季節の変化に伴って咲く代表的な花を月ごとに配列した、花暦。
昔の人々にとって自然界で咲く花は、季節を予知する上で指標ともいえる役割をもっていました。
現代に生きる私たちも、桜が咲けば春本番、彼岸花を見かけると秋の到来を感じることもあるでしょう。
今回は、花暦の意味や起源はじめ、旧暦における花暦、現代の新暦における花暦を紹介します。
花暦とは
花暦(はなごよみ)は、季節の花を月ごとに配列した暦です。
月ごとに咲く代表的な花、それぞれの月を代表する花という前提があります。
江戸時代に中国から伝わってきたもので、日本の季節や風土に合わせた花暦をつくり、和風月名とともに季語としても使われています。
和風月名については、下記記事をご参考ください。
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旧暦における月の呼び名、和風月名とは?12ヶ月ある名前の由来や意味も解説
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花暦ができた起源・由来
花暦が始まったのはどんな経緯なのか、日本で花暦ができた由来を紹介します。
花暦の始まりは中国
花暦は、中国で月ごとにその時に咲く花を挙げた習慣が始まりです。
中国では、古くから花・植物の生長や開花時期を、農作業を進める目安として使われていました。
12ヶ月にそれぞれ特定の花をあてた花暦は、清の時代に広まっていきます。
中国における花暦
中国で使われていた花暦は、以下の通りです。
- 1月:睦月/梅(ウメ)
- 2月:如月/桃(モモ)
- 3月:弥生/牡丹(ボタン)
- 4月:卯月/桜(サクラ)
- 5月:皐月/木蓮(モクレン)
- 6月:水無月/石榴(ザクロ)
- 7月:文月/睡蓮(スイレン)
- 8月:葉月/梨(ナシ)
- 9月:長月/葵(アオイ)
- 10月:神無月/菊(キク)
- 11月:霜月/山梔子(クチナシ)
- 12月:師走/芥子(ケシ)
日本への伝来は江戸時代
中国の清時代に広まった花暦は、江戸時代に日本へ伝わり、日本の風土や季節に合わせた花暦が作られました。
その後、俳句の歳時記や季語に取り入れられ、装飾芸術や花札遊びなど、人々の暮らしに浸透していきます。
しかし、明治時代の改暦により、旧暦と新暦の2つの暦ができます。
花暦ができた江戸時代の旧暦(太陰太陽暦)と現在の新暦(太陽暦)では、季節に約1ヶ月のずれがあるため、同じ月の花でも違いがあります。
そのため、新暦になると、現在の暦や季節に合わせた花暦を改めてつくり直しました。
明治時代まで用いられた旧暦(太陰太陽暦)と、現在の新暦(太陽暦)については、下記記事で解説していますのでご参考ください。
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太陰暦や太陰太陽暦、太陽暦の仕組みや違いとは?うるう年の役目、旧暦と新暦の意味
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日本における花暦
花暦は、季節別に咲く代表的な花を、12ヶ月あるそれぞれの月に配置した暦です。
前述の通り日本には2つの暦があり、約1ヶ月のずれによって、月ごとに代表的な花も異なります。
日本の旧暦における花暦、現代の季節に応じた花暦を紹介します。
旧暦における日本の花暦
江戸時代から明治時代の改暦までの旧暦における日本の花暦は、以下の通りです。
旧暦での花暦に登場する花・植物は、花札のモチーフとして使われているため、ご存知の方も多いでしょう。
- 1月:睦月/松(マツ)
- 2月:如月/梅(ウメ)
- 3月:弥生/桜(サクラ)
- 4月:卯月/藤(フジ)
- 5月:皐月/菖蒲(アヤメ)
- 6月:水無月/牡丹(ボタン)
- 7月:文月/萩(ハギ)
- 8月:葉月/薄(ススキ)
- 9月:長月/菊(キク)
- 10月:神無月/紅葉(モミジ)
