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ホテル雅叙園東京のアートイベント「和のあかり×百段階段2023」を写真付きでレポート

2023年7月7日

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和のあかり×百段階段2023

夏になると、ホテル雅叙園東京(東京・目黒)で開催されるアートイルミネーション「和のあかり×百段階段」。

会場となるホテル館内の「百段階段」は、東京都の有形文化財に指定されており、毎年異なるテーマで日本のさまざまな光と影のアートが集結します。

日本美のミュージアムホテルが主催するこのイベントは、2015年より毎年夏に期間限定で開催され、今や都内における夏の風物詩として知られるようになりました。

今回は、2023年7月1日(土)から9月24日(日)までの期間限定で開催されている「和のあかり×百段階段2023 ~極彩色の百鬼夜行~」の展示模様と見どころを写真付きでレポートします。

また、ホテル雅叙園東京の特徴や東京都有形文化財「百段階段」についても解説していますので、ご参考になれば幸いです。

和のあかり×百段階段の概要

和のあかり×百段階段とは

ホテル雅叙園東京の百段階段にある7つの部屋を繋ぐ長い階段廊下を進みながら、エリアごとに設定されたストーリー性のあるディスプレイの中に入り込んで楽しめる展示イベントです。

2015年に開催された第1回目から、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催を中止した2020年を除き、毎年夏に期間限定で開催されているホテル雅叙園東京のアートイルミネーションです。

2022年までの7回にわたる来場者数は累計44万人以上になり、今やホテル雅叙園東京での夏の風物詩といえるイベントとなっています。

百段階段とは

百段階段は、1935年に目黒雅叙園3号館として誕生したホテル雅叙園東京の中で、唯一現存する木造建築です。

結婚式場の施設として晴れやかな宴が行われていた7つの部屋を、99段の長い階段廊下が繋いでいます。
天井や欄間(らんま)などに趣向を凝らした各部屋は、画家や建具師、塗師など熟練の職人たちが技術を駆使しながら装飾したものです。

江戸時代から伝わる伝統的な美意識と昭和初期のモダニズムが生きており、2009年(平成21年)に東京都の有形文化財として指定されました。

ちなみにこの百段階段は、100段あるのかと思われがちですが、実は99段までしかありません。
筆者も実際に確認しましたが、何度数えても1段足りないのです。

一体なぜなのでしょうか。
その謎も階段を上り切ると解明されますので、この夏に機会があれば行ってみてください。

ホテル雅叙園東京にある、東京都有形文化財の百段階段

和のあかり×百段階段2023の展示テーマ

今年で8回目を迎えた「和のあかり×百段階段2023」は、「極彩色の百鬼夜行」を展示テーマに、光(あかり)によって生まれる影、異なるふたつの要素が織り成すコントラストが楽しめる内容になっています。

百鬼夜行という怪談を絡めたストーリ仕立てになっているのが大きな特徴で、各部屋を巡りながら、現世から異界へ迷い込むような怪しく幻想的な世界観が繰り広げられています。

夕切れから夜の入口へ進むと、その先には現世とは違う妖怪やモノの怪が住む異界へ通じる道が現れます。
さまざまなジャンルや技法による日本のあかりの合間に妖怪や鬼が姿を現し、涼をもたらします。
絢爛豪華な独自の様式美にあふれる文化財空間にさらなる「色」による表現が加わり、階段を上がるたびに美しくも妖しい世界へ誘います。

百鬼夜行とは、「百の鬼が夜を行く」というそのままの意味があり、さまざまな妖怪や鬼たちが、夜中に列をなしてひしめき歩くことです。
それを例えに、人目に立たぬところで多くの悪人や怪しい者がはびこり、勝手気ままに悪事をはたらく時にも使われる言葉です。

和のあかり×百段階段2023の見どころ

会場で展開されているすべてを紹介することはできませんが、特に見どころのある展示をダイジェストに紹介していきます。

入口で出迎える金魚たちと風鈴の音

ホテルのエレベーターを降りて百段階段へと向かう入口に飾られているのが、山口県柳井市の「柳井金魚ちょうちん祭り」です。
柳井市の民芸品である「金魚ちょうちん」をモチーフにした、夏の一大イベントです。

