
春の花といえば、桜や藤、ネモフィラなど。
寒い冬を乗り越えて暖かくなっていく目覚めの季節には、たくさんの花々が一斉に咲き誇ります。
今回は桜や藤などといった定番の花が注目を集める中、その陰で可憐に咲く春の花・植物それぞれの生態や特徴を解説します。
またその花や植物を実際に観ることのできるスポットも紹介しますので、散策や観光ついでの寄り道としてご参考になれば幸いです。
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カタクリ(3月中旬~4月上旬)

雪解けを待って、早春の山を最初に彩る花の1つがカタクリです。
春先に花をつけ、夏までに葉や茎は枯れその後は地下で休眠期間に入ることから「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」とも呼ばれています。
カタクリはその名前の通り片栗粉が取れる植物としても知られ、球根は良質のデンプンを多く含んでいます。
実にひたむきでブナ林などの落葉樹林の傍で生育し、冬の間は落ち葉の下で寒さにじっと耐え、まだ樹木が目覚める前の早春に芽を出して葉を出して花を咲かせます。
春が深まり周囲の草木や樹木に葉が覆い茂り、光が入らなくなると葉を落として再び土の中で眠りにつきます。
そして体力を温存しながら、じっと春を待つ早春限定の草花です。
カタクリは実をいうと、種から花が咲くまでに7~8年もかかります。
1年目は種から芽を出すだけで地上部は枯れ、2年目からは春に楕円形の葉を1枚だけ出しますが同じように初夏までには枯れます。
それを6年目まで繰り返し、7年かけてじっくりと球根に栄養を蓄えて花を咲かせる準備をし、7年目にようやく葉を2枚出して花を咲かせます。
種から7年目でようやく花咲き春を告げる山の妖精、カタクリ。
薄紫の花びらを下向きに大きく広げながら咲く可憐な姿は、応援したくなるような生き方をしているため、この貴重な機会にひと目見ようと多くの観光客や登山者がその姿を観に訪れます。
場所によっては絶滅危惧種の指定を受けており、植生地を整備することで守られている場所も少なくないため咲いているところを観られる場所は限られています。
城山かたくりの里

城山かたくりの里は、例年3月中旬から4月中旬にかけてカタクリの咲く春のみ一般公開している個人所有地です。
山林に自生するカタクリは約30万株もあり、慎ましくも艶やかに冬の明けた春先を優しく彩ります。

珍しいキバナカタクリや白いカタクリの花も人気で、同じくスプリング・エフェメラルであるユキワリソウなどの小さな野花もたくさん見られます。
スプリング・エフェメラルというのは春の一時期にのみ姿を見せ、夏の緑が茂る頃には姿を消してします草花たちのことです。
名称 | 城山かたくりの里 |
住所 | 神奈川県相模原市緑区川尻4307 |
交通アクセス | JR横浜線・京王線「橋本」駅南口より期間限定の直通バスを利用、アリオ橋本店前の横断歩道を渡った先にある「相模原市コミュニティバス乗り場」より乗車 路線バスを利用する場合は「橋本」駅北口より神奈中バス乗り場1・2番から三ヶ木行きで約15分「城山総合事務所入口」下車徒歩20分 |
公式サイト | https://www.katakurinosato.com/ |
御岳山
筆者がいつか行きたい場所になりますが、御岳山では富士峰園地や長尾平でカタクリの群生が見られます。
富士峰園地は一般的に夏に咲くレンゲショウマの群生地ですが、カタクリのほかアズマイチゲやニリンソウ、タチツボスミレなど他の珍しい植物も見られます。
御岳山の山道は舗装もされていない自然豊かな雰囲気で、東京都内ではありますがビルなども見えず、まるで地方の山奥を歩いているかのようです。
標高929メートルある御岳山へはケーブルカーで行くことができますが、登山道で足場の悪い箇所があるためトレッキングシューズを履くなど山歩きに適した準備をしていきましょう。
トレッキングシューズについては、下記記事もご参考ください。
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街歩きにも適した旅行靴・登山靴の種類や特徴、トレッキングシューズの選び方は?
2024/6/14
名称 | 御岳山 |
住所 | 東京都青梅市御岳山38-5 |
交通アクセス | JR青梅線「御嶽」駅よりケーブル下行きの西東京バスで「ケーブル下」下車、ケーブルカー「滝本」駅より「御岳山」駅下車徒歩10分 (ケーブルカー「滝本」駅から御岳ビジターセンターまでは徒歩約1時間) |
参考サイト | 御岳登山鉄道 東京都御岳ビジターセンター |
シバザクラ(4月上旬~5月上旬)

シバザクラ(芝桜)は、茎が芝のように地面を這って広がり、サクラに似た形の花を咲かせることから呼ばれています。
日当たりと水はけのよい場所を好み、耐寒性が強いのが特徴です。
常緑性により地面を覆いつくすように密生し、土の流失も防ぐため花壇の縁取りや石垣などで利用されていますが、芝のように踏圧に強くないため人が踏まないところで育てるのが適しています。
一面に花を咲かせる様子は花の絨毯のように圧巻であるとともに、近くで見るシバザクラの1つひとつの小さな花びらはまるでハート型のようです。
富士本栖湖リゾート

