兼六園やひがし茶屋街、金沢21世紀美術館、和倉温泉。
本州の日本海沿岸にある石川県には、情緒あふれる古き良き街並みや伝統工芸品、温泉や新鮮な海の幸など、多くの人を魅了するスポットがたくさんあります。
しかし、伝統豊かな有名どころとは違い、ひっそりと佇む自然豊かなスポットが石川にあるのをご存知でしょうか。
今回は、自然に焦点をあてた石川県の穴場スポットを紹介します。
中心地の金沢にある有名な庭園や城、街並みといった歴史を堪能するだけでなく、海沿いをドライブしながら自然を巡りたい方にも計画の1つとしてご参考になれば幸いです。
<令和6年能登半島地震について>
2024年1月1日16時10分ごろ、石川県能登半島地方を震源とする最大震度7の地震が発生しました。
このたび能登半島を震源とする大規模地震により犠牲となられた方々に心よりお悔み申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
今もなお余震が続いており、予断を許さない状況の中で、被災された皆様の安全と、1日も早い復興をお祈り申し上げます。
ふるさと納税でも令和6年能登半島地震の災害支援緊急寄附受付を市町村別に行っています。
ゾウゾウ鼻
ゾウゾウ鼻は、断崖絶壁が続く西保海岸にある奇岩です。
能登半島の輪島から県道38号沿い(輪島浦上線)に、荒々しい海岸線を西方面に進んでいくと、ゾウゾウ鼻の看板と小さな展望台が見えてきます。
そのゾウゾウ鼻見晴らし展望台から眼下に望むと、ゾウの鼻のように海岸に突き出た岩が見えます。
同時に、透き通った青い海に広がる眺望も素晴らしく、曲がりくねった海岸線や周辺の男性的な迫力ある景観は見応えがあります。
展望台にある望遠鏡は無料で、10台くらい駐車できるスペースもありますので、ドライブ途中の休憩がてら立ち寄ってもよいでしょう。
青空の晴れた日には、佐渡島などの島がいくつか見えるそうです。
西保海岸は、輪島市街地から鵜入、上大沢まで約12キロにわたる海岸で、荒々しい断崖が続いています。
海岸線に沿って大小さまざまな岩礁や奇形の巨岩が多く、ゾウゾウ鼻だけでなくワニの姿に似ている鰐ヶ淵も見られます。
ゾウゾウ鼻(西保海岸)
石川県輪島市鵜入町
西保海岸までは、輪島市内から県道38号沿いに西方面へ車で約20分
または輪島バスターミナル(旧輪島駅)より北鉄奥能登バス雑座行きで約10分
男女滝
男女滝は、輪島市にある夫婦のように寄り添う2本の滝です。
本流から流れる緩やかな女滝(左)と、支流から急傾斜で流れ落ちる男滝(右)の2つの滝が、寄り添うように1本の滝となる様が夫婦のようであることから、男女滝と名づけられています。
岩肌を縫うように流れ落ちる男女滝は、沸騰したように泡立ったり渦を巻いたり、時には静止したりする特徴があり、周辺の広葉樹が四季折々に装いを変えて、観る人を楽しませてくれます。
高さはそれぞれ約35メートルあり、この2つの流れに躍動感があり、時に起こる静止の景観が美しいことから、1987年(昭和62年)に石川県の指定名勝に認定されました。
男女滝(なめだき)
石川県輪島市西二又町
輪島市内から県道38号沿いに大沢方面へ車で約35分
赤神隧道(赤神トンネル)
輪島市から国道249号線を赤神方面へいくと、赤い岩肌に覆われたトンネルが見えてきます。
この赤神トンネルは、赤神隧道と呼ばれ、修復後と思われるコンクリートの吹き付けまで岩肌に合わせていることから景観を重視していることがわかります。
また、トンネルを囲む岩だけでなく、付近や海沿いにも赤い岩場が剥き出しになっているほど強烈なインパクトです。
古代から天然の赤い岩には、信仰があるとされていたことからも神秘的にさえ感じます。
ちなみに、赤神という地名は、この赤神隧道周辺に露出している溶岩で形成された赤い岩肌から名づけられたとされています。
観光スポットの1つとして赤神隧道の手前には駐車場があり、近くには道の駅赤神もあるため、休憩がてら立ち寄ることもおすすめです。
後述しますが、赤神隧道からさらに海岸線を南方向へいくと、通称トトロ岩と呼ばれる権現岩があります。
赤神隧道(あかがみすいどう)
石川県輪島市門前町腰細
輪島市内から国道249号線を赤神方面へ車で約35分
権現岩(トトロ岩)
権現岩は、能登半島から輪島市方面を通る国道249号線沿いに突如現れる奇岩で、通称「トトロ岩」とも呼ばれています。
日本海の荒波によって浸食されて現在の形になり、地元の人には「立岩の権現さん」という愛称で親しまれています。
