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天ない、ご近所、NANAなど…矢沢あいの代表作品をあらすじと明言付きで振り返る

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あなたは、漫画家・矢沢あい先生をご存知ですか?
学生時代に、りぼんで作品を知ったり友達から薦められたりした人も多いと思います。

今回は、当時も今も若者たちのバイブルとして社会現象にもなった、矢沢あいの代表作品を明言付きで紹介します。

また、昨年から東京会場を皮切りに全国で開催されている「ALL TIME BEST 矢沢あい展」の復習や予備知識にもなるでしょう。
別記事の漫画家・矢沢あい展レポートと合わせてお読みいただけると幸いです。

天使なんかじゃない

天使なんかじゃない」は、少女漫画雑誌「りぼん」に1991年から1994年まで連載された人気作品です。
通称「天ない」と呼ばれており、全8巻の単行本に加え、完全版コミックス全4巻、文庫本全6巻が刊行されています。

漫画家として知られる矢沢あいの出世作であり、20年以上前の作品でありながら、当時も今も少女たちのバイブルとして、世代を超えて愛されています。

あらすじ

新設したばかりの私立聖学園に、一期生として入学した主人公の冴島翠(通称:エンジェル冴島)は、風邪で休んでいる間にクラスメイトから勝手に生徒会選挙に立候補させられてしまいます。

翠は、全校生徒による投票で副会長になり、女子に人気の瀧川秀一、その瀧川に淡い恋心を抱く麻宮裕子、中学時代からの知り合い河野文太、そして密かに憧れていた生徒会長の須藤晃と共に、生徒会活動に励んでいきます。

持ち前の前向きさを発揮して活躍する翠が、生徒会長の晃への想いや麻宮との友情の中で悩み苦しみながらも、人として大きく成長していく、そんな学園ラブストーリーです。

心に響いた言葉・名言

恋をしたら
情けなくてみっともないこといっぱいあるよ
(翠)

マミリンこと間宮と翠がお互いの恋にうまくいかず、2人で泣き合うシーンでの言葉です。

「恋は盲目」という言葉があるように、恋をすると頭の中ではわかっていても身体が勝手に動きます。
本当はしたくないこと、しなければいいこともしてしまうんですよね。

おまえは…
相手の都合なんかかまってらんねぇくらい
伝えたい気持ちねぇのかよ
(晃)

好きな人が海外へ行ってしまうという状況の友達に向かって言った一言です。

この言葉は、私も実際に言われたことがあるのでドキッとしてしまいました。
言いたいことを我慢しても相手が気づいてくれるわけでもないですから。
相手がなんとなく感づいていてもあえて気づかない振りをすることもあるのです。
自分の言葉で相手に伝えることで相互理解があればスッと前に進むこともあります。

別れたことで失うものより
とり戻すものの方が大きかった気がするし
(翠)

瀧川との関係に悩む志乃に対して翠が投げかけた言葉です。
その後に志乃は瀧川との別れを決めるのですが、志乃にとってこの言葉が何よりの後押しとなったのではないでしょうか。

翠が本心で取り戻したものの方が大きいと感じていたかはわかりませんが、これ以上ないほど好きになった相手と別れて、こうやって考えられるのは翠が何よりも晃の幸せを願っていた証拠でもあります。

自分を信じること
周りを愛すること
明日を夢見ること
先輩達が教えてくれた
幸せの3原則を私達は決して忘れません
(志乃)

新・生徒会長の原田志乃が翠達の卒業式で読んだ送辞の言葉です。
この3原則を心に刻みながら、自分のその後の人生を歩んでいった人も多いのではないでしょうか。

ご近所物語

ご近所物語」は、矢沢あいが少女漫画雑誌「りぼん」で1995年から連載した漫画です
コミックは全7巻で、同作品を原作としたテレビアニメも放送されました。

あらすじ

自分のブランドの店を持つことが夢である幸田実果子は、服飾デザイナーを目指し矢澤芸術学院(通称:ヤザガク)でファッションに関する勉強に励んでいます。
同じ矢澤芸術学院に通い、同じマンションの隣人で幼馴染みの山田ツトムとは友達以上恋人未満の関係でした。

いつも一緒に行動する事が当たり前で、ずっと同じテリトリーに生きてきた二人だったが、将来のことを考え始めると、このまま二人だけの狭い世界で生きていっていいのか・・・。
自分の夢と恋と友情のはざまで揺れる2人が、紆余曲折を経ながら愛を育み、成長して行く青春グラフティです。

夢に向かって一生懸命になれる、真っすぐだった頃の自分を思い出すストーリーです。

心に響いた言葉・名言

すましてるだけじゃつまんない
幸せは自分から飛んで行ってつかまえなきゃ
(実果子)

実果子が学園祭のファッションショーで、ウエディングドレスを着て歩いている時の言葉です。

服飾デザインでもっとも厳しいといわれるウエディングドレスのデザイン・制作に挑み、見事にステージに立ってみせた彼女らしいひと言です。
笑ったり、泣いたりして自分から動いて到達したところにこそ、幸せはあるのでしょう。

