若者が大人の仲間入りを果たす、成人の日。
全国各地で行われる成人式は、新成人にとって人生に1度の一大イベントです。
しかし成人の日は何がきっかけで始まったのか、どのような儀式があるのか。
成人式にはなぜ振袖や羽織袴を身に着けるのかなど詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
元服の儀といって奈良時代から大人の仲間入りをする儀式があり、小児の髪型を改め冠を被せる習わしがあったことが始まりです。
成人式で振袖などの礼装をするのは、大人への階段を上るという意識をもつ意味からきています。
今回は成人の日ができた由来から現在の成人式ができた経緯、振袖や羽織袴を着る理由・意味など成人の日にまつわる雑学を紹介します。
18歳になったらできること・20歳までできないこと、成年年齢の引き下げに伴う注意点も解説しますのでご参考になれば幸いです。
他の年中行事・イベントについては、下記記事でまとめていますので併せてご参考ください。
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成人の日とは
成人の日は、社会的に大人になる青年を祝う日です。
国民の祝日に関する法律(祝日法)では、「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」ことを趣旨としています。
1999年(平成11年)までは1月15日で固定されていましたが、ハッピーマンデー制度により、1月の第2月曜日に変更されました。
またこれまで満20歳になった若者が対象でしたが、2022年に施行された法改正で成年年齢が引き下げられたため、以降は18歳からが新成人となっています。
当日に行われる成人式は、新成人の門出を祝福するとともに新成人が1人の社会人として責任や義務を背負う自覚を促すために開催される行事です。
成人の日ができた起源
かつて成人の日だった1月15日は、旧暦で小正月(こしょうがつ)と呼ばれ奈良時代から「元服の儀」が行われていたことが始まりです。
元服の儀は大人の仲間入りをする儀式で、小児の髪型を改め冠を被せ幼名を廃して元服名を名乗る習わしです。
小正月については、下記記事をご参考ください。
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成人の日が日付移動した理由
成人の日は、1月の第2月曜日で毎年日付が変わります。
しかし、成人の日はもともと1月15日だったことをご存知でしょうか。
かつての成人の日が1月15日だったのは、元服の儀を新年が明けて最初にやってくる満月に行う奈良時代からの風習に由来しています。
しかし現代の新暦では1月15日が必ずしも満月とは限らないこともあり、2000年(平成12年)の祝日法改正で導入されたハッピーマンデー制度により、成人の日は1月の第2月曜日へ変更になりました。
ハッピーマンデー制度とは、祝日の一部を月曜日に移し土曜日から3連休にすることで新たに祝日を設けなくても旅行などの需要を生み出せることを趣旨としたものです。
ハッピーマンデーについては、下記記事で解説していますのでご参考ください。
現在の成人の日
成人の日は、もともと満20歳になった新成人を祝い、励ます目的で制定された国民の祝日です。
この日を含む連休には、全国の各市町村で新成人を招いて成人式が行われます。
一部の地域では、豪雪の影響や帰省しやすい時期などを考慮して大型連休中やお盆に行われることもあります。
そして2022年4月に、民法の一部を改正する法律により成年年齢が18歳に引き下げられました。
それに伴い、2023年1月には恒例行事となっていた「成人式」が「二十歳のつどい」などに名称を変更して式典を開催する自治体が多くなっています。
成人式の由来や意味
成人式は、前述の通り奈良時代から行われていた元服の儀が起源です。
では、当時の儀式がどういう経緯で現在の成人式になったのでしょうか。
成人式の始まり
成人式の原型は奈良時代に遡り、男性は元服(げんぷく)、女性は裳着(もぎ)といわれる儀式が行われていたことが始まりです。
これは古代中国で行われていた成年の通過儀礼「冠礼」が、日本に伝わって変化したものです。
元服は、数え年で12~16歳の男性の髪を結い、冠(烏帽子)をつけることでお祝いします。
裳着は、配偶者が決まった際などに行われていた女性成年の通過儀礼で、服装や髪型を女児から大人の正装へ整えていました。
江戸時代以降には女性成年の通過儀礼も元服と呼ばれるようになり、18歳~20歳ごろに行われていたとされています。
現在の成人式になった由来
成人式が現在の形となったのは、1946年(昭和21年)に埼玉県蕨市で開催された「青年祭」がきっかけです。
第二次世界大戦の敗戦後で失意の中にあった若者たちを励ますために、地元の青年団が開幕式典として「成年式」を行いました。
この式典が後に全国各地の自治体から注目を浴び、1948年(昭和23年)には成人の日を国民の祝日として正式に制定されました。
近年の成人式では、新成人の門出を祝福し社会の一員として責任や義務を背負う自覚を促すために開催され、市長などから新成人へ向けて祝いの言葉や記念品が贈呈されることが一般的です。
ちなみに埼玉県蕨市では、現在も成人式ではなく成年式という名で行われているそうです。
こんな成人式もある?