筆者は、友人と国道249号線沿いをドライブしていて、見通しがよく海がきれいに見える海岸沿いを眺めていると、見たことがある形の岩を目にして停めてもらいました。
フォルムがまるでトトロに見えると感激して写真に撮ったのですが、これが権現岩という名前がついていることまでは知りませんでした。
荒縄で作られた目が飾りつけてあるため、見た目はまさにトトロのようでとても可愛いです。
行政の方が時々よじ登って点検をしていることもあるようで、見晴らしもよく海に佇むトトロは遠くからでもわかります。
青空に浮かぶトトロもいいですが、夕暮れ時もしっとりとした空間で眺めがいいかもしれません。
車の通りが比較的多い国道で、道路沿い(反対側)に無料駐車場がありますので、必ず車を停めてから見学しましょう。
権現岩(ごんげんいわ)
石川県輪島市門前町大泊
能登空港(のと里山空港)より車で約45分
能登金剛
能登金剛は、能登半島国定公園を代表する景観の1つで、志賀町の福浦港から関野鼻の約30キロメートルにわたって奇岩や断崖が続く海岸です。
日本海の荒波によって浸食されたもので、「能登金剛」という名前は朝鮮半島の景勝地である金剛山にちなんだもので、それに匹敵する景観という意味合いがあります。
松本清張の小説「ゼロの焦点」(1959年刊行)の舞台となったことで、全国にその名を知られることになりました。
見どころは巌門、関野鼻、機具岩、ヤセの断崖、碁盤島、吹上滝、増穂浦、玄徳岬など数多くあり、能登金剛遊覧船で「能登」「金剛」の2隻の遊覧船が運航されています。
巌門
巌門(がんもん)は、能登金剛の中央に位置する天然の洞窟で、日本海の荒波が創り出した巨大な岩の彫刻です。
海に突き出た岩盤にある、波の浸食によってぽっかりとあいた洞門はトンネルのようで、幅6メートル、高さ15メートル、奥行き60メートルにも及びます。
洞門の上には老松が生い茂り、岩盤に空いた穴からは荒々しい日本海が広がる圧巻の景観で、洞窟に押し寄せて砕ける波の音がこだまします。
長い年月をかけて浸食した日本海の荒波が創り出した力強さと、能登の自然の厳しさを象徴する能登金剛の代表的な存在とされています。
また、松本清張原作「ゼロの焦点」の映画化で有名になり、ロケ地として記念碑が立っています。
断崖に沿って設けられた遊歩道は、「義経の舟隠し」にもつながっており、碁盤島を巡る遊覧船で海上から眺める巌門はまた違った迫力があるでしょう。
鷹巣岩
巌門の左奥には、尖った塔のような鷹巣岩(たかのすいわ)が佇んでおり、高さ27メートルもあります。
昔、この岩の上にある松の木で鷹が巣作りをしていたことと、鷹しか降りられないほどの高さがあることから、その名前がつけられたといわれています。
下からの眺めも迫力がありますが、鷹の巣展望台からも見下ろすこともできます。
千畳敷岩
千畳敷岩(せんじょうじきいわ)は、全国各地で見ることができ、この能登金剛にもあります。
巌門の入り口から洞窟に入らずに海に向かって下ると、荒波によって激しく削られた荒々しい岩畳が続き、海が澄んでいて綺麗なため、磯遊びにはおすすめです。
周辺は断崖になっていますが、遊歩道(階段)が整備されており歩いていくことができます。
真下まで降りるよりも、階段の途中で松の木の間から望む千畳敷岩の景観が個人的には見応えがありました。
駐車場には、歌川広重が風景版画「六十余州名所図会」に描いた「能登 滝之浦」の看板が立てられており、古くから景勝地だったことがわかります。
今回は寄れませんでしたが、周辺には機織りの神様の伝説を生んだ夫婦岩で、機織りの道具のような岩々から名づけられた「機具岩」などもありますので、ついでに観ておくことをおすすめします。
能登金剛(のとこんごう)
石川県羽咋郡志賀町富来牛下巌門
JR七尾線「羽咋」駅より北鉄能登バス・富来行きで48分、「三明駅」バス停下車、巌門まではタクシーで約15分
終わりに
石川県といえば、国の特別名勝に指定されている兼六園や金沢城、江戸時代の街並みが残るひがし茶屋街が全国的に知られています。
しかし、三方を海に囲まれている県でもあるからこそ、奇岩や断崖が続く海岸線も一度は観ておきたい注目スポットでしょう。
今回は2ヶ所しか紹介できませんでしたが、海岸沿いには日本海の荒波によって削られた、洞窟のような面白いトンネルがいくつかありますので探してみてください。
また、ゴジラ岩や窓岩、兜岩など、海に立つ奇岩にも名前がついているほどユニークな形状をしているミニスポットもあります。
歴史や和の風情が感じられる観光名所もいいですが、ぜひ自然に触れられる海岸沿いのドライブ計画も取り入れていただきたいものです。
※使用カメラは、SONY NEX-5R