その圧倒的なクオリティーに会場にいた全ての観客の目を奪いました。
実果子はこのドレスでファッションショーの個人賞グランプリを獲得します。

手に入れたいのはハッピーエンドじゃない
鍛え抜かれたハッピーマインドだ
(実果子)

実果子がロンドン留学や自分の今後の人生について、悩みに悩んで選択した後の言葉です。
ロンドン留学中、ツトムや友達と離れて生活をする実果子の決心の表れでもあります。

留学での刺激的な日々に満足しながらもツトムのことを思い出し、いつも素直になれずについつい泣いてしまう弱さを抱えていた実果子。
しかし自身の心に目を向け、本当に価値あることを見極めようとする姿勢を持つようになったことが、見て取れます。

彼女が手に入れようとしているものは何なのか。
最後まで読めば、自分には彼女のようなハッピーマインドがあるだろうかと自身に問いかけずにはいられなくなるでしょう。

そんなの言葉でならいくらでも言えるよ
行動に移せないなら口にするべきじゃない
(如月星次)

デザイナーになって自分のブランドの店を持つことが実果子の夢です。
そのことをいつも星次に話しているのですが、学園祭間近にツトムとの喧嘩が原因で授業に遅れがちになってしまいます。

そんな行動と言動が伴わない実果子に対して星次が言った言葉です。
この言葉を言われた実果子は今までの行動を見つめ直し、学園祭に向けて真剣に取り組みます。

「ごめんください」じゃなくて「ただいま」かな
(実果子の父)

実果子の両親は離婚して、漫画家の母・留里子と実果子は一緒にマンションで、カメラマンの父・広彦は別でバラバラに暮らしています。
一度は離婚した留里子と広彦でしたが、実果子の働きかけでよりを戻すことになります。

そして、留里子が妊娠3か月目に入っていることが発覚し、急いで駆けつけた広彦が留里子にかけた言葉です。
この言葉に安堵した留里子は「おかえりなさい」と返し、涙を流します。

広彦から留里子に向けたこの言葉は、家族への温かさを感じ、思わずじーんとしてしまうでしょう。

筆者も帰省すると「ただいま」ではなく、「ごめんください」といってしまうのですが、自分の中でぎこちなさというかわだかまりがあるからでしょうね。

あたし悲しくて泣いたんじゃない
ツトムが来てくれてうれしかったから
(実果子)

両親の離婚が決まり、そのショックから家を飛び出した実果子。
近所の公園の滑り台の下に隠れていた実果子をツトムが発見します。

その途端に泣き出した実果子に、ツトムは両親の離婚が悲しいから泣いたのだと思うのですが、実果子が泣いた理由はツトムが自分を探しにきてくれた嬉しさからです。
小さい頃から実果子にとって、ツトムの存在がどれだけ大きいものであったのかがよくわかります。

寂しさとかせつなさは乗り越えてなんかいかなくていい
受け入れて抱えながら歩いていけるようになれればいい
(実果子)

ロンドン留学中にデザインノートを書きながらツトムとの思い出の曲を聞いていた実果子。
すると、偶然ツトムとそっくりな人と出会い、ツトムのことが恋しくて寂しくなってしまいます。
そんな自身の寂しさを表した言葉です。

NANA-ナナ-

NANA -ナナ-」は、音楽と恋愛を描いた長編漫画作品で「Cookie」にて2007年から連載、2009年より作者急病により休載中です。

単行本は1巻~21巻まで発売されており、ストーリーは完結していないものの、実写映画化やアニメ化もされた長編漫画です。

あらすじ

東京に向かう新幹線の中で、同じ名前で同い年の2人が偶然隣り合わせます。
1人は先に上京した交際相手のもとに向かう途中で、もう1人はバンドのボーカルとして成功を目指していました。
それぞれ目的を抱え東京へ向かっていた2人でしたが、引越し先の内見で偶然再会し、同居することになるのです。

恋愛に生きる奈々と音楽に生きるナナ。
見た目も性格も正反対の2人を中心に、喜びや悲しみ、挫折と成功を繰り返しながら夢の実現と現実の厳しさを感じさせる物語です。

心に響いた言葉・名言

ケンカするほど仲がいいなんてよく言うけど
ケンカなんて結局エゴのぶつけ合いだし
本音をさらけ出したところで
人は分かり合えるものでもない
傷つかずに生きて行く事はたぶん不可能だけど
周りを傷つけずに生きて行く努力はしなければと思った
なんだか無性にそう思った
(ナナ)

未来の奈々やナナが語っているもので、現在休載中のため本編とのかかわりは不明ですが、このモノローグはNANAの名言として挙げられることが多いです。

ケンカすることが必ずしも良いことではないけれど、お互いがお互いを理解し合えるために本音をぶつけるには避けて通れない道ですね。
それでも相手の言動がどこかで許せる部分と許せない部分がわかってきた時にどうなっていくか答えはすでに出ているはずです。

誰かと強く深く結び合って
決して解けない結び目を
あの頃あたしは必死に求めてた
だけど人の絆は結べるものじゃない
繋ぐものなんだよがんじがらめにならないで
(奈々)

