知る 歳時記・暦

二十四節気と七十二候の暦とは?96ある言葉で季節や気候の変化を<Part-1・春>

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春の訪れを象徴するクロッカス(春の二十四節気と七十二候)

春夏秋冬の四季だけではない、季節を表す二十四節気と七十二候。

二十四節気は、1年を24つの節気に分けた季節の移り変わりを季語のような言葉にしたものです。

七十二候は、二十四節気をさらに細分化し、1年を72つに分けて表現した言葉で、気象の変化や動植物の行動を表しています。

あなたは、この二十四節気と七十二候に用いられている暦の言葉をご存知でしょうか。

今回は、二十四節気や七十二候を表す言葉それぞれの意味や時期を、春夏秋冬の四季別に分けて紹介します。

この記事では、春の季節に絞って掲載しますが、二十四節気と七十二候に定められた、96ものある暦の美しい言葉を知ることで、季節の移ろいに応じた暮らしの参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

颯彩(ふーあ)

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以下の記事では、二十四節気と七十二候ができた由来や仕組み、特徴といった基本知識について解説していますので併せてお読みください。

春の季節における二十四節気と、七十二候の第一候から第十八候までを紹介していきます。

立春 ~春になる時~

立春(りっしゅん)は、一年の始まりは立春からといわれるように、旧暦では春の始まりで、まだ寒いとはいえ土中の生き物たちが冬眠から目覚め始めます。

東風解凍

読み:東風解凍(はるかぜこおりをとく)
区分:立春・初候/第一候
時期:2月4日~8日ごろ
意味:東からの春風が氷を解かす

東から暖かい春風が吹いて、冬の間に凍っていた川や池などの氷が少しずつ解け始めていく頃のことです。

春の訪れを表した候で、立春で最初に吹く強い南風を「春一番」といいます。

東風解凍は、凍っていた池や湖の氷が解け始める頃

黄鶯睍睆

読み:黄鶯見睆(うぐいすなく)
区分:立春・次候/第二候
時期:2月9日~13日ごろ
意味:春を告げるウグイスが鳴き始める

春告鳥(ハルツゲドリ)とも呼ばれる鶯(ウグイス)の、高らかで美しいさえずりが響き始める頃のことです。

古くから梅と鶯は春の代名詞で、2月の花札にはこのモチーフが使われています。

黄鶯睍睆は、春を告げるウグイスが鳴き始める頃

魚上氷

読み:魚氷上(うおこおりをいずる)
区分:立春・末候/第三候
時期:2月14日~18日ごろ
意味:割れた氷から魚が飛び出す

暖かい陽気に薄くなった湖や池の氷が解けて割れ、氷の下に潜んでいた魚たちが飛び跳ねてくる頃のことです。

川魚も生き生きと動き始めるため、全国各地で渓流釣りが解禁となります。

雨水 ~雪氷が解けて雨が降る~

雨水(うすい)は、冬が明け春の暖かな陽気の中、雪に変わって雨が降り、氷が解けて水になり、農耕を始める時期がやってきます。

土脉潤起

読み:土脈潤起(つちのしょううるおいおこる)
区分:雨水・初候/第四候
時期:2月19日~23日ごろ
意味:雨で土が潤いを帯びる

冷たい雪で凍りついていた地面が溶け出し、暖かい春の雨が土に潤いを与える頃のことです。

土中に冬眠していた生き物たちも目覚め始め、菜の花が美しく咲きます。

霞始靆

読み:霞始靆(かすみはじめてたなびく)
区分:雨水・次候/第五候
時期:2月24日~28日ごろ
意味:霞がたなびき始める

遠くに見える山々に霞がたなびいて広がり、景色がぼやけて幻想的に見える頃のことです。

霞と霧は同じ気象ですが、春はたなびく霞、秋は立ちのぼる霧という季節の表現で呼び分けられます。

霞始靆は、山々に霞がたなびく頃

草木萌動

読み:草木萌動(そうもくめばえいずる)
区分:雨水・末候/第六候
時期:3月1日~4日ごろ
意味:草木が芽を吹き始める

萌は草木が芽を出すという意味で、土の中や枝から草木が芽吹き出す頃のことです。

待ちに待った春の始まりで、冬の寒さに耐えてきた新しい生命が一斉に芽生え始めていきます。

草木萌動は、ツクシなどの草木が土中や枝から芽を出す頃

啓蟄 ~虫が目覚め動き出す~

啓蟄(けいちつ)は、地面が温かくなり、土中の蟄(虫=生き物)たちが冬の眠りから目を覚ましうごめきます。

蟄虫啓戸

読み:蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)
区分:啓蟄・初候/第七候
時期:3月5日~9日ごろ
意味:冬眠していた虫が土から出てくる