成人式は、一般的に各市町村が管理する公民館などで式典を行いますが、一生に1度のイベントでもあるのにかかわらず準備や費用がかかるために出席率が低下している自治体も多くなっているそうです。
そんな成人式への出席を促すため、一部では成人式を行う会場に趣向を凝らすなど独特の成人式を行っている自治体もあります。
ディズニーランドで成人式(千葉県浦安市)
千葉県浦安市の成人式は、ディズニーランドで行われています。
ディズニーのキャラクターたちによるショーなどの演出もあり、一生に1度の思い出作りには最高ですね。
島全体で行われる成人式(石垣島)
沖縄県の石垣島で行われる成人式は、新成人の数も少ないため島全体で盛大に行われます。
年末年始の帰省に合わせて一足早い成人式が行われることが一般的で、アットホームな雰囲気の中で催されます。
沖縄出身のアーティストがサプライズで演奏してくれることもあり、ほっこりする成人式です。
真夏に行われる成人式
成人式は、祝日法で定められた1月の第2月曜日に行うことが一般的ですが、寒い季節に成人式を行うには厳しい地方もあります。
とくに豪雪地帯ともいわれる青森や秋田などでは、夏休みのお盆期間に合わせて8月に成人式が行われています。
成人式で羽織袴や振袖を着る理由・意味
成人式の会場では、新成人となった男性は羽織袴、女性が振袖を身に着ける姿をよく目にします。
今では風物詩となった新成人の装いですが、なぜ成人式で羽織袴や振袖を身に着けるのでしょうか。
男性が羽織袴を着る意味・由来
羽織袴は、もともとは武家の準礼装だったといわれており、その後に庶民の礼装となり、現在では和装の婚礼でも使われています。
紋付きの羽織袴は男性和服の礼装で、成人式や卒業式など改まった場にふさわしい装いです。
きちんとした正礼装・準礼装とみなされる袴姿で、羽織や下の着物には必ず紋が入り「紋服(もんふく)」と呼ばれます。
ちなみに袴や羽織を着用しない状態を「着流し」と呼び、同じ着物を着ていても羽織や袴を身に着けている状態よりも格が下がり普段着としての扱いになります。
女性が振袖を着る意味・理由
女性が成人式で振袖を着るのは、大人への階段を上るという意識をもつという意味があります。
振袖は未婚女性が身に着ける衣装の中でも最も格式が高い第一礼装とされているため、成人式には最適な衣装だといえます。
現代では、既婚女性でも振袖を着用することに問題はありません。
また日本では昔から「振る」あるいは「揺れ」という動きあるものに、厄除けや魔除けの力があると考えられてきました。
そこから振袖という着物そのものには厄除けの意味があり、成人を迎える女性の厄を払い幸せを願って着用されるようになったことも理由の1つです。
振袖の色・柄に込められた意味
振袖という言葉は、袖丈を長くして袖と見頃を縫いつけないことでできる、振りのある着物ということが由来です。
そんな振袖にあしらわれている色や柄、花の種類にも実は意味があります。
色に込められた意味
振袖に取り入れられることの多い色のもつ意味は、以下の通りです。
赤色
不動の人気を誇る赤系は、お祝い事に赤飯を炊いたり入学式や卒業式で紅白幕が使われたりすることからもわかるように古くから縁起のいい色とされています。
桃色
ピンク系の色には若々しさや優しさをイメージし、贈り物のリボンや包装紙に使われることが多いことから、感謝や愛を伝える意味をもっています。
緑色
緑は平安時代に宮中などに着用されていた十二単にも必ず取り入れられているほど高貴な色で、平和や調和といった意味があります。
青色
日本には古くから藍染めという藍を染料とした染物があり、青は武士には縁起のよい色として好まれており、落ち着きや信頼感をイメージした色です。
紫色
紫は奈良時代・平安時代では天皇や高官の色とされていたため、古来より高貴な色、神秘的な色として扱われてきました。
柄や花の種類に込められた意味
振袖に取り入れられることの多い柄や花のもつ意味は、以下の通りです。