常に自分の理想の関係を求めて恋愛していた過去の自分を思い出し、自分と同じようになってほしくないと願いながらナナに語りかけた言葉です。

遠くなる程よく見えるのに近くなるほど見失うんだよね
(章司)

浮気が原因で別れて以降、初めて再会した奈々と章司。
浮気をしたことを謝罪した章司に対し、奈々は自分にも悪いところはいっぱいあったからと許します。
付き合っている当時は奈々のわがままに対して嫌気がさしていた章司であったが、距離と時間を置いたことで奈々のわがままなんかどれもたいした事じゃなかったと言えるくらいに成長していました。

この再会で奈々と章司はしっかりと別れ話ができ過去を清算、奈々と別れた帰り道に章司が思わず漏らした独り言です。
身近になればなるほど相手の良いところを見失ってしまうので、大切にしないといけないということを伝えていると思います。

人は失ってはじめて気付くって言うけど
本当の意味で気付くのはいつも
再び向き合えた時な気がするな
(奈々)

奈々が過去に付き合っていた章司と再会し、浮気やわがままを許し合い、お互いの大切さを実感した場面での言葉です。

人生にはやり直しがきくって人はよく言うけど
人間は積み上げた過去を土台に生きているんだから
そう簡単にはいかないわよ
(銀平)

ブラストのマネージャーを務める銀平は、AV女優としてブレイクしている百合を「演技力があるから普通の女優としても売れたと思う」と話します。
それを聞いたナナは今からでも女優に転身するのは遅くないと言うが、銀平は「今さら方向転換は難しい」とはっきり言い、過去を全部なかったことにはできないと考えさせられる一言です。

人は生きていくほど重たい荷物が増えていくものだもん
思うように動けなくなっていくんだよ
だからそれを一緒に抱えて行ける相手が必要になって行くんだよ
(芹澤レイラ)

ナナへの想いと自分の立場のはざまで悩み苦しんでいるレンに、レイラがかけた言葉です。

人と関わっていくことは背負うものも増えていきます。
特に男女関係、恋人同士には相手の現在や未来までも背負う、それが、責任ということに繋がってくるでしょう。

Paradise Kiss

Paradise Kiss」(パラダイス・キス)は、雑誌「Zipper」にて連載された矢沢あいの漫画作品で、「ご近所物語」の続編作品でもあります。

あらすじ

進学校に通う主人公の早坂紫が、矢沢芸術学院生「パラダイス・キス」のメンバーからファッションショーのモデルになるよう誘われます。
服飾専門学校生・小泉ジョージらの学園祭でファッションモデルを務めることになり、夢に向かって精力的に活動する仲間たちの姿に刺激を受け、自らも歩む道を見出していきます。
ファッションへの情熱とともに、友情や恋が芽生え、自らも夢を見つけて行く物語です。

心に響いた言葉・名言

この会場の全ての人をあたしが楽園に連れて行く
(紫)

矢沢芸術学院のファッションショーの日、紫はパラダイス・キスのメンバーが仕上げたドレスを身にまとい、ステージに向かいます。
最高のメンバーが作り上げた最高のドレスの魅力を全て引き出すために、作り手の熱意に負けない堂々としたウォーキングを披露した紫は、この決意通り、会場中の人々を魅了しました。
彼女の自信に満ち溢れた姿はもちろん、質感までも伝わってくるような美しく繊細なドレスの描写に圧倒されるシーンです。

自分の可能性を信じなきゃ
何も始まらないよ
(ジョージ)

ジョージのパリ行きについて、パリでファッションの世界に挑戦することの大変さを口にした紫に伝えたジョージの言葉です。

自分が選んだことは自分で責任を持つこと、他の誰でもなくまず自分が自分を信じることがないと何もできないです。
自分を信じる力が強いからこそ、常識にとらわれずに挑戦し続けられることに気づかされます。

矢沢あいについて

3月7日生まれ、兵庫県出身の漫画家。
1985年、「あの夏」(りぼんオリジナル早春の号)でデビュー。
代表作に「天使なんかじゃない」「ご近所物語」「NANA」(集英社)や「Paradise Kiss」(祥伝社)などがあります。
2002年、「NANA」が第48回小学館漫画賞受賞。
2022年夏より東京会場を皮切りに大阪や横浜、岡山などで「ALL TIME BEST 矢沢あい展」を開催。

終わりに

以上で、人気漫画家・矢沢あいの代表作品を紹介しました。

誰しもが必ず一度は手にする漫画、衝撃の走った作品が必ずあると思います。
時間ができてゆっくりと静かに過ごす予定に、矢沢あい作品を読んで懐かしき学生時代を振り返ってみてはいかがでしょうか。

画像は、2022年より全国展開で開催されている「ALL TIME BEST 矢沢あい展」で撮影したものです。

残り2会場の開催に観にいかれる方は、おさらいとしてもご参考になれば嬉しいです。
同時に、遠方で観にいけない方もいらっしゃるので画像を多めに掲載しましたが、少しでも会場の展示パネルを間接的ながらお届けできたらいいなと思います。

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