シバザクラといえば、富士山を思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
山梨県の富士本栖湖リゾートは、毎年4月中旬から5月下旬にかけて「富士芝桜まつり」が開催され、濃淡のピンク色をしたシバザクラが絨毯のように辺り一面を埋めます。
約50万株のシバザクラが富士山麓の広大な敷地に咲き誇り、鮮やかな色のコントラストが美しい富士山を彩る春の風物詩です。
名称 | 富士本栖湖リゾート |
住所 | 山梨県南都留郡富士河口湖町本栖212 |
交通アクセス | JR「河口湖」駅から新富士駅行き路線バスで「富士本栖湖リゾート」まで約50分/JR「河口湖」駅から富士芝桜ライナーで直行40分 |
公式サイト | https://www.fujimotosuko-resort.jp/ |
羊山公園
筆者がいつか行ってみたい場所になりますが、羊山公園にある芝桜の丘は面積は約1万7600平方メートルで関東でも有数の規模を誇り、色とりどりのシバザクラが10品種40万株以上植栽されています。
芝桜の丘は秩父のシンボルである武甲山(標高1304メートル)の麓、羊山丘陵の斜面を利用してピンクや白、紫色などさまざまな色の芝桜を組み合わせてまさに花のパッチワークのようです。
名称 | 羊山公園 |
住所 | 埼玉県秩父市大宮6360 |
交通アクセス | 西武鉄道「横瀬」駅または「西武秩父」駅より徒歩20分/秩父鉄道「御花畑」駅(芝桜駅)より徒歩約20分 |
公式サイト | https://www.city.chichibu.lg.jp/1853.html |
チューリップ(3月下旬~5月上旬)

チューリップは、ユリ科の球根植物です。
球根は直径3センチほどで先が尖った玉ねぎのような形をしており、10月中旬から12月初旬までに植えると3月から5月にかけて開花します。
地中海沿岸から中央アジアにかけておよそ150種が分布しますが、世界中で人気のある植物のためこれまでに数えられないほどの品種が誕生し、約5000を超える品種が登録されています。
草丈が高くすっと伸びている姿が美しいため、切り花としてアレンジメントや花束で使われることが多いです。
一重咲きがよく知られていますが、八重咲きやユリ咲き、フリンジ咲き、パーロット咲きなど7種類の咲き方があります。
春に咲くチューリップとは別に、冬に花咲くウィンターチューリップという名前を耳にしたことがあると思いますが特別な品種ではありません。
ウィンターチューリップについては、下記記事で解説していますのでご参考ください。
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クリスマスローズやウメ、蝋梅など…彩りの少ない冬の花・植物の観光スポット
2025/4/2
国営昭和記念公園

東京都内のチューリップガーデンといえば、国営昭和記念公園でしょう。
毎年ゴールデンウィーク近くになると、地方からも観光客が訪れ賑やかになります。
オランダのキューケンホフ公園の元園長によるオリジナルデザインを踏襲したとされる渓流広場は、約700メートルにわたって青い芝生と緩やかな曲線の渓流に鮮やかなチューリップのコントラストを味わえます。
同じ時期には北側にある花の丘で、真っ赤なシャーレ―ポピー畑も見られます。
名称 | 国営昭和記念公園 |
住所 | 東京都立川市緑町3173 |
交通アクセス | <立川ゲートから入る場合>JR中央線「立川」駅北口より徒歩約18分 <西立川ゲートから入る場合>JR青梅線「西立川」駅公園口より徒歩2分 <昭島ゲートから入る場合>JR青梅線「東中神」駅北口より徒歩約10分 |
公式サイト | https://www.showakinen-koen.jp/ |
砺波チューリップ公園

砺波チューリップ公園は、7ヘクタールの規模で入場料無料ですが、4月下旬からゴールデンウィーク期間までに開催される「となみチューリップフェア」は有料です。
となみチューリップフェアは、300品種・300万本のチューリップが彩る国内最大級の花の祭典で大花壇・花の大谷・円形花壇・水車苑・水上花壇・オランダ風花壇など、豊富な演出で会場いっぱいに咲き揃います。
名称 | 砺波チューリップ公園 |
住所 | 富山県砺波市花園町1-32 |
交通アクセス | JR線「新高岡」駅より城端線に乗換え「砺波」駅下車徒歩15分 |
公式サイト | https://www.tulipfair.or.jp/ |
国営ひたち海浜公園

春のひたち海浜公園といえばネモフィラですが、同じ時期にたまごの森フラワーガーデンで約230品種・約26万本のチューリップが森の中一面に広がります。
色や形もさまざまなチューリップが鮮やかに咲く姿は元気なエネルギーにあふれていて、まるでヨーロッパのような景色です。
名称 | 国営ひたち海浜公園 |
住所 | 茨城県ひたちなか市馬渡字大沼605-4 |
交通アクセス | JR常磐線「勝田」駅東口より路線バス2番乗り場「海浜公園西口」下車すぐ |
公式サイト | https://hitachikaihin.jp/ |
ポピー(5月上旬~中旬)