鶴(ツル)
鶴は、健康長寿や生命力の強さを意味しています。
梅(ウメ)
梅は、寒さや逆境にも負けない忍耐・強さを意味しています。
菊(キク)
菊は邪気を払い、心身の安定を保つ意味があります。
牡丹(ボタン)
牡丹は百花の王とされる花で、高貴さや美しさを備えている意味をもっています。
百合(ユリ)
百合はエレガントな形や佇まいから、純潔や無垢といった意味があります。
菖蒲(アヤメ)
菖蒲は長寿を願い、剣のような葉の形から厄除けと繁栄の意味を兼ね備えています。
18歳成年になるとできること・できないこと
明治時代から、日本での成年年齢は「20歳」と民法で定められていました。
しかし、2022年に施行された民法の一部を改正する法律により成年・未成年に関する定義が変更され、成年年齢が20歳から「18歳」へ引き下げられました。
これによって、2022年4月1日時点で18歳と19歳の人は成人となりました。
また2022年4月1日以降に18歳になる人(2004年4月2日以降に生まれた人)は、18歳の誕生日から成人となります。
成年年齢を18歳に引き下げることは、18歳・19歳の若者の自己決定権を尊重するものであり、その積極的な社会参加を促すことになると考えられたためです。
成年に達すると、親の同意を得なくても自分の意思でさまざまな契約ができるようになります。
また親権に服さなくなるため、自分の住む場所や進学・就職などの進路なども自分の意思で決定できるようになります。
しかし成年年齢引き下げにより変わること、変わらないことがあります。
18歳でも20歳と同じようにできることもあればできないこともありますので、次項で違いをまとめました。
18歳になったらできること
18歳になると、親の同意を得なくても自分の意思で契約ができるようになります(未成年の場合は親の同意が必要です)
選挙権
民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げるとする、民法の一部を改正する法律が施行されたきっかけが選挙権です。
高齢化が進む中で若い有権者を増やそうというのが目的ですが、日本の憲法改正に必要な国民投票が18歳以上になっているのに議員を選ぶ選挙権は20歳からという矛盾を正す趣旨もあります。
携帯電話の契約
携帯電話は、18歳以上になれば自分の意思で契約できます。
親の同意が必要なく本人名義で契約可能で、大手キャリア・格安SIM関係なく全キャリアで共通です。
賃貸契約
1人暮らしの部屋を借りることができます。
ローン契約
高額な商品を購入した時にローンを組むことができますが、返済能力を超えるローン契約と認められる場合は契約できないことがあります。
クレジットカードの契約
本人名義でクレジットカードを契約することができますが、支払い能力の審査結果によってはクレジットカードの作成ができないことがあります。
有効期間10年のパスポートを取得
未成年は有効期間が5年間のパスポートしか取得できませんが、18歳になると有効期間が10年間のパスポートを取得できるようになります。
国家資格の取得
公認会計士や司法書士、行政書士、社会保険労務士といった国家資格を取得することができます。
歯科医師や獣医師、薬剤師免許も対象で、国家資格の取得年齢が早まることは仕事に就く年齢も早まることになるため、未成年の将来設計に大きく影響を与えるメリットがあるといえます。
その他
成年年齢が20歳から18歳に引き下げられても、変わらずに20歳までできないこともあります。
あらゆる事由や将来へのリスクを考慮した対策ともいえるため、あらかじめ確認しておきましょう。
20歳までできないこと
成年年齢が20歳から18歳に引き下げられても、変わらずに20歳までできないこともあります。
これは、あらゆる事由や将来へのリスクを考慮した対策ともいえますので確認しておきましょう。
飲酒・喫煙
健康被害やアルコール依存症などの対策として、18歳成年になっても飲酒や喫煙はできません。