実際のお祭りでは、約4000個の金魚ちょうちんが飾られ、そのうち約2500個に灯りがともり、華やかな雰囲気に包まれるそうです。
愛嬌のあるちょうちんから金魚すくいの模様が浮かび、子どもたちの賑やかな歓声が聞こえてきそうです。

その奥には風鈴の清々しい音が鳴り響き、夏の夕暮れをイメージして少し風が出て涼しくなってきた様子が風鈴の音で表現されています。
柏木美術鋳物研究所の小田原風鈴と篠原風鈴本舗による江戸風鈴の2種類があり、夕暮れから夜になっていく様子が見えます。

百段階段につながるプロムナードには、色鮮やかな提灯のあかりが並び、着物の柄と同じような美しい和の模様に見惚れ、涼しさをより感じさせます。

青い光に包まれる「十畝の間」

最初の部屋である十畝(じっぽ)の間・薄暮のあかりでは、「異界へと続く道」を題材にした籠染灯籠の幻想的なあかりと生け花のコラボレーションです。

青い光を放った幻想的な空間で、灯籠のあかりの中央に道があり、この道はどこに続いているのだろうと現実とは違う世界へ引き込まれます。

両脇に並ぶ中野形染工場の籠染灯籠は、まばゆい光によって360度に映し出される光と影の模様がダイナミックです。
生け花は一葉式いけ花家元である粕谷尚弘氏によるもので、道を鳥居のように装飾した亜熱帯の植物が儀式を思わせる空間です。

幽玄な空間を生み出す「漁樵の間」

漁樵(ぎょしょう)の間は「鬼の住処」が題材で、鬼や妖怪の姿に、孔雀や水晶を組み合わせた圧倒的な風景が広がります。

アーティストの説明パネルで作者の本間ますみ氏についている肩書きが「ペットボトルアーティスト」と書かれており、これらすべてが本当にペットボトルでできているのかと思ったくらいです。

どこからが作品なのか、孔雀の羽根を近くで見てもわからないほど、大胆かつ繊細な美しさでクオリティが高いです。

そして、鬼の住処をイメージして全体が赤の照明という怖い空間かと思っていたら、次第に青に変わったり一部を黄でアクセントにしたりして、透明なペットボトルだからこそ出せる光の変化が圧巻で妖しくも美しい世界観でした。
使用済みのペットボトルを再利用し、ダイナミックな空間アートとして蘇る、エコのあかりです。

和の要素で四季を描く「草丘の間」

草丘(そうきゅう)の間・情念のあかりは「異界の四季」がテーマで、歌舞伎の演目シーンで四季を表現する中に異形の生き物や祭りのあかりを配置しています。

壁伝いには春の「吉原の桜」、春の名残を惜しみながら舞う夏の「藤娘」、秋は「紅葉狩り」、冬は「鷺娘」で表現されています。

中央に配置されているのは七夕飾り作家の櫻井駿氏による作品で、縁起の良い龍と鳳凰(ほうおう)をダイナミックに描いた飾りが、妖しさを感じる歌舞伎の四季を華やかに魅せます。
最初に見た時は青森のねぶたが浮かんだのですが、七夕飾りという和の照明装飾だそうです。
七夕飾りというと、折り紙で作った短冊やちょうちん、輪つづり、祭りで見かける吹き流しのイメージしかありませんでした。

白狐と独特の作品が並ぶ「静水の間」

静水(せいすい)の間では「白き狐の世界」が題材で、江戸時代に中村座で初演された時代物の演目「義経千本桜」に出てくる白き狐の世界が広がります。
ススキの生えた原っぱに白狐が顔をのぞかせる様子が妖しさをより強く感じさせます。

側面にはオブジェとして映える、独特のある芸術作品が並びます。
月を思わせる温かな明かりを灯すオブジェは、高山しげこ氏による漉き紙の灯りで、作品モチーフは森や星、月など自然をテーマにした作品活動を行っているそうです。

他にも陶芸作家の高橋協子氏による陶器で作られた妖怪たち、フラワーデザイナーの米川慶子氏による現実にはありえない藍色一色の花の世界など、奇妙だけどどこか美しい作品が並びます。

