奈良といえば、古き良き都。
日本における最初の都は、大和三山(耳成山・畝傍山・香久山)に囲まれた橿原で694年に作られた藤原京です。
710年に平城京へ遷都したものの、794年には桓武天皇により京都の平安京へ都を移しました。
そんな長年の歴史をもつ奈良には、多くの建築物が現存しています。
世界最古の木造建築物といわれている法隆寺は、1993年に「法隆寺地域の仏教建造物」として日本初の世界遺産(世界文化遺産)に登録されました。
また1998年には、8つの資産で構成される「古都奈良の文化財」として2回目の世界遺産に登録されたのです。
今回は日本を代表する歴史的観光であり、世界遺産として認められた奈良の建築物と歴史を紹介します。
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奈良の世界遺産一覧
法隆寺地域の仏教建造物(1993年)
法隆寺地域の仏教建造物は、奈良県生駒郡斑鳩町にある法隆寺法隆寺の建造物47棟と、法起寺の三重塔を含む48棟で構成されます。
さらに法隆寺の西院伽藍は世界最古の木造建築物として知られており、1993年に姫路城とともに日本初の世界遺産として登録されました。
古都奈良の文化財(1998年)
古都奈良の文化財は、奈良県奈良市内にある8件の地域遺産(神社1件、仏閣5件、史跡・名勝1件、天然記念物1件)と緩衝地帯で構成されます。
総面積約502.38ヘクタールの規模にある奈良公園内に点在しており、1998年に世界遺産として日本で9件目、文化遺産としては7件目に登録されました。
奈良公園
奈良公園(ならこうえん)は、奈良市にある総面積約502.38ヘクタールを誇る都市公園で、国の名勝に指定されています。
公園内には春日山や若草山をはじめ興福寺、東大寺、春日大社なども含まれ、多くの国宝指定や世界遺産に登録されている物件が点在しています。
また周囲360メートルある小ぶりの猿沢池(さるさわいけ)は、観光の拠点ともいえる観光スポットで、多くの観光客が池を取り囲むように憩いのひとときを過ごしています。
池越しに見えているのは、興福寺の五重塔で奈良の町のシンボルです。
園内の大部分が芝生に覆われていることから、奈良公園のマスコット的存在として約1200頭の鹿(シカ)が生息しており、年間を通じて日本のみならず海外からの観光客も多く訪れます。
シカは野生動物のため、時に攻撃することがあります。
突進されたり角で突かれたりするなどケガをすることがありますので、不用意にシカに触れたり子どもだけで近寄ったりしないでください。
奈良公園では春には桜の名所としても知られ、入園料が不要のためいつでも散策が可能です。
奈良公園までのアクセス
住所
奈良県奈良市芝辻町543
交通アクセス
近鉄奈良線「近鉄奈良」駅より徒歩5分
公式サイト
地図
東大寺
東大寺(とうだいじ)は、奈良の大仏さまで知られる代表的な華厳宗の寺院で、正式名称は「金光明四天王護国之寺」です。
奈良時代に、聖武天皇が仏教の教えを中心にして国を守るために国力を尽くし建立しました。
東大寺境内には建物が数多くありますが、主に代表的なものを紹介します。
南大門
南大門は、東大寺の正門で創建時の門は平安時代に大風で倒れました。
現在の南大門は、鎌倉時代に東大寺を復興した重源上人が新たに宋様式を採り入れた大仏さまによって再建したものです。
1199年(正治元年)に上棟し、1203年(建仁3年)には門内に安置する金剛力士(仁王)像とともに竣工されました。
屋根裏まで達する大円柱18本は21メートルにもおよび、門の高さは基壇上25.46メートルあります。
大仏殿
大仏殿は、東大寺の金堂で世界最大級の木造建造物とされています。
奈良時代に創建されてから2度の兵火に遭い、現在の建物は江戸時代に公慶上人によって再建されました。
大仏さまは、正式には「盧舎那(るしゃな)仏」もしくは「毘盧遮那(びるしゃな)仏」といい、知恵と慈悲の光明を一面に照らし出されている仏という意味です。
二月堂
二月堂の名は、新しい1年の平安を祈る修二会(しゅにえ)が旧暦の2月に行なわれることからきています。
1667(寛文7年)の修二会中に堂内の出火により焼失し、現在の建物はその2年後に再建されたものです。
二月堂は風鐸のような燈籠がたくさんあり風情がありますが、西日が射す夕焼けポイントとしても人気があります。
吊り燈籠に灯が入る夕刻になると、舞台付近から大仏殿や生駒山、奈良市街地までも染まる夕景が広がり雰囲気が一変します。
法華堂(三月堂)
法華堂は、733年(天平5年)から747年(天平19年)までの創建と伝えられている東大寺最古の建物です。
不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん)を本尊とし、古くは羂索堂と呼ばれていましたが、毎年3月に法華会(ほっけえ)が行なわれたことから後に法華堂と呼ばれるようになりました。
正倉院
正倉院は、聖武天皇が遺した品々を納めた北倉、東大寺の年中行事用の仏具などを納めた中倉・南倉に分かれいることから三ツ倉とも呼ばれていました。