- 11月:霜月/柳(ヤナギ)
- 12月:師走/桐(キリ)
新暦(現代)における日本の花暦
明治時代の改暦以降に設けられた新暦における日本の花暦は、以下の通りです。
温暖化など季節や気候に応じて、概念も時代とともに変化していき、地域によっても違いがあるため、あくまでも参考としてください。
- 1月:睦月/梅(ウメ)・福寿草(フクジュソウ)
- 2月:如月/椿(ツバキ)・水仙(スイセン)
- 3月:弥生/桃(モモ)・菜の花(ナノハナ)
- 4月:卯月/桜(サクラ)・チューリップ
- 5月:皐月/藤(フジ)・カーネーション
- 6月:水無月/紫陽花(アジサイ)・花菖蒲(ハナショウブ)
- 7月:文月/山梔子(クチナシ)・百合(ユリ)
- 8月:葉月/百日紅(サルスベリ)・朝顔(アサガオ)
- 9月:長月/萩(ハギ)・彼岸花(ヒガンバナ)
- 10月:神無月/木犀(モクセイ)・秋桜(コスモス)
- 11月:霜月/山茶花(サザンカ)・菊(キク)
- 12月:師走/枇杷(ビワ)・石蕗(ツワブキ)
※各月の花は、前者は花木・後者は草本(地上茎の生存が最長1年)
日本の花暦カレンダー(早見表)
上記で紹介した旧暦・新暦における日本の花暦を、写真付きでカレンダー形式にしました。
月 | 和風月名 | 旧暦の花暦 | 新暦の花暦 <花木> | 新暦の花暦 <草本> |
---|---|---|---|---|
1月 | 睦月 | 松(マツ) | 梅(ウメ) | 福寿草(フクジュソウ) |
2月 | 如月 | 梅(ウメ) | 椿(ツバキ) | 水仙(スイセン) |
3月 | 弥生 | 桜(サクラ) | 桃(モモ) | 菜の花(ナノハナ) |
4月 | 卯月 | 藤(フジ) | 桜(サクラ) | チューリップ |
5月 | 皐月 | 菖蒲(アヤメ) | 藤(フジ) | カーネーション |
6月 | 水無月 | 牡丹(ボタン) | 紫陽花(アジサイ) | 花菖蒲(ハナショウブ) |
7月 | 文月 | 萩(ハギ) | 山梔子(クチナシ) | 百合(ユリ) |
8月 | 葉月 | 薄(ススキ) | 百日紅(サルスベリ) | 朝顔(アサガオ) |
9月 | 長月 | 菊(キク) | 萩(ハギ) | 彼岸花(ヒガンバナ) |
10月 | 神無月 | 紅葉(モミジ) | 木犀(モクセイ) | 秋桜(コスモス) |
11月 | 霜月 | 柳(ヤナギ) | 山茶花(サザンカ) | 菊(キク) |
12月 | 師走 | 桐(キリ) | 枇杷(ビワ) | 石蕗(ツワブキ) |
草本とは
草本(そうほん)は、地上茎の生存が1年以上続かない植物のことを指し、一年草・二年草・多年草があります。
終わりに
季節の移り変わりを花によって表すカレンダーの一種、花暦。
日常ではあまり馴染みがない暦ですが、365日ある誕生花と同じような意味合いで考えると、なんとなく納得できるものがありませんか。
また、12ヶ月ある月ごとに特定の花を配する花暦は、日本の各月における季節や風土に合わせた点でいうと和風月名も同じです。
季節の指標として花暦ができてから、装飾美術や生花から、花札などの遊び道具、俳諧の季語・季題にも広く取り入れられ、私たち日本人の季節感をつくる素材となりました。
現代でも学校や職場などで、特別な行事のアイデアに使ったり、企画のモチーフに取り入れたりしながら、季節や暦を楽しんでみてはいかがでしょうか。
以下の記事では、花暦と同じように旧暦で12ヶ月を表していた和風月名について紹介しています。
一般的に使われる1月・2月・3月…とは別に、古くから用いられた睦月・如月・弥生…という12ヶ月それぞれにつけられた月名の由来や意味についても解説していますので、併せてお読みください。
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旧暦における月の呼び名、和風月名とは?12ヶ月ある名前の由来や意味も解説
2024/7/10