ポピーといっても大きく種類が分かれていて、中でも特にアイスランドポピーやシャーレーポピーを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ポピーは、ケシ科ケシ属の一年草・多年草で世界中に150種ほどが確認されていますが、アヘンが採れるために栽培が禁止されている種類もあります。
日本でガーデニング用として栽培されているのは、主にお椀のような形をしたアイスランドポピー、扇形の赤いシャーレーポピーです。
どれも花色がカラフルで花のサイズも大きいため、群植すると迫力があります。
草丈は30~80cmで花壇の中段くらいで花茎を長く伸ばした頂部に咲き、根元が寂しくなりがちなため手前に草丈の低い植物を合わせるとより華やかになります。
アイスランドポピーは別名でシベリアヒナゲシと呼び、原産地は南ヨーロッパです。
本来は宿根草ですが、寒さに強い一方で暑さには弱い性質により日本の暑い夏には耐えられずに枯死するため日本では一年草として分類されています。
開花期は3~5月で花色はオレンジ、黄、白、クリーム、ピンク、複色など幅があり草丈は60~80センチほどです。
シャーレーポピーは別名でヒナゲシ、グビジンソウ(虞美人草)とも呼ばれ、原産地はヨーロッパ中部です。
寒さに強く暑さには弱い性質のため、夏を乗り越えられずに枯死する一年草です。
開花期は4月中旬~7月中旬で、花色は白、赤など基本的には4枚の花弁をもつ一重咲きですが、八重咲きもあり草丈は15~80センチになります。
国営昭和記念公園

国営昭和記念公園にある花の丘は、面積約1万5000平方メートルと園内で一番大きな花畑で真っ赤なシャーレーポピーが一面に広がります。
秋にはコスモスが大パノラマで咲き、花のシーズンには欠かせない場所で丘の上からは立川駅方面が一望できます。
立川ゲートより徒歩40分ですが、途中の道端に咲く花々を観ながら進むと苦にはならないでしょう。

園内の中央にある原っぱ西花畑または原っぱ東花畑でも、その年によってアイスランドポピーが広がります。
名称 | 国営昭和記念公園 |
住所 | 東京都立川市緑町3173 |
交通アクセス | <立川ゲートから入る場合>JR中央線「立川」駅北口より徒歩約18分 <西立川ゲートから入る場合>JR青梅線「西立川」駅公園口より徒歩2分 <昭島ゲートから入る場合>JR青梅線「東中神」駅北口より徒歩約10分 |
公式サイト | https://www.showakinen-koen.jp/ |
京都府立植物園

京都府立植物園では、アイスランドポピーが花壇いっぱいに咲かせます。
その年によってポピーだけで統一させたりチューリップやネモフィラなど春の花と組み合わせたりするなど、毎年変わる風景が楽しめます。

観覧温室では「ヒマラヤの青いケシ」と呼ばれるメコノプシス・ベトニキフォリアが見られます。
ヒマラヤ山脈の標高5000メートルという場所に生息し、淡紫色や濃青色といった珍しい花色から別名でブルーポピーともいわれています。
名称 | 京都府立植物園 |
住所 | 京都市左京区下鴨半木町 |
交通アクセス | JR・近鉄「京都」駅より京都市営地下鉄「北山」駅下車3番出口すぐ、または「北大路」駅下車3番出口徒歩約10分/京阪「出町柳」駅より市バス1系統または京都バス「静原」「市原」行きで「植物園前」下車徒歩約5分 |
公式サイト | https://www.pref.kyoto.jp/plant/ |
バラ(5月中旬~6月上旬)
花の女王とも呼ばれるバラ(薔薇)は、ヨーロッパや北アフリカなど自生地はすべて北半球で、春バラは5月上旬から5月下旬、秋バラは10月中旬から11月上旬にかけて花咲きます。
バラについては、下記記事で解説していますので併せてお読みください。
季節の始まりに咲く春の花・植物まとめ
寒い冬が明け、新しい季節を迎え徐々に目覚め始める春の花。
桜や藤など上を見上げる花木が人気を集める中、地面に目を向けると希少なカタクリはじめポピーや芝桜など、なかなか目にする機会のない珍しい種類も多く春らしい淡い色をした植物が一斉に咲き揃います。
スプリング・エフェメラルという春の一時期にのみにしか姿を見せない草花たちは生命も短く儚いため、寒い冬を乗り越えて咲くひたむきな姿を見ながら新しい季節を迎えてはいかがでしょうか。
この記事で紹介している観光スポットは筆者が実際に訪れた場所として関東や関西が主になっています。
遠方にお住まいの人はお近くの公園や庭園、植物園のWebサイトなどで開花情報をチェックしてみてください。
以下の記事では、春夏秋冬の四季別に咲く花・植物を観光スポット付きで紹介しています。
季節ごとの主役というほどではないけれど、なぜか目を惹く珍しい花の生態や特徴も解説していますので併せてお読みください。
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クリスマスローズやウメ、蝋梅など…彩りの少ない冬の花・植物の観光スポット
2025/4/2