現在は宮内庁の管轄になっていますが、毎年秋には奈良国立博物館で宝物の一部が展示される「正倉院展」が開催されています。
二月堂からの夕焼けを見た後、南大門へ行くまでにはちょうどいい暗さになります。
出口へ向かう途中にある鏡池の水面に映る夕焼けと大仏殿もきれいですし、南大門の左右にいる金剛力士像を見ると8.4メートルもある像高だけに迫力があります。
東大寺までのアクセス
住所
奈良県奈良市雑司町406-1
交通アクセス
近鉄奈良線「近鉄奈良」駅より登大路町を東へ徒歩約20分
JR奈良駅・近鉄奈良駅より市内循環バス「東大寺大仏殿・春日大社前」下車徒歩5分
公式サイト
地図
興福寺
興福寺(こうふくじ)は、669年(天智8年)に前身の厩坂寺が創立されたのが始まりです。
710年(和銅3年)に藤原不比等が平城遷都に伴い、平城京に移されて興福寺となりました。
その後は藤原氏の氏寺として藤原一族の隆盛とともに寺勢を拡大しましたが、1180年(治承4年)に平家によって焼き討ちされ、ほとんどの堂が一度は焼失しています。
火災に遭うたびに都度再建されてきましたが、現在の堂塔は鎌倉時代以降の建物を一部残し、広い境内に東金堂・中金堂・北円堂・南円堂・五重塔・三重塔などが建ち並び、彫刻類は天平時代や鎌倉時代の至宝を数多く保存しています。
五重塔は奈良の町のシンボルとなっており、猿沢池からの眺めは多くの観光客に親しまれています。
北円堂(鎌倉時代)、三重塔(鎌倉時代)、五重塔(室町時代)、東金堂(室町時代)の4棟が国宝建造物に指定されています。
興福寺までのアクセス
住所
奈良県奈良市登大路町48
交通アクセス
近鉄奈良線「近鉄奈良」駅より徒歩約5分
JR奈良駅・近鉄奈良駅より徒歩約15分
公式サイト
地図
春日大社
春日山原始林を背景に奈良公園内にある春日大社(かすがたいしゃ)は、全国に約3000社ある春日神社の総本社です。
奈良の都・平城京ができた頃に、常陸国(茨城県)から武甕槌命(たけみかづちのみこと)をお迎えし、都の守り神として768年(神護景雲2年)に社殿を創建したのが始まりといわれています。
古くから神の降臨する山として信仰されていた御蓋山(みかさやま)の麓に広がる境内は緑豊かで、朱塗りの艶やかな社殿は周辺の自然と調和し日本古来の神社の様子を伝えています。
本社を取り囲む回廊は重要文化財に指定されているほか、国宝殿や萬葉植物園といった見どころスポットもあります。
藤の名所として知られる萬葉植物園については、下記記事をお読みください。
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藤の生態や特徴は?関西と関東で一度は行きたい藤の観光スポット5選
2024/3/10
春日大社までのアクセス
住所
奈良県奈良市春日野町160
交通アクセス
近鉄奈良線「近鉄奈良」駅より徒歩約15分
JR奈良駅・近鉄奈良駅から奈良交通バスで春日大社本殿行「春日大社本殿」下車すぐ
公式サイト
https://www.kasugataisha.or.jp/
地図
春日山原始林
春日山原始林は、春日大社の東側にある原始林で約250ヘクタールの広さがあります。
841年に狩猟と伐採が禁止されて以来、春日大社の聖域として守られてきた神聖な森です。
原生的な状態を維持している照葉樹林としても貴重で、奈良の景観保全上においても重要な役割を果たしています。
スケールの大きな鎮守の森とされていることから春日大社と一体のものとして文化遺産に含まれ、特別天然記念物にも指定されています。
薬師寺
薬師寺(やくしじ)は、天武天皇が藤原京に建立した法相宗の仏教寺院です。
天武天皇が後の持統天皇である皇后の病気平癒を祈願して、680年(天武9年)に薬師如来を本尊とする寺の建立に着手しました。
しかし天武天皇は薬師寺の完成を待たずに亡くなり、即位した持統天皇がその遺志を継いで698年に完成させました。
710年には元明天皇により藤原京から平城京へと遷都が行われ、薬師寺も現在の地へ移ります。
その後、度重なる火災や地震で多くの堂塔が焼失してしまい、その中で唯一創建時から現存しているのが東塔で国宝として登録されています。
藤原京にあった前身の薬師寺は、西ノ京の薬師寺と区別するために本薬師寺と呼ばれるようになりました。
本薬師寺については、下記記事もご参考ください。
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花菖蒲やホテイアオイなど…梅雨と暑い夏を彩る花・植物の観光スポット
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薬師寺までのアクセス
住所
奈良県奈良市西ノ京町457
交通アクセス
近鉄橿原線「西ノ京」駅より徒歩1分
公式サイト
地図
唐招提寺
唐招提寺(とうしょうだいじ)は、南都六宗の1つである律宗の総本山の寺院です。
来日した唐の高僧・鑑真大和上が、759年(天平宝字3年)に戒律を学ぶ人たちのための修行道場を開いたのが始まりとされています。
