大きく分けて4つの種類がある、ワセリン。
ワセリンの中でも純度の高いプロペトとサンホワイトでは、どちらが優れているのか。
保湿剤ともいわれるワセリンは、他の保湿剤とはどう違うのか。
今回は、ワセリンの成分比較をはじめ、白色ワセリンの中でも高品質とされるプロペトとサンホワイトとの違いから適したワセリンの選び方を紹介します。
また、他の保湿剤との違いや保湿効果も解説しますので、保湿ケアに向けたスキンケアアイテムを選ぶためのご参考になれば幸いです。
以下の記事では、ワセリンの種類や特徴から使い方、注意点までを、筆者の体験談付きで解説していますので併せてお読みください。
ワセリンの種類や特徴から使い方、注意点については、下記記事で解説していますので併せてお読みください。
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ワセリンの種類や違いは?保湿だけではない、5つの意外な使い方と体験レビュー
2024/5/22
ワセリンの成分比較
前回の記事では、ワセリンには大きく分けて4種類あること、それぞれの基本的な特徴や違いを紹介しました。
- 黄色ワセリン
- 白色ワセリン
- プロペト
- サンホワイト
ここではさらに突き詰めて、ワセリンの成分を比較してみましょう。
黄色ワセリンの成分
ヴァセリン オリジナルピュアスキンジェリーの例
成分:ワセリン、酢酸トコフェロール、BHT
備考:無香料・無着色・防腐剤無添加
黄色ワセリンの中でも、代表的なヴァセリン オリジナルピュアスキンジェリーは、ユニリーバ・ジャパンが販売する米国製のワセリンです。
主原料(基剤)となるワセリンの他に含まれる、酢酸トコフェロールとBHTという2つの成分は、酸化防止剤として配合されているものを指します。
配合量としては基本的に、酢酸トコフェロールが0.1~0.2%、BHTが0.01~0.05%程度といった具合でしょうか。
ヴァセリンは日本製ではないことから、私たち日本人にとってみると酸化防止剤というのは気になるところです。
しかし、細かいことをあまり気にしない欧米人にしてみると、微量の酸化防止剤や防腐剤が、人体に与える影響や刺激であることをほとんど問題にはしません。
とはいえ、特にBHTは、比較的毒性の強い添加物とされ、食品に添加してある場合はアレルギー体質の方やがん家系、癌病歴のある方は、なるべく避けてほしい物質といわれています。
取り扱いを止めている企業もありますが、BHTは安価で酸化防止の効果も高いことから現在も使われているところもあるでしょう。
また、発ガン性を疑われているものの、現段階では確認はされていないようです。
各成分の人体に及ぼす影響が気になる方や、敏感肌の方は、パッチテストを試すなど、個々の判断で利用してください。
酸化防止剤とは
酸化防止剤は、商品が酸化され、過酸化脂質によって老化促進やシミ・シワになることを防ぐとされています。
防腐剤とは
防腐剤は、商品が腐って菌が繁殖することで人体に病気やトラブルを引き起こすことを防ぐものです。
白色ワセリンの成分
ベビーワセリンの例
成分:白色ワセリン
備考:無香料、無着色、パラベン(防腐剤)フリー
まず、標準的な白色ワセリンに分類されるベビーワセリンは、健栄製薬が製造・販売する日本製のワセリンです。
その名の通り、赤ちゃんの肌にも使える保湿剤として精製されているため、無香料・無着色で防腐剤などの添加物は含まれていません。
しかし、一般的に白色ワセリンには、抗酸化剤としてジブチルヒドロキシトルエンが含まれていることが多いそうです。
白色ワセリンは、黄色ワセリンを精製したもので商品数も多いですが、商品によって配合成分はじめ精製方法や加工処理が異なるため、敏感肌の方はパッチテストをしてみることをおすすめします。
白色ワセリンについては、下記記事でも解説していますのでご参考ください。
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ワセリンの種類や違いは?保湿だけではない、5つの意外な使い方と体験レビュー
2024/5/22
プロペトの成分
プロペト ピュアベールの例
成分:白色ワセリン
備考:第3類医薬品
プロペトは、白色ワセリンの分類に入りますが、白色ワセリンをさらに精製して不純物を取り除いたものです。
また、酸化防止剤や防腐剤も入っていない、無添加のビュアワセリンとされています。
そのため、開封後はできるだけ早めに使い切った方がいいでしょう。
市販では現在のところ、第一三共のプロペト ピュアベールのみ販売されています。
詳しくは後述しますが、プロペトに使われている保湿剤は、エモリエントです。
エモリエントは、皮膚の上に油の膜を張ることで、皮膚からの水分蒸発を防ぐ作用があります。
サンホワイトの成分
サンホワイトP-1の例