静水の間を出て奥にある「星光の間」をつなぐ渡り廊下には、錦鯉が空間を泳ぎます。

紙にレーザー加工を施して作られた「紙にしきごい」で、開発したのが新潟に本社工場がある第一印刷所です。
現実に見る鯉というと、池の上から背の部分しか見ることがないですが、下から見上げるのはいつもと違った角度で新鮮な気持ちになるでしょう。

ガラスで表現豊かな「星光の間」

星光の間では「水が紡ぐ詩」を題材に、硝子商品を製造・販売するメーカーによるガラス作品が展示されています。

廣田硝子による曲線の美しいコップ、ミツワ硝子工芸の繊細なカットが魅力的な江戸切子のほか、田島硝子の江戸硝子はコップの底に富士山を形どったアート空間があり、月夜野工房のガラス皿がどこか懐かしい模様をしているものの現実に近い世界が広がります。

また、石塚硝子の津軽びいどろは、宙吹きという技法によるバリエーション豊富なガラス食器が並び、手作りならではの柔らかな形と色合いが美しいです。

異界と現世の狭間にいる「清方の間」

清方(きよかた)の間では、「対岸の現世」が題材で、水の中から顔を出すと対岸に見えるのは現世の灯り、という意味からきているそうです。

部屋に入ってすぐに筒状のタワーが迎えて、筒内から放たれる英字の光が上から下まで放射状に広がり、何かを唱えているような不思議な感覚がします。

中央に書かれているカタカナは百鬼夜行から免れる呪文だそうで、一説では酔っぱらっているから許してくれよといったような意味で、モノの怪と会ってもこの呪文を唱えれば異界の迷路から抜け出せるようです。

側面にあるのは照明作家の弦間康仁さんによる作品で、タンポポの綿毛やほおずきのあかりが温かみのあるオブジェです。
特に目を引いたのは、透明なガラス板に水を点在させて上から光を当てた装飾で、ガラス板の下に映る水の影がなんともいえない不思議なアート感覚でした。

隣に続く部屋には、多数のアーティストによる芸術作品が展示されています。

黒い骨組みの部分を含め紙でできている「希莉光あかり(きりこあかり)」は、倉敷切子灯篭をモチーフに底面に照らされる光の絵がまさにアートです。

山川英夫氏の組子細工は木材を削って繊細に組んだ建物、かんざし作家の榮氏による神秘的な青い彼岸花も印象的です。

部屋の出口にある和傘工房による和傘のあかりには、万華鏡のような展示演出があり、その手前にある筒の三角窓から見たがんじがらめの世界に、ようやく現世に戻れるという安堵感を覚えます。

異界を逃れ現世へ戻る「頂上の間」へ

夕暮れから異界に迷い込み、鬼の住処を通り深い世界へと進み、ようやく現世へ戻る道を見つけ、その途中に現れた「神々の園」を題材に作られたのが、最後の部屋「頂上の間」です。

目の前には大島エレク総業が手がける、植物や花をモチーフにしたライティングデコレーションが出迎えます。
幾何学的なフォルムのオブジェを組み合わせた紙のあかりが部屋いっぱいに広がり、その色鮮やかさと不思議さで先ほどまで緊張感のあった心に解放感を広がります。
遠目に見ると鋭角な強さを感じるものの、近くで見ると曲線を活かした柔らかさがあり、カラフルで幻想的な楽園にいるようです。

植物や花をモチーフにしたライティングデコレーション(大島エレク総業)/「和のあかり×百段階段」にて

他にも栃木ダボ製作所が作る神々のお面、ハナブサデザインが手がける越谷だるまのアート、水引作家の山冨繁子氏による黄金の龍が飾られており、これまでの異界とは違う穏やかなあかりで、神々しさといったものが感じられます。

和のあかり×百段階段2023のまとめ

影があるからこそ光が際立つように、灯りがあるからこそ美しき影が生まれます。
相反する要素が互いを引き立て合う幻想的な作品が一斉に集まり、光と影が織りなす空間芸術が美しいです。

そこへ強く鮮やかな色が加わることで、より妖しく、それがまた美しくもあり、昨年よりパワーアップして展開されていました。

また、日本各地からさまざまな文化や伝統技術からなる作品が集結します。
材質や表現方法の異なるあかりによる色彩に満ちた数々の作品は、不気味なようで美しさを兼ね備えており、それらを間近で鑑賞できることも見どころのひとつです。

