに夏バテしやすい時期には精がつくウナギはもちろん、疲労回復効果のある梅干しや身体の老化を防ぐ効果が瓜などが食べられていました。
他にも例を挙げるとうどんや牛肉(ウシ)、馬肉(ウマ)などがあり、いずれも栄養価が高く食欲がなくても食べやすい食材が多いのがわかります。
梅干し(ウメ)

ウメは、豊富に含まれるクエン酸により疲労回復に効果があります。
瓜(ウリ)

ウリは、ビタミンCの抗酸化作用で身体の酸化や血管の老化を防ぐ効果があります。
うどん

うどんの炭水化物は、糖質の割合が比較的高めで胃腸に優しく消化にいいです。
牛肉(ウシ)

牛肉は、タンパク質が免疫に関わる酵素の材料となり免疫力の向上が期待できます。
馬肉(ウマ)

馬肉には、体内では合成することができない鉄分が多く貧血や冷え性に効果があります。
こうしてみると「う」のつく食材は意外にも栄養素があり、身体に優しいさっぱりとした味のするものが多いですね。
食べて元気をつけようというのは、時代に関係なく共通といえるでしょう。
季節の変わり目=土用の丑の日まとめ

土用の丑の日は夏だけではなく、季節の変わり目にあたる土用の期間とその期間内にある丑の日にあたる日でした。
いまや生活の中で習慣となった土用の丑の日に食べるウナギも、意味や由来などを知ると面白いですね。
鰻屋さんに並ぶのもよしデパートで高級ウナギを奮発するのもよし、自宅に取り寄せて本格ウナギを楽しむのもよし。
今年の夏も例年以上に厳しい暑さになりそうで夏バテもしやすいため、ウナギでパワーをつけて乗り切りましょう。
またお盆の帰省や敬老の日などに合わせて、両親や祖父母に元気を保ってもらえるようウナギ料理で精をつけてもらうのもいかがでしょうか。