成分:白色ワセリン
備考:無香料・無着色・保存料不使用
サンホワイトは、白色ワセリンの中でも高品質なプロペトをさらに精製したものです。
香料や着色料、保存料も使われていない無添加のワセリンですが、化粧油として販売されているため、実はプロペトと同じ医薬品ではありません。
市販ではなかなか見られませんが、ネットオンラインなどで日興リカのサンホワイトP-1のほか、リップ型も販売されています。
医薬品として扱われるプロペト
病院やクリニックで処方が多いのは、白色ワセリンとプロペトです。
両方とも白色ワセリンの成分でそれほど違いはありませんが、プロペトは白色ワセリンからさらに精製し、不純物を取り除いたもののため、敏感肌の方や赤ちゃんにも安心して使えます。
ちなみに限定的ですが、プロペトは市販もされています。
現在のところ、第一三共が製造・販売するプロペト ピュアベールの1種類しか市販品がありませんが、第3類医薬品としての扱いになっているため、筆者も使用しています。
プロペトの特徴・効果
プロペトは、白色ワセリンをさらに精製し、より純度を高めたワセリンです。
第3類医薬品であることがほとんどで保湿作用以外にも、手足のヒビやアカギレ、皮膚の荒れなど皮膚を保護する作用があります。
高齢の方や子供で小さな傷ができやすい場合は、プロペトを塗っておくことで傷ができにくくなる予防効果もあります。
また、できてしまった傷に対しても患部の清潔を保った上でプロペトを塗っておくと傷の治りが早いともされています。
見た目は半透明に近い白色で、低刺激なだけでなくべたつきにくく、肌馴染みが良いので使いやすいです。
顔にも使えるプロペト
プロペトは、皮膚の水分が逃げないように油分の膜で蓋をして、肌の乾燥を予防できるとともに、油分が肌を覆うことで外部刺激から皮膚を保護する作用も期待できます。
また、不純物を極力カットし、添加物を一切配合していないため、デリケートな目元を含む全身に使用できます。
医療機関では、眼科用軟膏基剤として処方されることがあります。
目の周りにも使えることから、顔に塗れるワセリンとして唇やデリケートな箇所はもちろん、小さな傷や擦り傷などから肌を守れるでしょう。
プロペトの市販品と処方薬の違い
薬局やドラッグストアで購入できる市販のプロペト ピュアぺールと、医療機関で処方されるプロペトは、成分や製剤はじめ、香料や着色・保存料などの添加物を一切加えていないピュアワセリンという点では同じですが、効能や効果は違います。
また、プロペト ピュアベールは、自分の判断で購入して使うことができますが、プロペトは医師が患者の症状や皮膚の状態に応じて処方する薬です。
その購入・処方の目的や効能については、主に以下の通りです。
プロペト ピュアベール(市販品)
手足のひび、アカギレ、皮膚のあれ、その他皮膚の保護
プロペト(処方薬)
眼科用軟膏基剤、一般軟膏基剤、皮膚保護剤
筆者は、季節の変わり目なのか花粉症でもないのに、目や口の周りが赤く痒みが出た際に、皮膚科で受診してプロペトを処方されたことがあります。
市販品のプロペトは、硬めのテクスチャーなのに塗った時はさらっとした感触です。
それに対して、処方薬のプロペトは柔らかめで、こっくりとしたベタつきのあるテクスチャーで、保湿の持続力でいうと市販のプロペトよりも強く残ります。
どちらもデリケートな皮膚部分に使えますが、蓋をする機能として考えると膜を張ったような厚みがある処方薬プロペトの方が安心できるでしょう。
高純度・高品質のサンホワイト
サンホワイトは、白色ワセリンをさらに精製した高純度・高品質の白色100%ワセリンです。
プロペトよりも純度が高いとされており、アレルギーパッチテストの基剤に使われるほど低刺激で、赤ちゃんのスキンケアにも使えます。
なお、ワセリンよりも精製コストがかかっているため、価格は普通の白色ワセリンより高価です。
また、ドラッグストアなどの店舗で見かけることはほとんどなく、医療機関で処方された場合は保険が適用されないため料金が割高になります。
プロペトとサンホワイトとの違い
では、プロペトとサンホワイトでは、どのような違いがあるのでしょうか。
プロペトは、白色ワセリンをさらに精製し、不純物が除去された肌に優しい保湿剤です。
一方、サンホワイトは、プロペトをさらに精製し、酸化防止剤を加えた保湿剤です。
プロペトは酸化防止剤無配合のため、サンホワイトに比べると酸化しやすいといった違いがあります。
サンホワイトは、香料・着色料・保存料などを使用していない無添加の高品質な白色ワセリンとして知られていますが、実は化粧油として販売されているため、プロペトのような医薬品扱いではありません。
病院で処方されることもありますが、保険が適用されないため、他のワセリンに比べると高価です。
また、取扱いがある薬局は限られますが、ネットオンラインでも購入することができます。