鑑真が晩年を過ごした寺であり、奈良時代に建立された金堂や講堂をはじめ、多くの文化財を安置しています。
唐招提寺までのアクセス
住所
奈良県奈良市五条町13-46
交通アクセス
近鉄橿原線「西ノ京」駅より奈良交通バス「唐招提寺」「唐招提寺東口」下車
公式サイト
地図
平城宮跡(平城宮跡歴史公園)
平城宮跡(へいじょうきゅうせき)は、710年(和銅3年)に藤原京より遷都された平城京の中心であった宮跡です。
長年にわたって調査や復原整備が進められ、東西1.3キロ・南北1キロの広大な敷地に第一次大極殿や朱雀門などが復元されています。
2018年(平成30年)には5つの複合施設を含む「朱雀門ひろば」が設立され、平城宮跡歴史公園となりました。
平城宮の昔から現在までを総合的に案内する「平城宮いざない館」、レストランやカフェを併設した「天平うまし館」のほか、多数の出土品の展示、復元模型、遺構などを公開する展示館や資料館も充実しています。
平城宮跡までのアクセス
住所
奈良県奈良市二条大路南3-5-1
交通アクセス
近鉄奈良線「大和西大寺」駅南口より約20分
近鉄奈良線「奈良」駅よりぐるっとバスで「朱雀門ひろば前」下車すぐ
公式サイト
地図
元興寺
元興寺(がんごうじ)は、奈良市中院町にある真言律宗の寺院で、もともとは6世紀に蘇我馬子が法興寺(飛鳥寺)として創建したことが始まりです。
平城遷都により現在の場所に移して造営され、名前も元興寺と改められました。
かつては南都七大寺の1つとして現在の奈良市街の南東部を占めており、広大な境内には金堂・講堂・五重塔・僧房などが立ち並んでいました。
しかし平安時代以降徐々に衰退していき、現在では極楽坊と呼ばれる僧坊の一角が唯一現存しています。
極楽坊の本堂と禅室は鎌倉時代に改築され、屋根には飛鳥・奈良時代の瓦も残っています。
その後、境内から無数の石仏と民俗資料が発見され、法輪館には奈良時代の木造五重小塔、木造阿弥陀如来坐像・中世庶民信仰資料などが安置されています。
元興寺までのアクセス
住所
奈良県奈良市中院町11
交通アクセス
近鉄奈良線「近鉄奈良」駅より徒歩15分
JR線「奈良」駅より徒歩15分
公式サイト
地図
法隆寺
法隆寺(ほうりゅうじ)は、世界最古の木造建築物といわれている聖徳宗の総本山の寺院です。
607年(推古15年)に、推古天皇と聖徳太子によって建立されたのが始まりで創建当時は斑鳩寺と呼ばれていました。
約18万7000平方メートルもの広大な境内には、五重塔など飛鳥時代をはじめとする貴重な建造物や宝物類が点在しています。
建物内部には数多くの仏像類が安置されており、国宝・重要文化財に指定された建物や宝物類は約190件、その数2300点を超えます。
1993年(平成5年)に「法隆寺地域の仏教建造物」として、日本初の世界遺産(文化遺産)に登録されました。
学生時代に修学旅行などで一度は訪れたことがあるものの、当時はあまり興味がなかったという人も多いのではないでしょうか。
年月を経て大人になり、荘厳な建築物などを改めて見ると想像以上に感動や発見があるかもしれません。
貴重な仏像や壁画などを期間限定で公開することがありますので、公式サイトをチェックしてみてください。
法隆寺までのアクセス
住所
奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1
交通アクセス
JR「法隆寺」駅より徒歩約20分
公式サイト
地図
奈良の世界遺産まとめ
日本国内で、世界遺産がもっとも多いのは奈良県です。
今回紹介したのは法隆寺を中心とした「法隆寺地域の仏教建造物」、東大寺や興福寺など8つの資産で構成される「古都奈良の文化財」で、もう1つは吉野山や熊野三山といった「紀伊山地の霊場と参詣道」があります。
奈良県は3つも世界遺産をもち、いずれも文化遺産であることからも日本でもっとも歴史の深い代表的な観光地ともいえます。
もし観光にきたら奈良駅から少し歩いたところに、古くからの民家が残る町並みがあります。
縁起担ぎや厄除けのグッズや置き物など面白いものも至るところで見かけますので、奈良にきたら世界遺産だけでなく、ならまちを散策してみるとよいでしょう。
以下の記事では、世界遺産とは何か、何がきっかけで始まったのか、意味や起源はじめ、種類、登録までの流れ、そして日本各地にある世界遺産を紹介しています。
現地の景観や建築物、神社や寺院などの展示品を目にする時に世界遺産であることを知っているか知らないかだけで見え方や感じ方が変わるため、観光の計画としてご参考ください。
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また日本国内で文化財保護法の対象とされるもので、人間の文化により残された有形・無形の中から、価値(文化的価値)を広く認められた文化財について紹介しています。
文化財の意味や種類、それぞれの違いを知って日本各地の観光ついでに寄り道できる機会としてご参考ください。
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