絢爛豪華だけど厳かな雰囲気もある有形文化財で、ここまで派手で大胆なことができるのかと驚きながら、どこもかしこも映えスポットで写真に保存しておきたくなるほど、あかりアートが創り出す極彩色の異空間に酔いしれます。
部屋をつなぐ廊下にもさまざまな趣向がこらされており、夏のひとときを鮮やかに演出されています。

観賞後は、階段下にあるショップに寄ることもおすすめです。
百鬼夜行にちなんだ妖怪のおみやげも充実しているため、展示の続きを見ているようで名残を楽しめました。
鋳物風鈴や、「紙にしきごい」モビール、酔いどれぐいのみ、栃木ダボの神々マグネットやピンバッジなど、展示の中で見られた品々も手に入れることができます。

百段階段付近だけでなくホテル館内でも、今回の企画展示に沿って和のあかりが配されていますので、館内散策でぜひ注視してみてください。

ホテル雅叙園東京

ホテル雅叙園東京について

ホテル雅叙園東京(旧・目黒雅叙園)は、1931年(昭和6年)の誕生以来90年以上の伝統を受け継ぎ、2500点もの日本画や美術工芸品に彩られた唯一無二のミュージアムホテルです。

茶室に見立てた全60室の客室は、80平方メートル以上のスイートルームでスチームサウナとジェットバスを完備し、シンプルさと日本の気品ある美しさを兼ね備えています。
もてなしの心を継承する日本料理や中国料理、イタリア料理などを提供する7つのレストラン、日本美の粋を尽くした和室宴会場をはじめとする23の宴会施設があります。

料理の味だけでなく、芸術家たちに描かせた壁画や天井画、彫刻など館内の装飾を施すことで、館内散策や部屋を飾る絵や彫刻で退屈することなく目でも楽しめるような空間となっています。
中でも「百段階段」は、年間を通してさまざまな展示イベントを行っており、東京都の有形文化財に指定されています。

また、世界80カ国、520軒を超える独立系の小規模なラグジュアリーホテルだけで構成された「Small Luxury Hotels of the World(SLH)」および世界的なラグジュアリーツーリズム・コンソーシアム「Serandipians by Traveller Made®」に加盟しています。

ホテルの正面入り口を入って左にある百段階段へ通じるエレベーターも注目で、漆の重厚な図柄は螺鈿(らでん)細工と呼ばれます。
螺鈿は、チョウガイやアコヤガイなど貝殻の光沢のある面を模様の形に切り、それらをはめ込んで装飾する技法です。
ここでは貝を漆で塗りこめ、木炭で磨く「研ぎ出し」の手法が用いられています。

ホテル雅叙園東京
住所:東京都目黒区下目黒1-8-1
交通アクセス:目黒駅(JR山手線西口、東急目黒線、地下鉄南北線・三田線)より行人坂を下って徒歩3分
公式サイトを見る

終わりに

以上で、「極彩色の百鬼夜行」をテーマにした光と影のアート「和のあかり×百段階段2023」を紹介しました。

百鬼夜行をストーリーに仕立て、部屋を進むごとに現世から異界へと旅をするかのような展示・演出で、元の絢爛豪華な空間に「色」による表現が加わり、美しくも妖しい世界が繰り広げられるので夏の涼しいひと時におすすめです。

当イベントは毎年違った趣向やコンセプトで展開されていますので、過去に行かれた方でもご興味のある方は新鮮な気持ちで観にいってみてはいかがでしょうか。

ホテル雅叙園東京では、同イベント開催に合わせて、「和のあかりルーム」での宿泊やCafe&Bar「結庵」で和のあかり×ビアテラス、浴衣とレストランでのお食事がセットになった「浴衣プラン」などもありますので、公式サイトを確認してください。

※使用カメラは、SONY α7Ⅱ

「和のあかり×百段階段2023 ~極彩色の百鬼夜行~」開催概要
期間:2023年7月1日(土)~9月24日(日) 11:30~18:00(最終入館17:30)
会場:ホテル雅叙園東京「百段階段」
料金:当日券1500円/学生800円(学生証呈示)/未就学児無料
グッズ付きや日時指定などオンライン限定チケットもありますので、詳しくは公式サイトで確認してください。
イベント情報を見る

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