プロペトとは性質が異なるため、粘膜などへの使用はできませんが、目元や唇などには使えます。
筆者のワセリン比較体験
美容院でカラーリングをする際の皮膚の保護クリームとして、本来なら美容院が用意する業務用のワセリンを使うことでしょう。
しかし、筆者は業務用のワセリンでひどい肌荒れを起こしてしまい、完全に治るまで数週間を要しました。
そのことから市販のプロペトを持参して、担当美容師さんに使ってもらっています。
この後に、プロペトよりもサンホワイトの方が純度が高いと知り、ネットオンラインで購入してみました。
そして、プロペトを使い切った後にサンホワイトを使ってみたところ、業務用ワセリンほどひどくはないものの、かさぶたができるほど肌が荒れてしまいました。
サンホワイトは、プロペトをさらに精製した高純度100%であるのにも関わらずです。
その時に、サンホワイトは医療品というより、化粧油として販売されていることに気づき、プロペトに戻しました。
プロペトは前述通り、第3類医薬品として販売されているため、筆者としてはプロペトが安全かつ敏感肌に向いていると感じたわけです。
なお、あくまで個人の体験に基づく感想になるため、まずはパッチテストを試してみることをおすすめします。
きっかけや具体的な経緯については、下記記事で紹介していますので併せてお読みください。
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ワセリンの種類や違いは?保湿だけではない、5つの意外な使い方と体験レビュー
2024/5/22
ワセリンと他の保湿剤との違い
保湿剤として使うこともあるワセリンですが、厳密にいうと肌の水分を逃さないように油分で蓋をすることが目的です。
では他の保湿剤と比べると、役割や効果、保湿力にはどのような違いがあるのでしょうか。
実は、スキンケア商品に含まれる保湿作用は、大きく2種類あります。
- エモリエント
- モイスチャライザー
エモリエント
エモリエントは、ワセリンに使われており、皮膚の上に油の膜を張ることで皮膚からの水分蒸発を防ぐのが主な作用です。
また、痒みで身体をこすると、皮膚表面の皮脂が失われ乾燥肌になりやすいため、エモリエントを外用すると保湿効果が期待できます。
エモリエントには、皮膚の水分が逃げないように蓋をする効果があり、バリア機能を強くしてくれます。
モイスチャライザー
モイスチャライザーは、皮膚からの水分蒸散を抑えたり、皮膚の内部で水分と結合して肌の潤いを維持する作用があります。
主にヒルドイドやケラチナミン、ウレパールなど、ヘパリン類物質や尿素系の保湿クリームに使われています。
モイスチャライザーには、皮膚に水分を浸透させて蓄える効果があり、保水の維持を高めます。
保湿としての使い方・効果
普通肌の人は、乾燥が強い部屋にいた時や冬に長風呂したりした時など、一時的に乾燥してしまった場合は徐々に肌自体の治癒力によって乾燥が治まってきます。
その時にワセリンで蓋をすることで、肌自体の治癒力の手助けをすることができます。
乾燥肌の人は、ワセリンの保湿剤としての力でいうと、天然保湿成分が入っているヒルドイドなどに比べれば保湿力は弱いため、保湿クリームで水分を与えることが重要です。
ヘパリン類似物質や尿素系物質には水分を保持する作用を発揮するため、保湿効果でいうと一般的にモイスチャライザーの方が高い傾向にあります。
いずれも保湿剤としては同じですが、大きな違いとしては、水分を逃さないように蓋をするか、保湿を与えて潤いを維持するか、です。
以下の記事では、保湿に特化したスキンケアについて紹介しています。
代表的な3大保湿成分と称されるセラミド・アミノ酸・ヒアルロン酸の特徴と作用・効果についても解説していますので、併せてご参考ください。
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2024/4/26
終わりに
さまざまな用途に使えても、種類によっては成分も効果も異なるワセリン。
同じ白色ワセリンでも精製具合や加工処理によって、肌への刺激や副作用も変わります。
とはいえ、肌に保護膜を作ることで乾燥や刺激から守ってくれ、赤ちゃんから大人まで年代を問わず安心して使うことができる点では同じです。
また、個々によって体質や肌質も違えば、感じ方や効果も異なるため、使ってみないとわかりません。
まずは、医薬品として扱われるプロペトや純度の高いサンホワイトを使ってみて、それでも合わなければ化粧品として販売されている保湿剤を使ってみてください。
そして、水分を補うか潤いに蓋をするか、あなたに合った保湿ケアを見つけましょう。
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