公営ギャンブル
ギャンブル依存症対策も考慮し、18歳になっても競馬や競輪、オートレースなどのギャンブルは認められていません。
その他
他にも養子を迎えることや国民年金に加入し被保険者になることも、社会的な成熟が求められるため20歳になるまでは認められていません。
また、大型・中型自動車運転免許の取得も20歳以上で取得可能です。
成年年齢引き下げによる注意点
18歳になると未成年ではできなかったさまざまな契約などが可能になりますが、注意しておくこともあります。
消費者被害の懸念
契約は、法的な責任が生じる約束ごとで法的拘束力をもつため、一方的に契約を取り消すことはできません。
未成年が契約する場合は親の同意が必要であるのにもかかわらず、親の同意を得ずに契約した場合には民法で定められた「未成年者取消権」契約を取り消すことが可能です。
しかし18歳で成年扱いとなると、親の同意なしで契約をしても取り消しができなくなるため不安な場合は親や周囲の人に相談してから契約するようにしましょう。
契約の取り消し
なお、場合によっては契約の取り消しができるケースがあります。
強引な勧誘などで契約してしまった場合は、8日間以内(マルチ商法などは20日間)であれば無条件で契約を解除できる、クーリングオフ制度を利用できます。
また嘘をついたり不安を煽ったりする不当な勧誘があった場合は、消費者契約法により契約を取り消すことができます。
養育費の支払い期間への影響
養育費の支払い期間については離婚した夫婦が任意で決めるべき内容ですが、2022年4月以降に離婚した際には子どもが成人するまでとの考えが主流のため、支払いが終わる時期が20歳から18歳に繰り上がることがあります。
大学への進学や学費も考慮し、成人年齢に関わらず必要な養育期間を考えて決めていくことが求められるでしょう。
少年法の適用範囲
民法改正に関係なく、20歳未満であれば18歳や19歳であっても引き続き少年法が適用されます。
しかし少年犯罪による被害者やその家族の間では、18歳以上の人を少年法の対象から外すように求める声が多いです。
2021年5月21日に成立した改正少年法では、罪を犯した18歳と19歳を17歳以下の少年とは異なる扱いで「特定少年」として厳罰化することが決まっています。
18歳から対象となった成人の日まとめ
子どもから大人になる自覚をもつ通過儀礼から始まった、成人の日。
中国から伝わった慣習が変化した形とはいえ、奈良時代から行われていた儀式が起源と聞くと新成人のためのお祝いにも長い歴史があったことに驚かされます。
冠婚葬祭の「冠」は成人式のことであり、日本の4大儀式の1つとして人生の節目ともいえます。
普段の装いとは違う華やかな振袖を着ることで、自分が大人になったことを自覚するとともに家族などへ成長した姿を見せ感謝を伝えるという意味が込められています。
振袖の色や柄、花の意味を知っておくことで、色とりどりに並ぶ振袖の中から自分の選んだ1着にはさらに愛着がもてるのではないでしょうか。
筆者も、母に連れられて着物専門店へ振袖を見にいったことがあります。
訪問着などにお直しして長く着られることも考慮したのでしょう、母の勧める色が薄く淡い色で気乗りがしなかった思い出があります。
店員さんから私にこれといった色や柄はどれなのかを聞いてくれた時に、筆者が選んだのは臙脂色をベースに黒の装飾がなされた振袖でした。
薄くて淡い色の着物を試着した後に、自分が気になった振袖を着てみた時の母のあの表情は今でも忘れることができません。
成人の日がくると、お父さんやお母さんもいつか子どもたちが成人を迎える日を想像しながら、どのようにその日を迎えたいのかを考えるきっかけもあるでしょう。
いつかやってくる我が子の成人の日に思いを馳せ、よい祝日を過ごしたいものですね。
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