冬の間、土中にこもっていた虫たちが冬眠から目覚め、暖かい春を感じて地上に出てくる頃のことです。

ワラビやゼンマイなど、あくの強い春の山菜は体内の毒素を排出するといわれ、「春には苦みを盛れ」という格言もあります。

桃始笑

読み:桃始笑(ももはじめてさく)
区分:啓蟄・次候/第八候
時期:3月10日~14日ごろ
意味:桃の花が咲き始める

昔は「笑う」を「咲く」の意味で表現しており、桃の花が咲き始める頃のことです。

桃の節句も、旧暦でこの時期に行われており、現在でもこの時期にひな祭りを祝う地域があります。

桃始笑は、桃の花が咲き始める頃

菜虫化蝶

読み:菜虫化蝶(なむしちょうとなる)
区分:啓蟄・末候/第九候
時期:3月15日~19日ごろ
意味:蝶の幼虫が羽化する

春の訪れによって青虫が美しい蝶へと姿を変え、羽ばたき始める頃のことです。

菜虫は青虫のことを指し、蝶の幼虫などが該当します。

菜虫化蝶は、青虫が美しい蝶へと姿を変える頃

春分 ~春の中間点~

春分(しゅんぶん)は、昼が夜と同じ時間で、この日を境に昼が長くなっていき、前後にある春の彼岸が「暑さ寒さも彼岸まで」というように、寒さも峠を越えます。

雀始巣

読み:雀始巣(すずめはじめてすくう)
区分:春分・初候/第十候
時期:3月20日~24日ごろ
意味:スズメが巣を作り始める

繁殖期を迎える雀(スズメ)が、巣を作り始める頃のことです。

雀のその小さな体が、他の鳥の大きさを比較する際の基準とされることが多いため、「ものさし鳥」とも呼ばれています。

雀始巣は、スズメが巣を作り始める頃

桜始開

読み:桜始開(さくらはじめてひらく)
区分:春分・次候/第十一候
時期:3月25日~29日ごろ
意味:桜の花が咲き始める

その名の通り、桜の花が咲く頃のことで、春本番を迎えるともいえます。

全国各地から開花宣言のニュースが聞こえてきて、桜を愛でて酒を酌み交わす花見は日本独特の風習です。

桜始開は、桜の花が咲き始める頃で春本番

雷乃発声

読み:雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)
区分:春分・末候/第十二候
時期:3月30日~4月3日ごろ
意味:春の雷が鳴り始める

季節の変わり目で大気が不安定になり、恵みの雨を呼ぶ春雷が轟く頃のことです。

新タマネギやアスパラガスも、この頃から収穫が始まります。

清明 ~万物が清く明るく~

清明(せいめい)は、万物が清らかで明るい様子を意味する「清浄明潔」の略で、爽やかな陽気に春の花々が生き生きと咲き誇ります。

玄鳥至

読み:玄鳥至(つばめきたる)
区分:清明・初候/第十三候
時期:4月4日~8日ごろ
意味:ツバメが南からやってくる

冬の間を南で過ごしたツバメが、海を渡って日本に飛来してくる頃のことです。

ツバメが人間の住む家の軒下などに泥や枯草を固めて巣を作るのは、カラスやネコなどの外敵から身を守るためといわれています。

エサとなる田畑の害虫を駆除してくれるツバメは、農家にとって縁起のよい鳥です。

玄鳥至は、ツバメが日本へ飛来してくる頃

鴻雁北

読み:鴻雁北(こうがんかえる)
区分:清明・次候/第十四候
時期:4月9日~13日ごろ
意味:ガンが北へ帰っていく

冬を日本で過ごした雁(ガン)が、北の大地へ帰るために飛び立っていく頃のことです。

ガンは、前述したツバメと同じ渡り鳥ですが、時候に応じて逆に去っていきます。

虹始見

読み:虹始見(にじはじめてあらわる)
区分:清明・末候/第十五候
時期:4月14日~18日ごろ
意味:きれいな虹が見え始める

春が深まり、雨上がりに浮かぶ虹が春の柔らかい光を映し出す頃のことです。

この時期には、脂が少なくさっぱりしている初ガツオが登場し、皮付きで炙ったタタキがよく見られます。

虹始見は、雨上がりに虹が見られる頃

穀雨 ~穀物を潤す雨が降る~

穀雨(こくう)は、恵みとなる春の雨が、田畑や穀物を潤すために降り注ぎ、農業では種まきに最適な時期となります。

葭始生

読み:葭始生(あしはじめてしょうず)
区分:穀雨・初候/第十六候
時期:4月19日~24日ごろ
意味:ヨシが芽吹き始める

葭は植物の葦(ヨシ)のことで、水辺の葦が芽吹き始める頃のことです。

この時期はタケノコが旬で、土佐煮やタケノコご飯など幅広い料理が並びます。

霜止出苗

読み:霜止出苗(しもやみてなえいづる)
区分:穀雨・次候/第十七候
時期:4月25日~29日ごろ
意味:霜が収まり苗代の稲が育つ

農作物に被害をもたらす霜が降りなくなり、稲が元気に成長し始める頃のことです。

耕した田んぼに水が張られ、本格的な米作りに向けて田植えの準備に忙しくなります。

霜止出苗は、霜が収まり田植えの準備を始める頃

牡丹華

読み:牡丹華(ぼたんはなさく)
区分:穀雨・末候/第十八候
時期:4月30日~5月4日ごろ
意味:ボタンが咲き始める

牡丹(ボタン)が美しく、大輪の花を咲かせる頃のことです。

女性の美しさに例えられた「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉があるように、ボタンは富貴花とも呼ばれる百花の王といわれています。

牡丹華は、牡丹の花が咲き始める頃

終わりに

以上で、1年の始まりとなる春の二十四節気や七十二候を紹介しました。

季語のような美しい2字の二十四節気と、謎解きのように気象や動植物を表した七十二候の言葉を見ると、春のさまざまな情景が脳内に浮かんできます。

季節を把握するための手段として、現在も生き続けるそんな季節・暦の意味を紐解くと、より深い季節感のある365日を感じながら過ごしたいものですね。

春の風景
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